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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第1章 タウゼン王国編

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(17)面会(前編)

 冒険者というのは本来自由な立場なので、国からの呼び出しがあったとしても拒否することは可能だ。
 とはいえ、冒険者にとっても国から呼ばれるという事は、お墨付きを得られたという事になる。
 ほとんどの場合は、断ることなどはない。
 勿論、国からの呼び出しなど受けなくとも上位ランクに上がっていく冒険者は多い。
 というよりもほとんどの上位ランクの冒険者は、ギルドの依頼をこなすことでランクを上げている。
 その中で、国が関わる依頼をこなしたり、それに近いような依頼をこなして名声を高めていくことになる。
 国としてもそうした腕のいい冒険者は、囲い込んでおくために、王の御前に招くといったことになる。

 そう言った意味では、国のお墨付きなど必要としない考助達にとっては、王からの呼び出しは拒否してもいいことなのだ。
 だが、考助はその呼び出しを受けることにした。
 それは、王との繋がりを持ちたいという意味ではなく、運んだ献上品にどんな意味があるのか知りたかったためだ。
 はっきり言えば、献上品そのものはそこまで珍しい物とは言えない。
 昔から同じ献上品が送られていたという事からも分かる通り、他の高ランク冒険者に出来ないことではないのだ。
 これは考助の予想だが、献上品そのものには大した意味を持っていないのではないかと考えている。
 例えば、献上品を巡って争いを起こさせて、国内での争いの矛先をそちらに向けるように調整して制御しやすいようにしているといったことだ。
 他にも冒険者の腕を見極めたり、様々な利点が考えられる。
 たった一つの献上品を巡って、色々なことに使っているのではないかというのが考助の考えていることだ。
 王との面会の前に、考助はコウヒやミツキにこのことを話したが、二人共賛成してくれた。
 とはいえ、あくまでも予想は予想でしかない。
 直接面会することで、それがわかれば御の字だろうという事で、会う事に了承したのであった。

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 王との面会の日。
 面会の前に通された控室で、クレールが落ち着きなさそうに動き回っていた。
 この場にいるのは、考助達三人とそれぞれのパーティのリーダー、それに商人代表のレネーだけだった。
 直接指名された考助たち三人はともかくとして、他の者達は略式の面会という事でリーダーだけが呼ばれたという事になる。
「クレールさん、少しは落ち着いたらどうですか?」
 先ほどからの様子を見て、考助が苦笑しながらそう言った。
「落ち着けるかよ!」
 反射的にクレールがそういい返していたが、もう一つのパーティのリーダーも同じような表情で頷いている。
 ちなみに、レネーもどこか落ち着きのないような表情になっていた。
「逆にどうしてお前は、そんなに落ち着いていられるんだ?!」
 いつもと変わらない様子を見せる考助達に、逆にクレールが聞いてきた。

 いつも女王と呼ばれる人と気安く会話しているからです、とは勿論言えないので、考助はニッコリ笑って答えた。
「慌てても仕方ないからですよ」
 さらりとそう告げられて、レネーはため息を吐いた。
「それよりも、こういったことに慣れているように見えるのは気のせいですか?」
 半分確信しているようなその言葉に考助は答えず、ただニコリと笑って誤魔化した。
 もっとも、その笑顔が答えになっているのだが、それ以上は突っ込んで来なかった。
「まあ、いいけどよ。何を言われるかとか不安にならないのか?」
「ならないと言えば嘘になりますけれど、別に今回は隠すようなこともないですから今から不安になってもしかたないと思いますよ?」
「・・・・・・はあ~。お前の心臓の十分の一でもいいから欲しいぜ」
 大きくため息を吐いたクレールが、呆れた表情でそう言った。

 そんなことを会話しているうちに、ついに控室の扉のドアが開き案内の者が入って来た。
 いよいよこれから国王との対面、という事になる。
 一行は案内の者の後に付いて行き、王が待つ部屋へと移動するのであった

