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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3部 西大陸旅行編

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(2)競争

 考助はサウリの街の公的ギルドで、待ちぼうけを食らっていた。
 何を待っているかというと、コウヒとミツキがまるで洋服を選ぶ時のように真剣に依頼を選んでいるのだ。
 考助としては、ちょっとした運動のつもりで依頼を受けたらどうかと提案したのだが、それを言われた二人がすぐにこのような状態になったのである。
 離れて見ていれば、可愛い物を選んでいる時の女性のように見えるのだが、会話を聞くとそんな思いも吹き飛ぶだろう。
 何しろ、このモンスターは歯ごたえが無いとか、このモンスターは逃げるだけなので面白くないなどと会話しているのだから。
 ギルドに入って来た二人を見て目の色を変えていた他の冒険者たちが、その会話を聞いて引いた感じになったのは決して気のせいではないだろう。
 何しろ二人が選んでいるのは、Cランクの依頼でここらあたりに出入りしている冒険者にしてみれば、かなりの高いランクの部類に入る依頼なのだ。
 会話の端々から聞こえるモンスター名に、様子を窺っていた冒険者たちが顔色を変えていくのが見て取れた。
 考助はその様子を他人事のように、少し離れた場所でナナと共に見守っているのである。

「これに決めました」
 ようやく受けるべき依頼を決めたのか、コウヒとミツキが掲示板から戻って来た。
 二人の手には合わせて三枚の依頼表が握られている。
 一つのパーティで受けられる依頼の上限が三つまでなのだ。
 折角の機会なので、最大限受けておこうという意図が見え見えである。
 そこまで依頼を受けたかったのかと内心首を傾げた考助だったが、そこは突っ込まなかった。
 考助もちゃんと成長しているのだ。
「そう。それじゃあ、受付行こうか」
「そうね」
 考助の言葉に、ミツキが頷いて受付へと向かう。

 その隙を狙って、とある冒険者が考助へと話しかけて来た。
「おいおい。お前さん、大丈夫か?」
 その表情を見る限りでは、考助をからかっているわけではなく、本気で心配している表情が見て取れた。
 依頼の内容を知っているのか、一見して強そうには見えない考助を気遣っている表情だった。
 傍から見れば、美女二人に良い所を見せようと背伸びをしているように見えたのだろう。
 そうした冒険者の想いをくみ取って、考助は肩を竦めて答えた。
「まあ、何とかなるでしょう。いざとなれば、彼女たちの後ろに隠れていますよ」
 それくらいの信頼関係はあります、と言外に告げた。
「そうか。それならまあ、死なない程度に頑張れ」
「ええ。わざわざありがとうございます」
 特に気負うような様子も見せない考助に安心したのか、その冒険者は仲間たちの元へと戻って行った。
 ちなみに、二人の会話はしっかりとコウヒが聞いていたが、特に何かを言ってきたりはしなかった。
 わざわざ自分が口を挟むことではないと思っていたのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 一度宿に戻って一泊してから、依頼にあるモンスターが出る場所へと向かった。
 三つ選んだ依頼は、全て同じような場所に出てくるのを選んであるのだ。
「それじゃあ、さっきも言った通り本性(翼)を出すのは駄目だからね」
 考助の念押しに、コウヒとミツキは同時に頷いた。
 こんな場所で二人が本気を出せば、自然破壊もいいところだ。
 何より本性を出さなくても、十分倒せるモンスターしか出てこないのだ。
「それじゃあ・・・・・・スタート!」
「負けないわよ!」
「それは、こちらの台詞です」
 考助の掛け声とともに、二人はそう言い残してその場を去って行った。
 折角三つの依頼を受けたので、一人ずつそれぞれの依頼を選んでもらって競争することにしたのだ。
 残りの一つは、考助とナナでのんびりと狩って行くことになっている。
 ちなみに、コウヒとミツキが考助の護衛を離れているのは、妖精達の力を使えば考助をどうこうする事が出来るモンスターがいないためである。
 更に、ナナも嬉しそうに考助の傍を付いてきているので、二人が傍に張り付いている必要はない。
 そう考助が二人を説得したのだ。
 以前も二人の護衛を離れて行動したこともあり、コウヒとミツキもあっさりとその言葉を受け入れた。
 考助にしてみれば拍子抜けだったが、戦闘面でもある程度信頼されているんだと改めて実感できた一面だった。

