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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第1章 タウゼン王国編

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(14)盗賊

 通常、献上品は生産場所や流通元で封をされるとそれ以降、王の手元に届くまで開けられることは無い。
 侵入者とその背後にいる者は、それを利用して献上品を別の物と交換することにしたのだろう。
 もっとも、元々偽物が置かれていたために、全く意味のないことをしたという事になるのだが。
 レネーは、途中でこういったことが行われることを予想して、様々な対策を用意していた。
 偽物の献上品を用意しておいたのもその一つだ。
 献上品であることを示す封はそうそう簡単に手に入る物ではないが、今回に関しては優先的に手に入れることが出来た。
 もともと今回運んでいる物は、王家自身が求める品であったことも幸いしている。
 そんなわけで、封がされた本物の献上品はコウヒのアイテムボックスに入れるという対策を取ることも出来ているのだった。

 偽物との交換騒ぎがあったために、王都までの道のりは襲撃などもなしに進むだろうと楽観していた一行だったが、そうは問屋がおろさなかった。
 街を離れて二日目の朝に、いつものようにナナが何かに反応した。
 最初はモンスターが近づいているのかと思っていたのだが、すぐにモンスターではない事が判明したのだ。
 偽物交換騒ぎとはまた別の勢力からのちょっかいかとも考えたのだが、それもすぐに違う事がわかった。
 ミツキが遠目にいる者を判別したところ、如何にもと言った風情の者達が商隊を監視していることがわかったのである。
 そう。彼らはまさしく本物の(?)盗賊たちであったのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助は、昼食用に造った焚火の傍に座ってミツキが作った食事をとっていた。
 すぐ傍にはナナが寝そべっている。
 そのナナは、しっかりと自分用の食事を終えて、カルラを含めた冒険者のお姉さま方にモフられていた。
 決して短くはない商隊の護衛の間に、すっかり馴染んでしまっている。
 最初は警戒して寄せ付けていなかったナナだが、最初に考助が許可を出すと後はなし崩し的にこうなってしまっていた。

 考助は、食事をしつつナナを撫でているカルラに話しかけた。
「そろそろだと思うんですが、そんなことをしていていいのですか?」
 何のことかというと、朝の段階で見つけていた盗賊たちのことだ。
 ここでのんびりと昼食をとっているのは、食事中に油断していると思わせて盗賊たちを誘っているのだ。
 現に、周囲には盗賊たちが集まっているのも確認している。
 朝からの様子といい妙に手馴れている様子から、この辺りを根城にしている盗賊なのは間違いなさそうだ。
「いいのよ。いつもと同じにしないと、相手も油断しないでしょう?」
 楽しそうにナナをモフッているカルラを見ていると、建前なのか本音なのかは微妙な所だろう。
 どちらにしても、カルラが言ったことは確かにその通りなので、考助もそれ以上は何かを言うのを止めた。
 それに、すぐにこんなことをしている余裕はなくなると思ったのだ。

 そんな矢先。
 先に昼食を終えて周囲を警戒していた者の声が飛んできた。
「来たぞ!」
 その合図とともに、ナナをモフッていた女冒険者達もすぐに戦闘態勢になった。
 同じように立ち上がったナナだったが、それは考助に抑えられる。
「今回は、ナナの出番は無しね」
 考助の言葉に、ナナが不満そうにグルグルと唸った。
「しょうがないじゃないか。これ以上、仕事を取らないでと言われたんだから」
 考助が苦笑しながらそう言ったのにはわけがある。

