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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第1章 タウゼン王国編

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(10)それぞれの思惑

書籍化に向けて、第一部の各話に無かったタイトルを付ける作業を行っています。
タイトルあったほうが良いというご意見も複数頂いていますから。
一気に全部は無理なので、少しずつ増やしていこうと思います。
 次の街に着くなり襲撃者のリーダーたちを引き渡した。
 彼らが属していた組織は、その筋では結構な有名どころだったようで、警備兵が慌てた様子を見せていた。
 引き渡しの際に、事情聴取もされたがさほど長い時間は拘束されることはなかった。
 街道沿いにある比較的大きな町で、行き交う行商を狙った盗賊たちが多く発生する地域の為、警備兵たちが対応になれていたのも大きい。
 いかにもいつも聞いていると言った内容の聴取をされただけで、すぐに解放されることとなった。
 レネーとしても懸賞金を狙って引き渡したわけではないので、その辺の手続きを求めなかったのもあるだろう。
 結局警備兵たちに引き渡した襲撃者たちがその後どうなったか、レネー達が知ることになるのは、次の町に着いてからになる。
 さっさと余計な荷物を引き渡して、次の村へ向かいたいというのが、その時の一行の考えだった。
 そんな考助達の思いを余所に、別の場所では様々なことが動き始めているのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 部屋の中には二人の男が一つのテーブルを挟んで座っていた。
 部屋の主と向かい合っている男が面会を求めて、主がそれを了承してこの場が設けられている。
「それで? わざわざ会いに来たという事は、何かあったか?」
「はい。例の物ですが、運搬中に邪魔にあったようです」
「何・・・・・・?!」
 部屋の主は若干腰を浮かしかけたが、向かい合っている男の態度を見てすぐに落ち着きを取り戻した。
 変わらない表情を見て、物自体は無事だと判断したのだ。

「それで? 其方の態度を見る限りでは、物自体は無事なようだが?」
「はい。今もこちらに向かってしっかりと移動しています。どうやら襲われはしたようですが、雇った冒険者が撃退したようです」
「・・・・・・ふむ。なるほど」
「問題は、襲った者達がとある組織に属していたようでして・・・・・・」
「ほう?」
 相手の申告に、主が興味を持ったのか表情を変えた。
 そして片手で、話を続けるように促すのであった。

「・・・・・・それで、最終的には警備兵に引き渡して終わったようです」
 主は相手から聞いた話を反芻するように、上を向いた。
 次いで、向き直った顔には、本当に有ったことなのかと書いてあった。
「つまりは何か? あの組織のメンバーに倍の人数で襲われたにもかかわらず、全ての荷物をしっかりと守り切った上に、リーダー格は警備兵に引き渡したと?」
「端的に言うとそういう事になりますね」
「・・・・・・でっち上げということは?」
 主がそう言う事にもきちんとした理由がある。
 考助達が護衛している商隊を襲ったメンバーが属していた組織は、腕が立つ構成員が多いという事でも有名だったのだ。
 それを、ほとんど無傷で守り切ったという事を信じろという方が無理がある。

「全てを信じる必要はないでしょうが、ある程度の信ぴょう性はあるかと」
「ほう?」
 主は向かい合っている男に、続けるように促す。
「警備隊に引き取られたはずの者達ですが、商隊が町を発ったあとにすぐに釈放されたようです」
「なるほど、な。・・・・・・何ともわかりやすい」
 部屋の主の呆れたような言葉に、向かい合っている男は表情を変えずに黙ったままでいた。
 何かの返答を期待した言葉ではないことを察したのだ。

 しばらく黙っていた主だったが、やがて口を開いた。
「・・・・・・まあ、いい。その話が本当のことなら、間違いなくここに到着できるだろう。それに、近づけば近づくほどこちらもやりやすくなる」
「はい」
「まあ、やりやすくなるのは相手もそうだろう。だが・・・・・・出来ることなら完全にここに着く前に、尻尾を出してくれればいいが・・・・・・」
 最後に小声で呟いた主の言葉は、相手に届くことなく空中で霧散するのであった。

