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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その6)

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(6)神の巫女

 ラゼクアマミヤの女王であるフローリアが住まう居城。
 ついにセントラル大陸の統一を果たしたラゼクアマミヤの行政の中枢機能が集まっている城。
 十年たってもその威容は、衰えることなく輝いている。
 まさしくその姿は、ラゼクアマミヤの象徴の一つと言えるだろう。
 そんな城の一角。
 人通りが少なく人目が付きにくい場所に、一組の男女がいた。
 実はその場所、先の通り人目に付きにくいために、ある目的に利用させることが非常に多い。
 いつの間にかその場所に連れて行かれることは、そういう事が目的だと周囲に周知させる意味さえ出ていた。
 だからこそ、男一人女一人で人目に付きにくい場所に連れ込まれたとしても、誰も止めることをしない。
 むしろ、これから行われることを期待して、励ましの視線だったり、逆に嫉妬の視線を向けたりする。
 だからと言ってそれを邪魔する者は、周囲の者たちから白い目で見られることになる。

 そんな場所に呼び出されたリリカは、内心でため息を吐いていた。
 場所が場所だけに、これから何をされるのかよくわかっている。
 そのため、結果も見えるだけに気が重くなる。
 そんなリリカの内心を余所に、目の前の男がついに意を決したように口を開いた。

「リリカさん、お付き合いしてください!」
「ごめんなさい」
 すぐさまリリカに頭を下げられ、瞬殺された男性は、絶望に顔を暗くした。

 そう。
 今二人がいる場所は、男女の告白に使われているのである。
 ちなみに、ラゼクアマミヤでは男から告白すべしという習慣はない。
 男であっても女であってもこの場所に連れ込んで告白するのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 絶望に打ちひしがれる男を置き去りにして、リリカはすぐにその場を去った。
 ここで余計な言葉を掛けるとさらに面倒なことになる、と以前の経験で学習した。
 出来ればしたくは無かった経験だが。

「あら。早かったですわね」
 普段リリカがいる執務室に戻ると、シルヴィアが笑って出迎えた。
 いつものような慈悲深い笑みではなく、どちらかといえば、ニヤニヤという表現が正しい。
 初めてシルヴィアのこの表情を見た時は、この人もこんな表情をするのかと思ったものだが、今では見慣れてしまった。
 見慣れてしまった理由が自分にあることは、出来れば意識を向けたくない事実である。

 今は城全体がお昼休みの最中だ。
 リリカが昼を取って少し落ち着いた所に、先ほどの男性に呼び出されたのだ。
「いつもと変わらない速さで戻って来たという事は・・・・・・?」
 答えを分かっているのに、わざわざ聞いてくるという事は、リリカから直接答えを聞きたいという事だ。
 余計なことをさせないためにも、きっぱりはっきり答えた。
「お断りしました」
 リリカの返答に、シルヴィアはわざとらしくため息を吐いた。

「勿体ないわ。あの方、討伐軍の副団長でしょう?」
「そうみたいですね」
 そうみたいも何も、リリカは普段の職務から相手のことをある程度知っていた。
 今のリリカは、討伐軍の専任巫女として従軍したりしているのだ。
 任務が重なれば、当然顔を合わせることもある。

 そっけないリリカの返答に、シルヴィアがさらにため息を吐いた。
「・・・・・・別に駄目とは言いませんけれど、コウスケ様を狙うには、ハードルが高すぎますわよ?」
 そう言って来たシルヴィアに、リリカはびっくりしたような表情になった。
「ねっ!? 狙ってませんよ?! どうしてそうなるんです?!!!」
「そう? それならいいのですわ」
 リリカをじっと見つめて、その言葉に嘘が無いことを見抜いたシルヴィアが、そう答えを返した。

