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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その8)

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(3)家族の語らい

 ミアの護衛としてミカゲが紹介されたその日の夕食。
 ふとトワが思い出したように、フローリアへと問いかけた。
「そう言えば、母上。護衛が必要になると予想していたのは、父上の言葉だけが理由ですか?」
「いや、まさか。登下校時はともかくとして、王族に護衛の一人も付けないなどありえないだろう? 元々護衛は用意するつもりだったさ」
「そうなの?!」
 母親と兄の会話に、ミアが驚いたような表情になった。
「それはそうだろう。それに、ミアが学園で話を聞いたような状況になることも予想は出来たしな」
「予想・・・・・・できたの?」
 自身は全く予想できなかったミアが、悔しそうな顔になる。
「そんな顔をするな。私も昔に似たような経験をしたから予想できただけだ」
「昔?」
 首を傾げるミアに、フローリアが説明を加えた。

 フローリアは個人教師で学んだ口なので、ミアのように学園のような教育機関には行っていない。
 だが、王族として貴族たちにお披露目してからは、社交も経験していたのだ。
 その際に、ミアと同じような体験をしていたので、予想が出来たのだ。
 まさか、ありもしない婚約話などを持ち出すとは思ってはいなかったが。
 ミアから話を聞いたときにはその時のことを思い出して、もう少しまともな誘い方が出来ないのか、と思ったりもしていた。

「私が聞いた限りでは、王女として生まれた者達は似たり寄ったりの経験をしているらしいからな。予想できない方がおかしい」
「そうなんですか。それで良くミアの言う事を聞きましたね」
 トワの言葉に、フローリアは肩をすくめた。
「何事も経験だからな」
 さらりとして言ったフローリアだったが、クスクスと笑う声に顔をしかめた。
 笑ったのは、アレクだった。
 今日はアレクとソニアも食事に参加してる。
 それまで多少真面目な話をしていたので、二人はリクとの会話を楽しんでいたのである。

「父上。そこで笑うのは失礼な気がするが?」
「いや、すまん。少し昔のことを思い出してな」
「・・・・・・昔?」
「なんだ、覚えていないのか?」
 首を傾げているフローリアに、アレクは楽しそうな表情になった。
「・・・・・・何だろう。何か嫌な予感がするな」
 その表情に嫌な予感を覚えたフローリアだったが、制止は間に合わなかった。
 というよりも、予想外な方向から口撃が飛んできたのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「あら。フローリアは、忘れてしまったの? 私もはっきりと覚えているわよ」
「母上、何のことでしょう?」
 ソニアがリクに向けていた視線をフローリアへと向けて、会話に参戦して来た。
「貴方が社交界にデビューしてからまもなくの頃だったかしらね。送り迎えの護衛など必要ない、とアレクに食って掛かっていたわよねえ」
「ああ。あの時は凄かったな。どうやって父を説得しようか、思い悩んだものだ。結局、無駄になってしまったが」
 畳み掛けるように二人が昔のことを話しだした。
 それを聞いたフローリアも、ようやくその時のことを思い出した。
 子供たちの前で、自分の失敗談を両親から語られる羽目になったフローリアは、渋面になった。
「あ、あれは、その・・・・・・まあ、私も若かったということだ」

 実はフローリアも社交デビューしたての頃は、似たり寄ったりの経験をしているのだ。
 ミアとは違って、社交場への行き帰りに襲撃(?)を受けたりはしていないが、城内であったり公の場所ですれ違ったりする際には、熱烈なモーションを掛けられたりしていた。
 フローリアの王女と言う立場は、それほどまでに魅力的だったという事だ。
 勿論フローリア自身の魅力もあるのだが。
 だが、そんなことになるとは露知らず、ミアと同じようにフローリアも護衛を付けるのを渋っていたことがある。
 すぐにフローリア自身が根負けする結果になってしまったのだが。
 フローリアの性格はともかくとして、公の立場で行動しているときには、強引に振り切ることが出来ない。
 まさしく、今のミアと同じような状況だったのだ。
 もっとも、フローリアの本来の性格が知れ渡った後は、きっぱりはっきり断るようになったのだが、それは彼女の親としての名誉の為にアレクもソニアも語らなかった。

 母親のそんな話をミアが目を輝かせながら聞いていた。
「まあ。母上にもそんなときがあったんですね」
「勿論ですよ。もしかしたら王女の立場の者達は全員が経験しているかもしれませんね?」
 楽しそうに言うソニアだったが、それを聞いていたアレクは心の中でそんなことは無いだろうと突っ込んでいた。
 素直に護衛を付ける者がほとんどで、ソニアの家系が少数派だと思われる。
 そんなことを思ったアレクだったが、決してそれを口にすることはなかった。
 口にした瞬間、ソニアから素晴らしい口撃が来ることは目に見えている。
 長年連れ添った経験で培った自衛手段だった。
 そんなアレクをトワが何かを言いたげに見ていた。
 そのトワに黙って左右に首を振ったが、賢明なトワはそれだけでアレクが何を言いたいのか悟ったようである。
 そのまま何も言わずに、スープを口に運び始めるトワなのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「それにしても、ありもしない婚約話をでっち上げてくるなんて、この国の社交レベルは大丈夫なのかしら?」
 ソニアの率直な感想に、フローリアは苦笑を返した。
 はっきり言えば、大丈夫ではない。
 他の国で同じことをやれば、下手をすれば爵位返上の憂き目にあう可能性もある。
 ラゼクアマミヤでは王族が与えた爵位を名乗っているわけではないので、フローリアが爵位を直接剥奪できるわけではない。
 出来ることがあるとすれば、あくまでも王族の言い分としてその町の領主に<お願い>をするだけだ。
「まあ、大丈夫じゃないな。学園があって良かったと心から思うな」
 学園では社交の基礎も叩き込まれる。
 各学年で及第点を取れなかった者は、王族が主催する社交場には出ることが出来ないという、貴族達にとっては厳しい罰則もあるのだ。
 それに、そもそも外交の相手として会う場合は、ラゼクアマミヤの貴族として会うわけではない。
 あくまでもラゼクアマミヤの官僚として対応することになるのだ。
 ラゼクアマミヤの政治体制が特殊な物であることは、世界中に知れ渡っているので、そのことで文句を言う国はないのだ。
 あったとしても、では交渉は止めましょうか、の一言で済ませている。
 それで済むのは、ラゼクアマミヤの国家としての力が強い・・・・・・わけではなく塔から出る産物や加工品がそれほど魅力的だからである。

「折角の機会なんだ。トワもミアも学べるうちはしっかりと学んだほうがいい」
「そうね。本当の社交で失敗したら、全て自分に返ってきてしまいますからね」
 祖母と母親の言う事に、トワもミアも神妙な顔で頷いた。
 トワもミアも自分の言動一つで、周囲が変化を起こすことを身をもって経験しているのだ。
 特に一年間学園に通ったトワは、そのことを実感している。
 いきなり大人の世界に放り出されるのではなく、子供たちの世界だけであればある程度の失敗は取り戻すことができる。
 ミアはまだこれからが本番といった感じだが、それでも学園で得られた物は多々ある。
 決して城の中の侍女たちに囲まれた生活では得ることが出来ない物がたくさんあることは、二人共に実感しているのであった。
フローリア一家の会話で一話使ってしまいました><
本来の予定であれば、半分で済ませて残り半分は学園のミカゲの話で使おうと思たのですが・・・・・・。
と言うわけで、次話は学園に戻ります。
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