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「余がタウゼン王国国王エルネストである」
 面会することになった部屋の中央にある椅子に座った国王が最初にそう言ってきた。
 考助達が案内されたのは、大々的に行事が行われる謁見の間ではなく、貴族や大商人と会うときに使うような面会用の部屋だった。
 部屋が小さいとは言え、面会用の体裁は整っているようで、しっかりと玉座らしい椅子に座っている。
 その玉座を守るようにして、ちょうど四人騎士団の装備を付けた者達が立っている。
 数的には騎士団の団長と言った所だ。
 ついでに護衛も兼ねているのだろう。

「お招きにあずかり参上いたしました」
 事前に多少の言葉遣いは崩れていてもいいと聞いていた考助が、ペコリと頭を下げた。
 同じタイミングで後ろに控えていたコウヒとミツキも頭を下げている。
 他のメンバーは慌ててそれに追従する形をとっていた。
「・・・・・・ふむ。随分とこういった場に手馴れているように見えるが気のせいか?」
「おほめにあずかり恐縮です。ですが、私のような者がこういった場に立つ機会は、ほんのわずかですよ」
 それは別に謙遜ではなく、事実その通りなのだ。
 考助がラゼクアマミヤでこうした場に呼ばれることはない。
 精々がフローリアの実家の者達と会うときに、こういったやり取りをすることはあるが、基本的には実際の経験ではなく本などからの知識である。
 そのため、いつ失敗してもいいように牽制しておいた。

 そうした考えを見抜いたのか、あるいは何かを見抜こうとしてか、エルネスト国王はわずかに目を細めて考助をじっと見つめた。
「其方がコウという冒険者か?」
「ええ、そうです」
「それでは、脇に控えている二人がコウヒとミツキか」
「はい」
「なるほど。噂に違わず美しいな」
 次へつなげるための話題作りとはいえ、エルネスト国王はコウヒとミツキの二人を見てそんなことを言って来た。
 それに対して、コウヒとミツキは黙ったままだった。
 こういう時の二人は、考助に対して何かされない限りは動くことは無い。

 全くの無反応の二人を見て、三人の中で主導権があるのは考助だと判断した国王は、再び考助へと視線を向けた。
「さて、この度はご苦労であった。其方たちが必要な物を運んでくれたおかげで、王家としてやっていくことが出来る」
 具体的なことは何も言わずに、エルネスト国王は簡単に考助達をねぎらう。
「ありがとうございます」
 それに対して、考助はただ簡潔に返事を返すだけだった。
 余計なことを言って、周りに控えている者達から揚げ足を取られるつもりはないのだ。
 現に何人かは、最初から顔をしかめている者もいる。
 その表情は、たかが冒険者風情がと思っているのがまるわかりだった。
 だからと言って、そのことを国王に注進するつもりもない。
 はっきり言えば、そんな者の事はどうでもいいのだ。

「聞けば、其方らがあのモンスターを討伐したようだの?」
「はい。運よく依頼と巡り合うことが出来ました」
「運よく、か。調べたところによると、依頼を受けてから完遂するまで一週間もかかっていなかったはずだが?」
「ええ。それも運よく、すぐにモンスターと会う事が出来ましたから」
 考助は、最初から狙って会ったという事は伏せてさらりと答えた。
 今まで嘘は言っていない。
 ただ単に、言っていない事実があるだけである。
「ただ運が良い、というだけで会えるモンスターではないと思うのだがの?」
「そうなのですか?」
「少なくとも儂はそう聞いておる」
 逆に質問して来た考助に、王もまたさらりと答えて来た。

 ここまでの会話はあくまでも前哨戦のような物。
 王の言葉の端々にそうしたニュアンスを感じながら、考助はただひたすらに普通の冒険者であるような回答をしていくのであった。
王との謁見です。
本格的に始まるのは次話になります。
次は輸送中の襲撃について触れることになります。
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