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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 東大陸

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(3)ラゼクアマミヤ王国の事情

 ラゼクアマミヤ王国のフローリア女王は、宰相のアレクからの報告を受けてため息を吐いていた。
 アレクはつい先ほど、自身の兄であるマクシム王と通信を行っていた。
 その時の内容をフローリアに伝えたのである。
 通信には身内同士で話す世間話もあったのだが、そうした話は省いている。
 世間話に紛れ込ませて伝えて来た話に重要な内容があったのだ。
 それは、アイリカ王国がついにクラウンを受け入れる体制が整ったというものだった。

「そうか。遂に決断したか」
 アレクからの報告を聞いてフローリアは、頷いた。
 ため息を吐いたのは、その次の報告を聞いた後だ。
「はい。アイリカ王国の動きはクラウンから聞いていた通りですが、問題はフロレス王国側です」
「何かあったのか?」
「アイリカ王国の決定を聞いても相変わらずのようですね」
「そうか・・・・・・」
 フローリアがそれを聞いたとき、フロレス王国は自分がいた時から何も変わっていないのだなと感想を抱いたのだ。

 現在のフローリアの立場は横に置いとくとして、隣国にクラウンの支部が設置されるとなればその結果がどうなるかは、すぐに予想が出来るだろう。
 今のところアイリカ王国が支部の設置を許可するのは、冒険者部門だけのようだがいずれはそれだけでは済まないのは目に見えている。
 それは、スミット王国を見ていればよくわかることだ。
 勿論スミット王国の場合、相性が良かっただけだという意見もある。
 だからこそ南大陸ではスミット王国以外の国には、未だ支部が出せていない。
 支部を設置するとクラウンに飲み込まれてしまうという意見もあるくらいだ。
 各国はクラウン支部に対して過剰な反応を示しているというのが、今のフローリアとアレクの分析だ。
 セントラル大陸の結果を見ていれば、それも頷ける。
 だが、セントラル大陸の歴史的な事情が特殊だったという事を各国は忘れている。
 経済的にも政治的にも全く事情が違うセントラル大陸と自分達の国を同じように当てはめて考えているので、二の足を踏んでしまっているのだ。

「勘違いしてしまうのも無理はないと思うがな」
 思わず呟いてしまったフローリアの言葉に、目の前にいたアレクも頷いた。
「全くです。少し冷静に考えれば、この大陸とは全く事情が違うというのはよくわかるはずなのですが」
「ああ。・・・・・・いや、むしろ私達の方が近すぎて見えてないという事もあるか?」
「まあ・・・・・・それは否定しません」
 冷静なフローリアの言葉に、アレクは苦笑しつつ頷いた。
 二人はラゼクアマミヤの女王と宰相という立場だ。
 第三者的な視点で考えろと言っても、どこかでその立場で見える視点と言うのが混ざってしまうのは仕方のないことだろう。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「それで、どうされるのですか?」
 二人の会話を聞いていた側近の一人が、そう聞いてきた。
「どうとは?」
 そう言って首を傾げたフローリアに、その側近はさらに言葉を続ける。
「フロレス王国よりも先にアイリカ王国に支部を作るのは、政治的に駄目だとクラウンに伝えるのでしょうか?」
 側近の表情を見る限り、本気でそんなことをするつもりが無い事はわかる。
 それでもあえて聞いてきたのは、それがさまざまな意見をいう事が側近としての自分の役割だと理解しているからだ。
「あり得ないな。クラウンはあくまでも民間の一組織だ。わざわざ国として口を挟むことなどしないよ」
 フローリアは白々しくもそう言い放った。
 実際には、そんなことはあり得ないのだが、建前でそうなっている以上はそう言うしかない。
 それに、他国に比べてもラゼクアマミヤとクラウンの関係は親密であるとは言えないのだ。
 他の国では、それこそ王家が御用商会をいくつも抱えているのは、ごく当たり前のことなのだ。
 場合によっては、国同士の会談が商売のやり取りになるなんてことはごく普通に行われている。
 クラウンがラゼクアマミヤの御用商会であるかどうかは微妙な所だが、そもそも王家が直接統治している塔ではクラウン位しか大きな商会が無いのだ。
 他の商会の窓口はあるが、どれも王家の御用商会になれるかと言うと微妙な所である。
 それから考えれば、クラウンが王家の御用商会と考えられているのは、当たり前のことと言える。