 盗賊たちを見つけた時に、他の冒険者達と話し合った結果、今回は考助達の出番はいざという時まで後回しという話になったのだ。
 今までの襲撃は、ほとんどが考助達で片づけて来た。
 依頼はあくまでも無事に献上品を運ぶことなので、考助達に任せっきりになっていたのだが、今回は腕の低そうな盗賊が相手という事で冒険者達が張り切ったのである。
 勿論、数の暴力という事もありうるので、考助達の出番が全くないというわけではないが、今までに比べるとほとんどないと言って良いだろう。
 ついでに言うと、最終的にはコウヒやミツキが出ることになっているので、ナナの出番はほとんどないと言って良い。
「まあ、ここでゆっくり結果を待とうよ」
 そう言ってナナの背中に手を伸ばした考助は、ゆっくりとその背中を撫で始めた。
 それで機嫌が直ったのか、ナナは嬉しそうに尻尾をパタパタと振るのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助とナナがまったりとした雰囲気を出している一方で、既に盗賊たちは商隊のすぐそばまで迫ってきていた。
 商隊の人数に比べて倍以上いる人数に後押しされているためか、彼らの顔には笑みが浮かんでいる。
 完全に、羊の群れを見つけた狼の顔になっていた。
 もっともその羊は羊ではなく、より強大な存在だったという事が彼ら盗賊たちの不幸の始まりだった。
 これまでもそうだったのだろうが、人数でごり押しするタイプの集団なのか、個々の能力はさほど高いとは言えなかった。
 はっきり言えば、素人に毛が生えた程度の集団だったのだ。
 それでも数の暴力には敵わないはずだったのだが、今までの度重なる襲撃を越えて来た護衛側は、人数に押されることなく冷静に対処していた。
 後ろに、コウヒとミツキが控えているという安心感もあっただろう。
 多少の無茶をして、自分一人が戦線離脱しても大丈夫という気持ちが、逆にいつも以上の実力を発揮する要因になったのである。

「なにをやってやがる! 相手は十人くらいしかいねーじゃねーか!」
 次々と倒されていく仲間に焦ったのか、盗賊の頭が焦りの声を出していた。
 一応自身が指揮を執るという形を取っていた為に、戦闘には参加せずに後方で見ていたのが災いした。
 次々と数を減らされる現状に、頭はぎりぎりと歯を鳴らした。
 護衛の人数の割に、規模の大きい商隊で美味しい獲物だと思っていたのだが、その護衛の腕が予想よりも上だったのだ。
 まさか運んでいる物の中に献上品があり、更にそれを守るために冒険者の腕が通常よりも一段上だとは考えていなかったのだ。
 浅はかすぎる目論見だったといえるが、通常の盗賊はこんなものだとも言える。
 とはいえ、それなりの規模の人数を抱える頭だけあって、判断はそれなりに早かった。
 これ以上は無駄だと悟った頭が、すぐに退却を決断したのだ。

 頭は指笛を鳴らして、退却の合図を出した。
 仲間たちが逃げ出すのを確認してから、頭も逃げ出そうと商隊に対して踵を返した。
「あら。どこへ行くのかしら?」
 その先に、そう言って立つ美女が一人いて、頭は目の色を変えた。
 商隊の襲撃は失敗したが、この美女を一人連れ帰るだけで、十分元が取れると考えたのだ。
 それが自分の命運を分けることになるとは思わずに。

 余計なことを考えて一瞬を動きを止めた頭を見逃すはずもなく、ミツキはさっさと頭の首を刎ねることにした。
「なっ!?」
 自分の首に近づく刃物に気付けた頭は、それなりに腕が立つ者だったのだろう。
 だが、頭が出来たのはその刃物を見ることだけだった。
 あっという間に頭の首を刎ねたミツキは、すぐに興味を失ったように周囲を見回した。
「あらあら。やっぱり手柄は、ミツキに取られてしまったわね」
 襲って来た盗賊たちが逃げ出したことにより手すきになった冒険者の一人が、ミツキに近づいてきてそう言った。
 ミツキが負けるなんてことは、欠片も考えていない表情だった。
「こんなのが手柄になるのかしら?」
「まあ、こんなのでも一応頭でしょう?」
 ミツキの言葉に、女冒険者は笑いながら答えを返した。

 結局盗賊たちの襲撃は、その後の商隊の移動に大した影響を与えることもなく、ちょっとしたイベントという感じで終幕するのであった。
必要ないかと思いましたが、何となく書きたくなって書いてみました。
すぐに王都に着いても良かったのですが、折角のテンプレイベントを書くチャンスなのでw
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