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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その9)

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(4)叱責

 しばらくの間、今後学園でどう対応すべきか、フローリアの側近も交えて意見が交わされた。
 ルフィノがその場にいたのは、学園に子を通わせている親としての意見を聞くためだ。
 そんな話をしている最中に、ルフィノはこの場所に呼ばれた本来の目的を思い出した。
 そもそもこの執務室に呼ばれるのは、その人物の降格の知らせだったり叱責の為だったはずだ。
 息子の起こした騒動の叱責の為とも言えなくはないのだが、ルフィノ自身にとっては叱責になっていない。
「あの・・・・・・そもそも私が呼ばれたのは、叱責の為ではないのでしょうか?」
 そのルフィノの言葉に、フローリアと側近が視線を合わせた。
 その後、フローリアが苦笑して答える。
「どうにも官僚たちの間では、この部屋に呼ばれるのが良い意味ではないように捉えられているようだが、そんなことは無いぞ?」
「は・・・・・・?」
 思わず呆けてしまったルフィノに、フローリアは肩を竦めた。

「そもそもこの部屋に呼び出すたびに何か処罰をしなければならないのだとすれば、私はシルヴィアに毎回罰を与えているはずなんだがな」
「え・・・・・・あ?!」
 言われてみればその通りである。
 フローリアがシルヴィアに用事があるときは、基本的にこの部屋に呼び出している。
 だが、シルヴィアが何か罰を与えられたという話は聞いたことが無い。
 ようやくそのことに思い至ったルフィノは、内心でホッとした。
 安堵のために表情に出さないようにするのが大変だった。
「まあ、其方の息子が犯したことはしっかりと叱ってもらわないといけないがな」
 残念ながらルフィノの努力はフローリアにはお見通しで、釘を刺されてしまったが。
「はい。それは当然です」
 もとよりそのつもりだったルフィノは、今一度自分を戒めるように表情を引き締めた。
 息子が吐いた暴言は、自分達だけではなく下手をすれば国中に影響を及ぼすところだったのだ。
 言ったのが子供だったので見逃されているが、成人していれば本人のみならず自分も含めた家族が処罰されていてもおかしくはない。
 もっとも、子供だからこそそんなことをしたのだという事もあるのだが。

 結局、話し合いのほとんどは、学園での神やそれに使える神職たちの扱いの教えをどうするかという話に終始した。
 今のままだと、その状態で成長した子供たちが、将来どういう事をするのか分かった物ではない。
 特にラゼクアマミヤにおいては、どの大陸のどの国よりも神々との結びつきが強いのだ。
 何しろ現人神が直接口を出せる場所にいるのだから。
 フローリアやシルヴィアは、考助がそんなことに直接口を出す性格ではないという事は知っているが、それはそれだ。
 考助が口を出す前に、他の神々が手を出してくるような事態になったほうが被害が大きくなる。
 早急に講義の内容を見直す必要があるのだった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 自分が普段働く部署に戻ったルフィノは、色々な視線に晒されることになった。
 そもそも関わりにならないように、視線をそらす者。
 敵、とまではいかないまでも出世コースを争っている者が浮かべている笑み。
 当然、自分を心配して近寄って来た者も何人かいた。
 もっとも、その中には心配した振りをして情報を取ろうとする者もいるだろう。
 だが、それはそれだ。
 官僚という者は、自分に有利になるように情報を得て、立ち位置を決めているのがほとんどなのだから。
 いや、官僚に限らず人として集団の中で生きていれば、大抵そういう行動をするものだ。

「ルフィノ、何で呼ばれたんだ?」
 そんな中、最初に話してかけて来たのは、ルフィノが一番信用している同僚の一人だった。
 既に女王との話し合いで、広めていい話と駄目な話の切り分けは出来ている。
 心置きなく、その同僚に執務室でのことを話した。
 ちなみに、聞き耳を立てている他の同僚たちに、わざと聞こえるように話している。
 その同僚は、ルフィノが呼び出されたのが、叱責とかそう言ったことではないことに安堵の表情になり、続いて学園の問題について表情をしかめた。
「そうか。教育部門はこれから大変になりそうだな」
「ああ。・・・・・・ひょっとしたら、私も当事者の一人として呼ばれるかもしれん」
「何?!」
 流石にその情報には、話をしている同僚以外にも驚いている者達がいた。
「まあ、前段階の打診だから実際どうなるかは分からんが」
 そう言いつつも、まず変わることは無いだろうとルフィノは読んでいる。
 わざわざ執務室に呼び出してまで打診してきたのだ。
 特に断ったりはしていないので、まず間違いなく部署が変わると考えている。
 ルフィノ自身も今回の騒ぎにけじめをつける意味でも、この件に直接関わっていける部署に携われるのであれば、そうしたいと思っていた。

