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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 塔の外で色々やろう

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(14) 神殿長

 考助たちは、神殿内にある客人用の一室に通された。
 テーブルを挟んで、考助たちが三人掛けのソファーに座り、その向かいにローレルが腰かけていた。
 間にあるテーブルには、巫女が入れたお茶が出されていた。
 考助は、一言断ってそのお茶を口にした。
「ああ、これは美味しいお茶ですね」
「そう? ありがとう。これは、私もお気に入りのお茶でね」
 ローレルも嬉しそうにお茶を飲んだ。
「それで、わざわざ人目から離してまで、聞きたいことはなんでしょうか?」
 先に切り出したのは、考助である。
「あら。やっぱり気が付いていたの?」
「当然です・・・と言いたいところですが、気付いていたのは僕ではなくコウヒです」
 そのコウヒは、ローレルに注目されるのも構わず、真剣にお茶を口に含んでいる。
 考助のために、後々このお茶を手に入れる気なのだ。
「ふふ。素晴らしい仲間をお持ちなのですね」
「自慢の仲間です」
 ローレルの笑いに、考助が真面目に頷いた。
「・・・どういうことですの?」
 二人の会話に、シルヴィアが疑問を挟んだ。
「シルヴィア、ここの神殿長であるローレルさんが、ただの会話をするためだけに、僕らをここに呼んだと思ってるの?」
「・・・え!?」
 シルヴィアは、考助のその言葉に、思わずローレルを見た。
「あなたは、相変わらず変わっていないようで安心したわ。シルヴィア」
 そんなシルヴィアを見ながら、ローレルは微笑んでいた。
「その代わり、コウスケ君は話が早くて助かるわ」
 そう言って笑顔を向けたローレルに、考助も笑顔を見せた。
「お断りします」
「・・・・・・それは、話が早すぎない?」
 ローレルは呆れたように溜息を吐いた。
「聞かなくても大体分かりますから。この神殿に所属しないかというお誘いか、シルヴィアの法具を渡してもらえないかのどちらか、あるいはその両方でしょう?」
「・・・本当に、話が早くて助かるわね」
「現状、それくらいしか思い当たる事が、ありませんから」
「あら、他にあるかも知れませんよ?」
「あるんですか?」
 考助の問いに、ローレルは沈黙した。
 その沈黙が、答えになっている。
 考助があそこで見せた座禅(?)もどきと、シルヴィアの法具の作成は、聖職者にとっては喉から手が出るほど欲しい、あるいは教えてほしい行為である。
 それは、先程周囲で様子を見ていた神官や、巫女たちの様子をみればわかる。
 ローレルは、一つため息をついて、
「理由を聞いてもいいかしら?」
「他にやることがありすぎて、神殿に関わっている暇がありません」
「本当に、はっきりというのね」
「回りくどく言った方が、後々面倒ですから」
 はっきりと、きっぱりと断ったほうが後腐れが無いと、考助は考えている。
「どうしても・・・?」
「駄目です」
「・・・そう。それでは、ペンダントの方は? 金銭には糸目を付けないつもりよ?」
 勧誘が無理だと悟ったローレルは、矛先を法具の方へ変えてきた。
「ああ、それは簡単な話です。あれはシルヴィアにしか、使えません。それともシルヴィアごと持っていきますか?」
「えっ!? そうなんですの!?」
 当のシルヴィアが驚いていた。
 ローレルの方は、訝しげな表情をしている。
「どういうことかしら?」
「どうもこうもありません。あれは、シルヴィアの持つ神力にしか反応しないように、出来ています。いわば、シルヴィアの神力自体が動作の鍵になっているんです」
「神力って・・・あの法具は、神具だと!?」
「そういうことになりますね」
 考助の口からあっさりと肯定されて、ローレルは言葉を失った。

 そもそもこの世界において、魔力や聖力は理解されていても、神力とされるものは確認されていない。
 魔法や聖法はあっても、人が扱える神法はないとされている。
 神のごとく強力な魔法や神の様な癒しと例えられる法術はあっても、神そのものの力、神力は普通使えないというが、一般的な考え方なのである。
 時折、神具と呼ばれる物は見つかっていたりするが、そのほとんどが現在の人には、使えない代物なのだ。