 他にも王家とクラウンは、考助を間に挟んだ関係があるがそれは表に出てくるような関係ではない。
 具体的に何かの政治的なやりとりが発生しているような状態ではないのである。
 ・・・・・・少なくとも表向きでは。
「実際、其方もそう伝えただろう?」
 フローリアは視線をアレクに向けた。
「無論だ。こちらに変な期待をされても困る」
「当然だな。それよりも、こちらが心配しないといけないのは、東の街の離間工作だな」
「ああ。それはあり得るな」
 アイリカ王国がクラウン支部を受けれることを反対する各国の勢力が、東の街に色々と手を入れてくる可能性がある。
 ラゼクアマミヤとしては、そちらの方が問題なのだ。

 ただし、北の街がセントラル大陸内で孤立しているように、今更東の街がラゼクアマミヤから離れたとしても致命的な問題になるわけではない。
 そもそも政治的にはそれぞれの町や村は、独立して統治されているのだ。
 ラゼクアマミヤとして受け取っている税はあるが、統治権のほとんどが町や村にあるために、ラゼクアマミヤとして失うのはその税金分くらいしかないのである。
 勿論、いきなり東の街がラゼクアマミヤから離れれば、混乱は起こるだろう。
 具体的な被害があるとすれば、それくらいなのだ。
 他国から見れば、それぞれの地域に対する権限が弱い王家なのだが、逆にその弱さがラゼクアマミヤの強みとなっているのだ。
 極論を言ってしまえば、ラゼクアマミヤは第五層の街が他国に取られない限りは、強固な基盤を持っていると言える。

「それに、さほど心配しなくてもそれほど激しいことにはならないだろうさ」
「アイリカ王国があるからな」
 アイリカ王国のクラウン支部受け入れをさせまいと各国が動くのであれば、当然アイリカ王国はそれをさせまいと動くだろう。
 今回の話は、アイリカ王国側が求めてきた話なのだ。
 当然それを阻止しようとする動きには、対抗せざるを得ない。
 ラゼクアマミヤとしては、その動きに乗っかるだけでも十分なのだ。
「ついでに言うと、東の街の領主がそんな話に乗っかるとは思えないしな」
 フローリアは、領主の顔を思い浮かべて小さく笑った。

 セントラル大陸にあるどの町でもそうなのだが、基本的に大陸各国に翻弄されてきた歴史なのだ。
 領主である以上は、利に聡くなくてはいけないのだが、そうそう簡単にその口車に乗るような性格ではない。
 百パーセント信じているわけではないが、セントラル大陸の歴史は大陸内で作ると言ったあの表情は、信じてもいいと思っているのだ。
 各大陸の思惑に翻弄されてきたセントラル大陸の歴史は、思っている以上に根深い物がある。
 フローリアがフロレス王国にいた時は軽く考えていたのだが、実際にこの塔に来て何の因果か女王にまでなった今となっては、それが実感を伴って理解できる。
 考助の代官としてフローリアよりも早くから塔の街を治めていたアレクもそれは同じだろう。

 結局、裏での動きは色々あったが、それは表の歴史に出てくることは無くアイリカ王国へのクラウン支部の設置は普通に行われた。
 アイリカ王国以外の東大陸の各国は、後の様子を見届けるという結論になったのであった。
東大陸三部作(?)でした。
一章にするには話数が少ないですが、これで終わりです。
前の話とは年代が戻っていますし、説明回的な要素が強かったので別の章としました。
明日からはまた新しい章となります。
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