 そうしたルフィノの考えを読んだわけではないだろうが、友人の同僚がため息を吐いた。
「そうか。そうなるとこの部署がきつくなるだろうな」
 ルフィノの優秀さを分かっているその同僚は、そう呟いた。
「はは。そんなわけないだろう。私ひとりが抜けたところで、他に補充があるだろうしな」
 その同僚以外に、複雑な表情をしている他の同僚たちに聞こえるように、ルフィノが笑い飛ばしてそう言った。
「そういう事じゃないんだが・・・・・・まあ、いいか」
「ああ、そうだ。先ほどの話はまだ正式決定ではないんだから、余り広めたりするなよ」
 そう釘を刺したルフィノだったが、まず間違いなく広まっていくだろうと考えている。
 人事に関する情報があっという間に噂として広まるのは、どの世界、どの時代でも変わらないのである。
 事実、ルフィノの話は、その日の内に城に詰めている官僚たちの間に広まるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ルフィノはその日の夜、早速息子を叱りつけることにした。
 ルフィノには息子と娘が一人ずついるのだが、娘にはわざと席をはずしてもらっている。
 最初不満そうな顔をした娘だったが、息子を叱るためだと言ったらさっさと自分の部屋へと行ってしまった。
 嫌な空気になる所には居たくはないという意思表示なのだろう。
 きちんと妻には傍にいてもらっている。
 まだ妻には息子がやったことの詳細を話していない。
 夕食の席でいきなりルフィノが言い出したことに、驚いていたくらいだ。
 一方で、はっきりと叱ると言われた息子は、必死に自分が何をやらかしたのか思い出そうとする表情になっていた。

「さて。自分が何をやったのか思い出そうとしているようだが、何のことか思い出したか?」
 そう切り出したルフィノに、息子は必死に首を振った。
 それを見たルフィノは、事の深刻さに内心でため息を吐いた。
 息子には、自分が何をしたのか本当に自覚さえないのだろう。
 それを見て取ったルフィノは、さっさと切り出すことにした。
「昨日の学園の放課後の事だ」
 その一言で、息子はパッと表情を変えた。
「あ、あれはっ! いつも一人な彼女を誘おうとっ!!」
 必死に言い訳をしようとする息子をルフィノは片手を上げて制した。
「待て。集団で脅しを掛けるようなことをしたのにか? まあ、動機自体を責めるつもりはない。問題は手段の方だ」
 ルフィノがそう言うと、息子は怪訝な表情になった。
 そもそも実の親であるシルヴィアも、ココロを遊びに誘ってくれたこと自体はありがたく思っていた。
 もっとも手段も何もかも悉く裏目に出ていただけだという認識も持ってくれていた。
 そのことに感謝しつつ、ルフィノは傍で話を聞いている妻に、フローリア達から聞いた昨日の事を話した。

 話の全てを聞いたルフィノの妻は、話が進むにつれて顔を青くして、最後まで聞き終わった後に、
「貴方は、なんてことをするのですか!」
 と、息子に一喝した。
 ちなみに、ルフィノの妻は、ルフィノが出世したことにより生活が向上したきっかけになったコウスケ神を三大神以上に信仰していたりする。
 ココロがそのコウスケ神の実の娘であることもルフィノから聞いて知っているため、えらく激怒することとなった。
 その後は、ルフィノの出番がほとんどないと言って良い程、妻の独壇場になった。
 その様子を傍て見ていたルフィノは、こういう時は母親のいう事の方が聞く耳を持つのかな、と考えるのであった。
しっかりと叱られたルフィノの息子です。
結局最後まで名前は出しませんでしたw

一般的に、男の子が母親に叱られて言う事を聞くのか微妙な所がありますが、ルフィノ家ではそう言う結論になっています。(合掌)
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