「あなたは・・・自分が何を言っているのか、きちんとわかっているのかしらね?」
 ローレルのその言い方に、考助は苦笑するしかない。
 そもそもこの世界に来てから、そのほとんどの時間は塔関係に費やしている。
 まともに他の者と交流などしていない。
 この世界の常識とは、ずれている自覚は多分にある。
「まあ、自分が他とずれていることは承知していますよ」
「そう。・・・やっぱり、きちんとは分かっていないのね」
「どういうことですか?」
 ローレルの言い方に、考助が眉をひそめた。
「あなたがあそこでやったこと、そして、今ここで話したことは、私たちのような者にとっては、とても見過ごせないものということよ」
 その遠回しな言い方に、考助はローレルが何を言いたいのかわかった。
 正確には、伝えられた。コウヒから。念話で。
「・・・ああ、そういうことですか。ですが、それは悪手ですよ、ローレルさん」
「・・・・・・どういうことかしら?」
「まず一つ目。先ほど言った通り、あの法具はシルヴィアにしか使えないことは伝えたとおりです。
 まあ、そうはいっても無理に使おうとする者は出てくるでしょうが・・・おすすめはしません。神罰をくらいたいというなら、実験してみるのもいいかもしれませんが」
「・・・神罰を?」
「なぜ不思議に思うんです? あれは神具だと言ったはずです。作るのには、エリサミール神の力も借りてるんですよ? 自身が直接手を下している神具に、ちょっかいを掛けられて、放っておく神とは思えませんがね」
「・・・・・・」
「ましてや、それを実行しようとしているのは、自分の名を冠する神殿の関係者ですか。・・・あの神の性格から考えて、神罰を起こさないほうがおかしいと、思いませんか?」
「神が直接手を下すことなど・・・ましてやエリサミール神が・・・」
 これまでの歴史で、エリサミール神が直接この世に何かを及ぼしたことなど、数えるほどしかないのだ。それがエリサミール神の信者たちの常識だ。
「まあ、そう思うならそれで構いませんがね。・・・シルヴィア、どうする? シルヴィアが渡してもいいというなら、渡しちゃってもいいよ?」
「そんなことしませんわ!」
 直接、エリスと会話をしたことがあるシルヴィアだ。
 その神具を他者に渡すということは、信者であるシルヴィアにとっては、神に対する裏切り行為も同然だ。
「そういうわけです。・・・それから、二つ目です。外にいる人たちを使って、無理やり僕たちを捕らえるつもりですか?」
「・・・なっ!? どういうことですの!?」
 疑問の声を上げたのは、シルヴィアだった。
 それを見たローレルは、悠然とした表情を浮かべた。
「誤解ですよ。彼らは、ただ単に護衛のためにいるだけです」
「なるほど。護衛ですか」
「そういうことです」
 別の目的があるのは明らかだったが、それでも目の前のローレルは、笑顔を浮かべているだけである。
 考助もそれ以上追及することはない。現状では、知らぬ存ぜぬを通されれば、それまでだからだ。
 だからこそ、別の方向から攻めることにする。
「ところで、彼らは神の使徒に対して、手を下せるんですかね?」
「・・・なんのことでしょう?」
「いやいや。ちょっとした興味本位の質問ですよ。・・・コウヒ」
 会話に全く加わっていなかったコウヒに、突然考助が呼びかけた。
 名前を呼んだだけだというのに、コウヒは考助が何を言いたいのかわかったのか、若干驚いた表情を浮かべていた。
「・・・・・・よろしいのですか?」
「うん。まあ、最低限でいいから、お願いしてもいいかな?」
「当然です」
 突然の二人のやり取りは、ローレルとシルヴィアにはどういう意味か分からない。
 だが、コウヒが考助に対して頷いた瞬間、コウヒが光に包まれた。
 その光が消えた後には、先ほどまでとは違う姿でコウヒが現れていた。
 その背中に一対の白い翼を現して。

「「・・・・・・なっ!?」」

 驚く二人を尻目に、考助が含み笑いをしながらローレルに対して言った。
「だから、悪手だっていいましたよ? ローレルさん」
 言葉もないローレルに、さらに考助が続けた。
「もう一度聞きます。彼らは、いえ、あなた方は、神の使徒に対して攻撃を加えられるんでしょうか?」
ついにコウヒの翼が人前に晒されました。
ミツキは・・・・・・その内でます。きっと。

神の使徒については、次話詳しく解説されます。

2014/5/11 誤字脱字修正
2014/6/9 誤字脱字訂正
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