挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 クラウンの活動

473/1220

(4)更なる発展へ(その1)

明日5/17 17:00~ 公式生放送で、なろうコンの受賞作品の発表があるようです。
本作品は今のところ第二次予選まで通過しています。
是非とも応援よろしくお願いいたします。
 ラウールは現在、会議に出席していた。
 統括のサラーサを始めとして、シュミット以下商人部門の本部役職が勢ぞろいしていた。
 月に一度、似たような会議が行われているのだが、その際にはサラーサが出席することはほとんどない。
 出てくるときは、重要な話があるときだけだ。
 以前この会議にサラーサが出てきたときは、新しい支部が出来ることが決定した時だった。
 サラーサが出てくるという事は、商人部門のみならず、クラウンという組織にとって重要なことがあるという事になる。
 この場に出てくる全員がそのことを理解しているので、空気が張りつめていた。
 サラーサもそのことに気付いているので、ニコリと笑って最初に言葉を発した。

「お邪魔してごめんなさいね。察していると思うけれど、重大な発表があるからそう心づもりをしておいて」
 そんなことを言われて、他の出席者は動揺しないはずがない。
 そこかしこでお互いに視線を合わせる者が続出している。
 ラウールも同じで、隣にいたアミントレと視線を合わせていた。
「・・・・・・先に仰っていただけないので?」
 やはりいち早く立ち直ったのは、サラーサの唐突さに慣れているシュミットだった。
 そんなシュミットに、サラーサは小さく首を傾げた。
「言っても良いのだけれど、私が先に言うとそちらに意識が行ってしまうのでは?」
 言われてみればその通りである。

 そもそも今回の会議は、一か月の間の定期報告なのだ。
 この一か月の状況を確認して、更に先の予定を立てる重要な話し合いだ。
 いくらサラーサの話が重要だと言っても、簡単に先延ばしにしていい会議ではない。
 サラーサの言う通り、重要な話を聞いて気もそぞろにその会議をするよりも、まずはいつもの定期報告を済ませた方が良いだろう。
 その場にいる全員が、サラーサの言っていることを理解して頷いた。
 そこでようやくサラーサ参加の衝撃から立ち直り、本来の会議をスタートしたのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 商人部門と一口に言っても業務は多岐に渡る。
 そもそも商人部門だけではなく他の部門も加わっているクラウンという組織の一部門なのだ。
 単に外部との商売のやり取りだけではなく、内部でのやり取りも発生するのだ。
 見ようによっては他部門は外部とも言えるのだが、クラウンは完全に部門を分けているわけではないので、時に複雑なやり取りが発生することもある。
 それが表に見えているのが、冒険者窓口に併設されている素材の買取カウンターだろう。
 買取カウンターに立つ者は、商人部門の人間というわけではなく冒険者部門の人間というわけでもない。
 悪く言えばどっちつかずで、良く言えばどちらにも対応できるマルチな人材という事になる。
 完全に区切れば人材育成という点から見てもやりやすいのだろうが、それでは駄目だというのがクラウン設立当初からの方針なのである。
 そのため、当然ながら、ラウールたち幹部もその専門の分野だけ知っていればいいという事にはならない。
 途中から業務が増えれば文句も出てくるのだが、最初からそう言う物だと分かっていれば、人間は努力するのだ。

 素材の仕入れや他大陸からの仕入れに始まり、工芸部門への商品加工の依頼、最終加工品の納品まで、あらゆる報告がその場で行われていく。
 最終的に、今月の収支がどうだったのかという全体の発表をシュミットが行い、現状の確認が終了する。
 その後は、今後の方針や目標の設定になる。
 目標と言ってもモンスターといういつ発生するか分からないような物を相手にしている以上、絶対に達成しなくてはならないという物ではない。
 とはいえ、ある程度の目標を定めておかないと、組織としてだれてしまうのも確かだ。
 そのため、ある程度の数値目標というのを設定してあるのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 それらの話し合いが終わり、全員がひと段落ついたところで全員の視線がサラーサへと集まった。
「もういいのかしら?」
 そう言って首を傾げたサラーサに、全員が頷いた。
「はい。いつもの報告会は終わりです」
 最後に、シュミットがサラーサへそう言った。
「そう。それじゃあ、私からの報告ね。・・・・・・今から緊張していたら、正しい判断が出来なくなるわよ?」
 サラーサが、緊張する幹部たちを見てクスリと笑った。
 その笑顔で、幹部たちの表情が幾分か和らいだ。

