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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第1章 タウゼン王国編

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(7)襲撃

 王都へと向かい、いくつかの村と町を通過して行程の三分の二程が過ぎた時のこと。
 これまでは、ナナが対応することによって、一度もモンスターに襲われることが無かった商隊だったが、ついに変化が訪れた。
 商隊を狙うものが、モンスターであれば今までの通りナナに任せればよかったのだが、そうはいかない事情が発生したのだ。
「・・・・・・レネーさん、問題が発生しました」
 気を紛らわせるために、コウヒやミツキと共に御者台にいた考助が、荷馬車にいたレネーにそう耳打ちをした。
 これまで難なくモンスターの襲撃を躱して来た考助達が、わざわざ問題というからには問題なのだろうと予測したレネーがため息を吐いた。
「ナナでは対応が難しいのですか?」
「ああ、いえ。モンスターであれば、大抵の相手は蹴散らせます。問題は相手が人の場合でして・・・・・・」
 言葉を濁した考助だったが、レネーはすぐに何を言いたいのか察して眉を上げた。
「盗賊ですか?」
「そこまでは距離がありすぎて、まだわかりません」
「そうですか・・・・・・」
 そう言いつつレネーは考え込んだ。
 相手がただの盗賊の場合は問題ないのだが、それ以外(・・・・)の場合はさらにややこしいことになる。
 考助も今回運んでいる荷物が、ごく普通の商隊で運ぶようなものではないと察しているからこそ、こうしてレネーに忠告しているのだ。
 あとをどうするかを判断するのは、レネーの役目になる。
「取りあえず、どういった相手か判断できるかまでは進みましょう。大丈夫ですか?」
 言いたいことを察して、考助は頷いた。
 レネーがこの荷物を急いで王都に運びたいと思っているのは、考助も分かっている。
 だが、大人数で囲まれてしまった場合は、防ぎきれないこともあるのだ。
 食い詰めた盗賊程度であれば、何とでもなるがきちんとした訓練を受けた相手だとそうもいかない場合がある。
 レネーや考助もそうした相手を想定しているのだ。
 勿論、コウヒとミツキが本気を出せば、どんな相手も簡単に蹴散らせるだろうが、そこまでするかどうかはまだ決めていない。
 それもまた、相手を見定めてから、という事になる。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 相手に気付かれないように、いつも通りの速度で進みながら近づいて行く。
 ある程度の距離に近づいたところで、他の者達よりもはるかに視力が高いコウヒやミツキが相手の様子を話し出した。
「どうやら、一見して盗賊のように見えるけれど、着ている物は綺麗ね」
「そうですね。薄汚れているようには見えません」
 コウヒやミツキが言うには、ごく普通の盗賊にしては身ぎれいすぎるようだった。
 あからさまに怪しい集団だ。

 そうした情報を考助はレネーへと伝えた。
「・・・・・・やり過ごすか、戦闘になったとして切り抜けることは?」
「出来なくはないでしょうが、いいのですか?」
「戦闘になった場合は、仕方ないです」
 レネーがそう決断したことにより、それらの情報はしっかりと後に続いている護衛達に伝えられた。
 そのため、ようやくの護衛らしい仕事に、冒険者たちの顔も気を引き締めた表情になっていた。

 作戦としては、襲撃に気付ていないふりをして商隊を進める。
 その間に、コウヒが集団の背後に近づき仕掛けられる前に、仕掛けるという物だ。
 更に、相手が混乱しているうちに、相手を全滅させるというというオプションもある。
 一番の胆はコウヒが最初に攻撃を仕掛けるときに相手のトップを襲えるかどうかだが、その辺はコウヒも理解している。
 そのため、コウヒだけは馬車よりも先に進んでもらっている。
 大分前に行ってもらっているので、相手のことを十分に観察する時間はあるだろう。