「どうしてそういう事になるんですか?」
 シルヴィアとも長い付き合いになるが、そんなことを言って来たことは一度もない。
 先程の焦りは、本当に突然のことで驚いただけなのだ。
「だってリリカ貴方、これでお断りするの何人目になるの? 下手したら両手両足でも足りないわよね」
「そ、そんなことはない・・・・・・はず、です」
 リリカの答えに、シルヴィアがジト目になった。
「覚えてないのですね?」
「う・・・・・・」
 シルヴィアの追及に、リリカは目を泳がせた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 シルヴィアの側近巫女として働き始めたリリカは、異性にモテていた。
 最初はシルヴィアの容姿に魅かれて、傍にいるリリカをきっかけにお知り合いになろうとする輩が多かった。
 しかしながら、シルヴィアが子供を産むとそう言った輩はなりを潜めた。
 代わりに、本気でリリカに告白してくる者が増えたのである。
 そうした告白を、リリカはすべて断っている。
 この世界の常識で言えば、既にリリカは適齢期を超えていたりする。
 だからこそ告白されたりするのだろう、と一部の同性からやっかみ半分に言われていることはリリカも知っている。
 そうした声をあえて無視して、放置しているのだ。
 リリカにしてみれば、その気もないのに受ける方が失礼だという考えなのである。

「貴方、このまま純潔を貫くつもり?」
 このシルヴィアの問いは、別に肉体的にどうこうと言う意味ではない。
 彼女たちは巫女だ。
 巫女が特定の男性と結婚したりせずに、神だけにお仕えするときに、巫女たちはこういう表現をするのだ。
 この場合は、考助を神として崇めたまま一生をお仕えするのか、と言う意味である。

「・・・・・・お仕えした当初はそんな気はありませんでしたが、今はそれでもいいかと考えています」
「そう」
 リリカが言うかどうかを迷ってから正直にそう言うと、シルヴィアは納得したように頷いた。
 普通であれば珍しいと言える考え方なのだが、巫女である彼女たちには特に珍しいという話でもない。
 現に、そういった巫女たちは山ほどいる。
 別にこの世界での聖職者にある者は結婚を否定したりしていないのだが、生涯を結婚せずに未婚を貫く巫女は多いのだ。

 リリカの心境としては、冒険者をやっていた時は、誰かと結婚して子供を産んだりするのだろうかと漠然と考えていた。
 だが、考助から加護を貰い、シルヴィアの補佐として働くようになって、その考え方が変わって来たのだ。
 今では、シルヴィアに答えたように、コウスケ神に純潔を貫こうとさえ考えている。
 別に誰かに強要されたわけではない。
 自分の中で自然とそう言う感情になって行ったのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 そんな二人の会話を聞いて、内心でそっとため息を吐いていた青年がいたことを二人は気づいていなかった。
 異性のそう言った感情に敏感な女性に気付かれていないのは、驚嘆の事実だろう。
 少年の名はリン。
 塔の月の祭壇の管理者として招かれたジンの弟子として引き取られた少年である。
 青年と言って良い程に成長したリンは、ジンの薫陶を受けて今では二人の補佐役として働いていた。
 そんなリンが、リリカに対して秘めた想いを抱くのにそう時間はかからなかった。

 そしてさらにもう一人。
 彼らの執務室がノックされて、城の警備兵の一人がやって来た。
「どうしましたか?」
「ジンという者の弟子に当たるという者が、シルヴィア殿を訪ねてきていますが、ご存知でしょうか?」
 そのようなことを門で言われても通常は取り次ぐはずもない。
 だが、その警備兵はさらに何かを差し出して来た。
「これを見せれば、弟子であることは証明できると言っていました」
 そう言った警備兵は慎重に、神具を取り出した。
 勿論、おかしな術が仕掛けられていないかは念入りに調べてある。

 とはいえ、その調査を潜り抜けることは容易ではないが、出来ないことではない。
 リンが慎重にその神具を受け取って、さらにシルヴィアへと差し出した。
 その神具を見たシルヴィアは、納得したように頷いた。
「ああ、なるほど。確かに私の知り合いの神官の弟子のようです。応接室の一つにお通ししてください」
 神官や巫女が持つ神具というのは、見るものが見ればわかるように誰の弟子であるかが書かれていたりする。
 勿論、ジンという名の神官が他にいないわけではないが、それ以外にもジンの弟子であることが証明できることが記されていたのだ。
「かしこまりました。では、いつもの部屋にお通ししておきます」
「よろしくお願いしますわ」
 気軽に頷いたシルヴィアだったが、この後この神具の持ち主が更なる波紋を持ち込むことになるとは、考えてもいなかったのであった。
モテモテリリカでしたw
当初はこんな話を書く予定は無かったんですが、思いついてしまいました。
何故でしょう?w

ちなみに、姿を見せなかったジンの弟子は、イケメン男子という設定です。
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