「まず一つ目ね。現人神のご厚意により、神能刻印機の大幅増産が可能になりました。これにより支部の大幅な増設の道筋が出来たわ」
 一つ目の報告から、その場がざわめいた。
 この十数年で、支部の数がさほど増えていないのには、各国の思惑で設置が出来なかったというのもあるのだが、それ以上に神能刻印機の問題もあったのだ。
「それは、今まで以上に設置コストが下がったという事でしょうか?」
 代表してシュミットが問いかける。
 シュミット自身は、直に考助からより低コストな神能刻印機の開発をしていることを聞いていたが、開発に成功したことまでは聞いていなかった。
「ええ。そうなるわ。コスト的には、今までの十分の一以下に出来るそうよ」
 それを聞いた幹部たちがざわめいた。
 神能刻印機の設置コストの問題は、クラウンの大きな課題だったのだが、その負担が大幅に減ったことになる。
 今サラーサが言った値段で設置できるとなると、少なくとも各国の首都に支部を置くくらいは問題ないくらいのコストになるのだ。
 神能刻印機が直接関係しているのは冒険者部門とは言え、商人部門にとっても非常に重要なことだった。
 何しろ支部が増えるという事は、それに伴って買取カウンターの業務も増えるという事になるのだから。
 現に担当者のラウールの顔が青くなっている。
 彼の顔には、早く人材を育てなければという文字が浮かんでいた。

 ラウールを含めた幹部たちのそんな思いに気付いたのか、サラーサはさらに言葉を続けた。
「今ある神能刻印機更新と、新しい場所への設置をどうやって行くのかは冒険者部門とよく話し合って決めてください。メンテナンスの問題もあるでしょうしね」
 神能刻印機は神具とはいえ、メンテナンスも必要なのだ。
 簡単に言えば、いくらなんでも一度も清掃せずに済むような便利機能は付いていない。
 そのため今ある神能刻印機もメンテナンスは行っている。
 ただし、ステータス表示に関わる部分は除いて、であるが。

「・・・・・・なるほど。早急に話し合う必要がありますね」
 すぐにでもガゼランと連絡を取る気になったシュミットだったが、それを見たサラーサは首を振った。
「特に急ぐ必要はないです」
「・・・・・・え?」
「今回の話は、あくまでも新しい神能刻印機が出来たという報告です。それを使ってどういうふうにクラウンを広げていくのかは、貴方達にお任せします」
 サラーサを含めた統括は、既に業務について詳しい方針を指示することは無くなっている。
 勿論、監査に関しては行っているのだが、クラウンがどういう方針で経営をして行くのか、具体的な内容を決めるのは部門長以下の幹部たちに委ねている。
 サラーサの言葉は、実務の実態を見て出来る範囲で広げて行けばいいと言っているのだ。
「そうですか」
 セントラル大陸では急激に勢力を広げたクラウンだが、それは様々な要因が重なってのことだ。
 他大陸になると、そもそも国家という物が存在している以上、そんな簡単に行かないことは明白だった。
 サラーサの言いたいことを察したシュミットは、勇み足だった気分を落ち着かせるように頷いた。
 それは、シュミットだけではなく、ラウールを含めた幹部たちも同じだったのである。
久しぶりのサラーサ登場です。
というか、ここまで言葉を発したのは初めてでしょうか?w

ちなみに、本文にもチラリと書きましたが、考助とシュミットの交流(?)が減っているというわけではありません。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