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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 塔の外で色々やろう

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(16) 魅了

 コウヒがシュレインに剣を突き付けているのを見た考助は、慌ててそれを止めた。
「コウヒ、待って待って」
「・・・・・・ですが・・・」
「いや、こっちは普通に状況が分かってないから。説明もらってからでも遅くないよね?」
 何せ部屋に入ってすぐ、見慣れない女性に気を取られて、正気に戻ったと思った瞬間に、この状況である。
 考助にしてみれば、訳が分からない。せめて説明の一言でも欲しかった。
 考助の視線を受けて、コウヒは渋々とシュレインに突き付けた剣を下した。
 それを見た考助は、安心したようにシュレインの方を見た。
「それで? ・・・これはどういう状況?」
「ふむ。お主と一緒に歩いているときに、何やらこそこそと付け回す気配を感じての」
「・・・で?」
「まあ、それだけだったら放置しておいたんだが、その者から珍しい気配を感じたので様子を見てみることにしたのだ」
 神殿前でシュレインが考助たちと別れたのは、そのためだったということだ。
「珍しい気配?」
「うむ。まあ、一言で言えば、魅了だの」
「それは・・・あれですか。問答無用で相手を惹きつけるようなもの?」
「まあ、間違っていないかの」
 彼女を見た瞬間に、考助が気を取られたのもそう言うことだろう。
 ついでに、今から思えばシルヴィアも同じような状態になっていたように見えた。
 シルヴィアの方を見ると、納得したように頷いていた。
「・・・同性も惹きつける魅了って・・・すごくない?」
「うむ。その通りだの。少なくとも吾は初めて見た」
 考助は、改めて女性の方を見た。
 流石に気を張っているので、また同じような状態になることは無かったが、それでも相変わらず惹きつけるような魅力は、凄まじいの一言である。
「それで、なんでこんな状態に?」
「主様、それは逆です。こんな状態なのにもかかわらず、先ほどの状況になるということの方が危ないのです」
 苦虫を噛み潰したような顔で、コウヒが口を挟んできた。
 それを聞いた考助も、コウヒの言いたいことがわかった。
「・・・それはつまり、手足を縛られてたりしなかったら、もっと魅了の力がすごいってこと?」
「確実にそうだの」
 シュレインが、断言するように頷く。
 それを聞いて考助もやっとコウヒの行動を理解した。
 どう考えても、考助にとっては(というより、世の男性にとっては)危険物並みの人物だ。
 ここで、ふと考助が疑問に思った。
「・・・あれ? そんなすごい力があるのに、どうして普通に街にいることが出来るの?」
 シュレインに捕まるまでは、考助たちを付けていたと言っていたはずである。
「そうだの。まあ、吾もそうなんだがの。この手の種族の特徴として、隠密というか、周囲の者から自身の認識を外すことが出来る特技を持っておる」
「それは、また・・・なんというか・・・その手の職業に、引く手あまたになりそうな・・・」
 考助の脳裏には、暗殺者という言葉が思い浮かんでいる。
「実際、そういう職に就いている者もいるのではないか? この者がそうであるかは、まだ聞けていないが」
「聞いてないの?」
 考助たちがここに来るまでに、結構な時間があったはずだ。
「聞こうにも聞けないのだ。この者の声も、その手の力があっての。同種の力を持っておる吾まで、引きずりこまれそうになったのは、流石に驚いたわ」
「それは、また・・・」
 一同、絶句である。
 その中にコウヒも含まれているのが、彼女の力の凄まじさを物語っている。
 それを聞いて初めて、コウヒが彼女に興味の視線を向けた。
「ということは、何の目的で主様を付け回していたかも、聞けていないのですね?」
「そういうことになるの」
 シュレインの返事に、コウヒが考え込むような仕草をした。