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「それで? 襲撃は失敗したと?」
「・・・・・・はっ」
 自分の前で頭を垂れている相手に向かって、その男は侮蔑の視線を向けた。
「御大層なことを言って、大金をせしめた結果がこれか。そろそろ其方との関係も終わらせた方が良いのか?」
「返す言葉もございません」
「・・・・・・フン」
 ただひたすらに頭を下げている相手に、尊大な態度を取り続けている男はただ鼻を鳴らすだけだった。
 使えないからと切ったとしても、次の一手を討つための手駒が無いことも事実だ。
 いや、実際には動かせる駒はあるのだが、動かしたとたんに自身の関与を特定されてしまう。
 今のように素知らぬ態度を取り続けることが出来なくなってしまう。
 それは、本当に最後の手段として取っておくしかないのである。

「・・・・・・まあ、いい。次の手は打ってあるんだろうな?」
「勿論です」
「なら、いい。・・・・・・忘れるな。目的の物を奪って初めて依頼が完了だからな?」
「・・・・・・承知しています」
 ひたすら頭を下げたままだった相手が部屋から出ていくのを見送った後、尊大な態度の男もその場から立ち去った。
 そもそも周りに知られることが無いように、普段出入りしないような場所を選んで会っていたのだ。
 ここで正体がばれるような愚を犯すつもりはない。
 十分に周囲を警戒した上で、本来の自分がいるべき場所へと帰っていくのであった。

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 そんなやり取りがされているとは露知らず、考助達はのんびりと行商の旅を続けていた。
 襲撃者を置いてきた町で、いくつかの商品を売却したのだが、新しい品物も購入しているので荷物の量に増減があるわけではない。
 襲撃者が来る前と同じように、ナナがモンスターの対応をしては通過するという事が繰り返されていた。
 変わったことがあるとすれば、冒険者達の考助達を見る態度がさらに良くなったことだろうか。
 倍を超える人数に襲われたにもかかわらず、人員的にも荷物的にもほぼ無傷という結果を残したのだ。
 普通ではありえない結果なのだ。
 自分達だけでは、間違いなく防ぎきることが出来なかったことがわかっているだけに、そういう態度になっているのだ。
 それまでも見下したりと言った態度は全くなかったのだが、今では雲の上の存在を見るような態度になっている。
 少なくとも冒険者達で、考助達のことをCランクの額面通りに受け取っている者はほとんどいないだろう。

 そんなわけで順風満帆に首都への行程を進める一行だったが、このまま無事に首都へ着けると考えている者は誰もいなかった。
 何しろ、レネーが依頼元の商人ギルドから受け取った手紙で、警備隊に預けた襲撃者が解放されたことが記されていたのだ。
 どう考えても上からの圧力があったと考えた方が良いと誰もが思っている。
 それでも特に脱落者もなく順調に進むことが出来ているのは、間違いなく考助達の実力を見ているおかげだった。
 軍隊に囲まれたりすれば、無理だろうと潔く諦めるしかないと考えている。
 まさか、例え一国の軍隊を相手に勝ち切ることが出来るとは、流石に想像の範囲外だろう。

 考助達もそこまでの実力を出すつもりは毛頭なかった。
 ちなみに考助達は、移動の最中に既に今後はどういった対応をして行くのか、神力念話を使って確認してある。
 ここまで来ると、国の上層部か王家の関与が考えられるので、首都に着いた時点で何かの打診があるはずだと睨んでいるのだ。
 その際に、商隊全員が呼ばれることになるのか、それとも一部になるのかはまだわからないのだが。
 呼ばれなかったとしてもそれはそれで構わない。
 というよりも、呼ばれたときの方が厄介ごとに巻き込まれる可能性が高いのだから、出来ればそんなことは無い方が良いと思っていたりする。

 それぞれの思惑により事態が動きながらも、渦中の商隊は何事もないかのように首都への道をひたすらに進むのであった。
わざと名前を出さないように書いたのですが、全体的に分かりずらくなってしまいました><
ぼかした表現は今回だけ・・・・・・のはずなので、次からはちゃんと名前が出てきますw
+注意+
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