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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その9)

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(2)子供の騒ぎ

 聖アマミヤ学園のある教室にて。
 とある男児生徒が、ココロを囃し立てていた。
「神の子分のココロちゃーん。今日も帰ってから一人寂しくメイソウかー?」
 正直聞いていて何が面白いのかは分からないのだが、傍にいた数人の子供たちがその言葉を聞いて笑っていた。
 対するココロは、特に気にした風もなく普通に頷いていた。
「はい。毎日の習慣ですから」
「つまんねー、やつ。たまには俺たちと遊ぼうぜ! 神様の相手なんてたま(・・)にでいいじゃん!」
 勢い込んで言うその子供に、ココロは困ったような表情になった。
「そう言うわけにもいかないのです」
「いいじゃん、いいじゃん! まともに答えも返さない神様なんて放っといて遊ぼうぜ!」
 いつになくしつこい男子生徒に、ココロはただ黙って首を振った。
「済みませんが・・・・・・」
「ちぇっ!」
 そう言って舌打ちをした男子学生は、それでもあきらめきれずに遂に強硬手段に出た。
「もういいや! お前ら、連れて行こうぜ!」
「きゃっ!?」
 何と他の子供たちが、無理やりにココロを連れて行こうとしたのだ。
 男の子も女の子も関係なく、強引にココロの手を引っ張ったり背中を押したりしている。
「や、止めてください!」
「ダメダメ。今日は、皆で遊ぶの!」
「折角誘っているんだから、たまにはいーじゃん!」
 ココロにとっては余計なお世話なのだが、周りにいる子供たちにとってはどちらかと言えば親切心で誘っているのだ。
 修行と称して真っ先に家に帰るココロは、同級生たちにとっては遊びも知らない寂しい奴と思われている存在なのだ。
 もっとも、ココロが修行漬けである事は間違いないのだが、友達と遊びもしないというのは語弊がある。
 学園の休み時間には遊んだりしているし、放課後も予定が合えば幾人かの友達と遊んだりしている。
 ただその時間が、圧倒的に他の子供たちに比べて少ないだけである。

「貴方達! 何をしているのですか?!」
 子供たちの騒ぎは、一人の女性の声で収まった。
 子供たちの視線がその声の主の方に集まる。
「ミア様・・・・・・?!」
 ココロを取り囲んでいた子供の一人がそう呟くと、一斉に子供たちが一定の距離を置いた。
 トワに並ぶほどの有名人であるミアは、学園の女生徒たちにとっては憧れの的だったりするのだ。
 ついでに、このクラスの同級生たちは、ココロとミアが異母姉妹であることを知っている。

 生徒たちの視線を受けながら、真っ直ぐにココロの元へと来たミアは、ココロを上から下まで怪我などをしていないことをことを確認した。
 ココロが騒ぎの中心で、無理やりに連れて行かれようとしていた所は見ていたのだ。
 あえてしばらく放置していたのは、ココロが自分自身で抜け出せるかと考えていたのだが、いよいよ駄目だという所になって出て来たのである。
「今日ココロは、私と同じ用事があるのです。連れて行きますが、よろしいですよね?」
 口調は質問になっていたが、実質は命令に近かった。
 ミアもわざとそういう物言いをしているのだ。
 そこまで言われて抵抗できる生徒は、ここには居なかった。
 唯一、最初にココロを囃し立てていた男子生徒が、何かを言いたそうな表情になっている。
 それに気付いていながらも、ミアはあえてそれを無視して言葉を続けた。
「ココロも私と同じように色々と忙しくて一緒に遊ぶ時間がないと思いますが、仲良くして上げてくださいね。・・・・・・ココロ、行きましょう」
 最後に視線をココロに向けたミアは、一緒に付いてくるように促した。
「は、はい」
 慌てて鞄を手に取ったココロは、ミアの後について行った。
 同級生たちは、それをただただ見送るのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「全く・・・・・・何をしているのですか」
 十分離れたところで、ミアがココロを見てそう言った。
「済みません。突然だったものですから」
「確かにいきなりだったけれど・・・・・・あれが男子だけだったら、もしかしたら本当に危ないことになっていたわよ?」
 本来ココロは、あのような状況になることはほとんどない。
 それは、ココロが巫女としての修業を積んでいることもあり、勘が鋭いという事もある。
 だが、ミアの時のような異性からの悪意に近いアプローチならともかく、今回の件はむしろ善意に近い物だったため気付けなかったのだ。
 ココロにとっては、余計なお世話でしかないのだが。
「・・・・・・はい」
 今回のことに関しては、ココロに取ってもショックだったようで、いささか悄然とした様子で項垂れている。

「とにかく先ほどのことについては、今日の会食で話しますからね」
 先程同級生たちから引き離すために使った理由は、間違いでもないのだ。
 実際にこれから、フローリアとシルヴィアが同じ席でで夕食を共にすることになっている。
「そ、それは・・・・・・」
 ココロにとっては、子供同士の騒ぎだったのだが、ミアは首を左右に振った。
「駄目ですよ。正直、騒ぎ自体はいいのですが、あの時の煽り文句に見逃せない物がありましたから」
「え?!」
 全く思い当たりのないココロが、驚いた表情になった。
 それを見たミアが、一つ大きなため息を吐いた。
「やっぱり気づいていなかったのですね。あの時、巫女としての修業を馬鹿にする文言があったでしょう?」
「あっ!?」
 言われて初めて気付いたとばかりに、ココロは両手で口を覆った。
「あれを放置していると、子供だから、では許されなくなってしまうわ。それは、貴方の方がよくわかっているでしょう?」
「はい・・・・・・」
 先程のは、子供の他愛のない言葉だったのだが、それでも神に対しては許されないことというのも存在している。
 本来であれば、親がそうしたことを教えて行くのだが、学園では神学に関する授業もあるのだ。
 だが、残念ながらココロの学年ではそこまで踏み込んで学んでいるわけではない。
 ただし、学んでいないからと言って許されることでもないのである。
「そう言うわけだから、先ほどのことに関してはちゃんと報告します。・・・・・・貴方は何も悪くないんだからそう落ち込まないで」
 項垂れたまま付いてくるココロに、ミアは苦笑してそう言うのであった。
 結局、その後のミアは、意気消沈しているココロを慰め続けながら帰宅するのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「学園でそのようなことがあるとはな」
 ミアから話を聞いたフローリアが、関心を持ったように視線をトワへと向けた。
「・・・・・・知っていたか?」
 視線を向けられたトワは、首を左右に振った。
「いえ。先程ミアに話を聞いて初めて知りました。ついでに、今回のようなことはこれが初めてだそうです」
「そうか。・・・・・・だが、無視するわけにはいかないな」
「はい」
「親は分かっているんだな?」
「当然です」

 当事者であるココロを置き去りにして、フローリアとトワだけで話が進んで行く。
 それを見ていたココロは、若干表情が青くなっている。
「あの・・・・・・出来れば、大袈裟なことには・・・・・・」
 そう言いだしたココロを、横に座っていたシルヴィアが首を振って止めた。
「ココロ。それは駄目よ。事は、神に関わる話なのですよ。下手に放置すると、国自体に責任が及んでしまうわ。貴方はそれを知っているでしょう?」
 既にココロは、母親であるシルヴィアから口伝として神々の言い伝えをいくつも教わっている。
 その中には、当然神罰に関する話も含まれているのだ。
「・・・・・・はい」
 もはや子供同士の騒ぎでは許されない所に来ていると理解したココロが、悄然と項垂れるのであった。
い、一話で終わらなかった><
次回でこの話の結末を書きます。
親の呼び出しもあるかな?
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