 

「・・・・・・ふう」
 考助は、目の前のモンスターが倒れたのを見て一息ついた。
 主に戦ったのはナナと風の妖精であるシルフだ。
 コウヒとミツキが依頼をこなしている間、考助達はただぼおっと待っているだけではつまらないので、残りの依頼をのんびりと消化することにしたのだ。
 考助の傍にはノールも出現していて、考助の防御を担当している。
「シルフ、この辺りに同じモンスターはいない?」
 何となくシルフに確認して見たが、すぐに答えが返って来た。
「いるよ。あっちの方」
「そうか。それじゃあ行こうか」
 ナナも他の眷属やモンスターに比べてかなり鼻が利くのだが、シルフはそれ以上にモンスターの索敵能力が高い。
 こういう時はシルフに聞いた方が良いというのは、考助の経験上分かっている。

 シルフの指示通り進むとすぐにナナも反応して、二回目の戦闘へと突入した。
 特に問題なく二度目の討伐も終わらせて、続いて三度目の戦闘も難なくクリアした。
 元々持っていた依頼が少ない討伐数の物だったので、これで一つの依頼はこなしたことになる。
 忘れないように、討伐部位も回収済みだ。
 モンスターの処理をしたあとは、その場でコウヒとミツキが来るのを待っていた。
 ちなみに、当然のように自作したアイテムボックスの魔道具があるので、モンスターの死体はそのまま回収してある。
 考助にしてみれば特に必要な素材は無いのだが、後でシュミットあたりに渡せば喜んで買い取ってもらえる。
 三度目の戦闘が終わってしばらくの間考助は、ノールに結界を張ってもらってその中でナナと戯れていた。
 管理層の中ではなく、自然の中でこうしてナナと戯れるのも久しぶりの事だ。
 やはりナナは、人工物の中にいるよりも、こうして自然の中にいる方が元気がある。
 そんなナナの毛皮を考助は十分にモフモフして堪能するのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 コウヒとミツキは、ほぼ同時に考助の所へと戻って来た。
 別れた場所からはだいぶ離れた場所にいたのだが、どうやってか二人共考助の位置を探し出していた。
 たまにGPS機能でも付けているのではないかと思うぐらい正確に、考助の居場所を探し当てる二人なのだ。
 そんな考助を余所に、最初に戻って来たミツキが嬉しそうに結果報告して来た。
「どう? ちゃんと依頼分倒して来たわよ!」
 そう言って、ドサドサと音を立ててアイテムボックスに仕舞っていたモンスターを出して来た。
「おお。確かに依頼通りの数だね」
「当然よ!」

 そんなことを話していると、コウヒも戻って来た。
「ま、間に合いませんでしたか」
 そう言いながらがっかりとした表情を見せたコウヒも、ミツキと同じようにアイテムボックスから依頼分のモンスターを取り出した。
「どうよ! 私の勝ちでいいわよね?!」
「・・・・・・致し方ありません。ルールはルールですから・・・・・・」
 今回は譲ります、と続けようとしたコウヒだったが、考助に遮られた。
「ああ~、それなんだけれど、今回はナナの勝ちかな」
 そう言って考助は、三つめの依頼の討伐部位を取り出した。
 それを見て、コウヒとミツキは目を丸くした。
「「い、いつの間に・・・・・・」」
 声を揃えて呆然とする二人を見て、なかなかない光景に考助は楽しそうに笑った。

「ただ待っているのも暇だったから、ついでに討伐してみた」
「そ、そんな・・・・・・」
「残り物勝ち、ですか・・・・・・」
 二人はそう言ってガックリと肩を落とした。

 何故二人がこんな表情になっているかというと、討伐開始する前に先に依頼をこなした方が、一日考助と二人だけで過ごせると決めていたためだった。
 それ故に、二人は張り切って討伐に向かっていたのだが、それを考助と一緒に討伐していたナナがかっさらったことになる。
 まさしく棚から牡丹餅と言った所だろう。
 当の本人(本犬?)は、意味が分かっているのかいないのか、考助の隣で嬉しそうに尻尾を左右に激しく振っているのであった。
漁夫の利の方が正しいですかね?w
それはともかく、第一回(?)考助争奪戦は見事ナナが勝利しました。
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