 情報を聞けているのならともかく、このまま放ってしまうのも問題だと考えているのだろう。
「というわけで、吾としては専門家に任せてしまうのはどうかと思うのだが?」
「専門家?」
 そんな者がいたのかと、考助は首を傾げた。
 念のためシルヴィアの方を見たが、首をブンブンと左右に振られて否定される。
 それをみたコウヒが、答えを示した。
「ミツキ、ですね」
「うむ。吾を召喚するくらいだ。恐らく、その手の者にも詳しいであろう?」
 逆に、コウヒは詳しくはない。
 なるほど、と考助も頷いた。
「そういうわけだから、この場はコウヒ殿に任せてよいか? 吾はミツキ殿を連れてくる」
「・・・仕方ありません。それしかないでしょう」
 塔までの転移を使えるのが、自分とシュレインしかいない上に、自分が考助のそばから離れる選択肢が取れない以上、そうするしかない。
「晩御飯には間に合うように、戻ってくるからの」
 シュレインはそう言って、部屋を出て行った。
 ミツキが来るまで女性はそのままなのがかわいそうだと思わなくもないが、考助に与える影響が大きすぎるため仕方ない。
 何より、コウヒが拘束を外すことは、許さないだろう。
 結局、ミツキが来るまで考助は、なるべくその女性を視界に入れないように過ごすのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 宣言通りシュレインは、晩御飯前に戻ってきた。
 来る途中である程度の説明をしてきたのか、ミツキはすぐに女性の方を見て、納得したように頷いている。
「へえ。なるほどねえ。これは、凄いわね」
 ミツキはそう言った後、見られて身じろぎをしている女性に近づいて行った。
 それを見て、その女性は何かを感じたのか、何とか後ずさりしようとしている。
「こら、逃げないで。せっかく助けようとしてるのに」
 女性に近づいたミツキは、女性の眉間に右手の人差し指を当てて何事か呟いた。
 それを聞いた女性は、驚いた表情をしている。
「はい。これで終わり。もう解いてもいいわよ」
 ミツキがそう言った瞬間考助は、女性から感じていた圧迫感(?)のような物が消えるのを感じた。
「そうか」
 ミツキの言葉に、シュレインが拘束を解いた。
 女性を縛っていた拘束は、ただの紐を縛っていただけではなく、シュレインの魔法も併用していた。
「あの・・・ありがとうございましたぁ」
 猿ぐつわを外された女性が、ミツキに頭を下げた。
「あら。お礼を言うってことは、何をやったかわかってる?」
「はい~。あれは、私の故郷にも伝わっている技法ですからぁ・・・でも、私に掛けられる人がいなくて・・・」
 ミツキが女性に対してやったのは、魅了の威力を封じ込める術だ。
 彼女の種族にも当然その術は伝わっていたのだが、掛ける相手によって相応の力が必要になる。
 彼女の魅了の力が強すぎて、封じを使える者がいなかったのだろう。
「そう。・・・それにしても、貴方、セイレーンも混じってる?」
 そう言われた女性は、目を大きく開いて再び驚きを現した。
「そんなことまで・・・わかるんですかぁ?」
「ええ、まあ、何となくだけど」
「なるほどの。そういうことか」
 二人の会話を聞いたシュレインも、納得したように首を上下に振っている。
「それにしても、ずいぶん上手い具合に混ざったもんだの」
「そうね。それにこの様子だと、あっちの方は、恐らく本人も気付いてないようね」
「そうだの」
 ミツキとシュレインの二人の会話に、他の全員が置いて行かれている。
「二人とも、お互いだけで納得していないで、僕たちにもきちんと話してほしいんだけど?」
「そうね。でもその前に、やることがあるでしょう?」
「やること?」
 考助が、ミツキに言われて首を傾げた。
「そもそもなぜ、考助様を付けていたのか、確認しないと。・・・教えてくれるわよね?」
 ミツキが確認するように、女性の方を見ると、その女性も頷いたのであった。
明日は、13時20時の2話投稿の予定です

2014/6/9 誤字脱字訂正
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