 襲撃ポイントと思われるところまでは、何事もないように商隊は進んで行った。
 一番ジリジリした時間だが、少なくとも冒険者たちには焦りと言った表情は無かった。
 直接戦闘をしている所を見せたことはないが、これまでのモンスターへの対応で、考助もある程度は信用されているのだろう。
 相手の数は二十人程度。
 単純計算で一人が二人を倒さなければならないが、コウヒとミツキがいるためにそうはならないだろう。
 そのコウヒとミツキには、出来るだけ相手を殺したりしないように頼んである。
 それは、相手のことを考えているわけではなく、情報を得るためだ。
 相手側は、こちらの商隊を取り囲んで襲うつもりのようだった。
 商隊を囲めるように、街道の両脇に部隊を分散させている。
 挟み撃ちを狙っているのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 商隊がある程度進んだところで、戦闘開始となった。
 口笛のような甲高い音が辺りに響く。
 それが相手側の攻撃の合図だったのだろう。
 物陰に隠れていた者達が一斉に商隊に向かって襲って来た。

「襲撃だ!」

 わざと初めて気付いたような声で、考助が一行へと声を掛けた。
 すぐに荷馬車のほとんどがその場に止まった。
 だが、一番先頭を動いていた馬車だけは速度を上げて、その場から離脱しようする。
 これも最初からの計画なのだ。
 レネー曰く、最悪この馬車だけが王都に付けば、目的は達成されるらしい。
 そのため、わざと他の馬車と離れるようにしたのだ。
 さらに、相手がどの程度の情報を持っているかを見極める目的もある。
 そもそも襲撃者が狙っているのがレネーの予想通りだと、先頭の馬車を狙うはずなのだ。

 一方、別行動していたコウヒは、考助の合図とともに行動を開始していた。
 コウヒにとっては十分すぎるほどの時間があったために、既にこの一行のリーダーらしき者には当たりを付けてある。
 すぐさま、その人物に向かって攻撃を仕掛けた。
 ただ、相手もかなりの実力があるのか、全く気付かれずに襲う事は出来なかった。
 顔を見る限りでは驚いていたが、すぐにコウヒに気付いて武器を向けて来た。
 とはいえ、出来たのはそこまでだった。
 すぐにコウヒに急所を攻められて、その場に沈み込むことになる。
 同時に周囲にいた者達もその後ですぐに沈められた。
 その間、時間では三十秒も経っていない。

 コウヒがリーダーを沈めたとはいえ、相手もある程度此方側の行動を予測していたのか、先頭の馬車だけがスピードを上げてその場を離れても特に混乱は起きたようには見えなかった。
 この時点で残っていた戦力の半分近くが、先頭の馬車に向かって来た。
 相手も馬に乗っているので、このまま逃げ続けることは不可能だ。
 ある程度離れたところで止まることになっている。
 すぐに応援には来れない程度の距離を保ったところで、馬車を止めた。
「ミツキ、そろそろいいよ」
「分かったわ」
 そう言ってミツキだけ馬車からある程度の距離を取った場所へと移動した。
 一緒に乗っていたナナも同じように移動している。
「ノール、頼んだよ」
「了解」
 考助がそう声を掛けると、ノールが馬車全体を守るように結界を張った。
 考助とレネーはその結界の内側にいる。
 後は、向かって来た襲撃者たちをミツキとナナで殲滅すればいい。
 相手がこの結界に対応できるかどうかが問題だが、その場合も特に心配はしていない。
 妖精であるノールが張った結界は、それなりに高位の魔法使いでも破るのには時間がかかる。
 というよりも、短い戦闘中に破ることは不可能だろう。
 例え相手側に精霊使いがいたとしてもそれは同じだ。
 精霊と妖精では、それほどの力の差があるのだ。
 こうして馬車を守る結界で覆う事で時間を稼いで、あとはミツキとナナに任せる。
 単純な作戦だが、一番確実な方法だと考えて実行に移したのである。
別部隊の様子は次回。
書いていないですが、相手のリーダーを倒したコウヒは別部隊の方へ行っています。
戦闘を複数回に分けるのが少ない本作ですw
次回には決着がつく・・・・・・と良いですね。

そして現在、この章を別の部として書くか悩んでおります。
どう考えても20話超えそうですw
この章を閑章みたいな感じで書いて、その後は第三部とするか。
トワも学園を卒業して子供たちも成長しているので、前章で一区切りにしてもいいかなと考えています。
後々章構成に変更が入るかも知れませんが、ご了承ください。
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