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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その6)

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(5)進展

※現在活動報告で実施中のアンケートは、一応明日の投稿まで受け付けます。
 北西の塔でウインドタイガーの進化を確認してから半月程たったある日。
 管理層に珍しい客人が訪ねて来た。
「考助様! やりました! ついに出来ました!」
 非常に興奮した状態でやって来たのは、クラウン開発部門長のイスナーニだった。
 あまりの勢いに、傍にいたミツキが思わず考助を守ろうとしたほどだった。
 そのミツキの様子を見たイスナーニが自分の今の状態に気付いて、若干赤面した。
「あ、済みません。つい・・・・・・」
「いや、いいんだけど、何かあった?」
 イスナーニがここまで興奮している様子を見せるのは珍しいので、考助は首を傾げた。
「ああ、そうでした! ついに、ダンチが初期型の作成に成功しました!」
「おお! ほんとに?!」
「はい!」
 イスナーニの報告に、考助も思わず驚いて立ち上がった。
 彼女が言っている初期型の作成というのは、考助達が作成したゴーレムの作成のことだ。

 十年前に、考助達が持つ技術を何とか広めたいと考えたシュミットとダレスが、イスナーニを頭にした開発部門を開いた。
 当初は、元々ゴーレム作成の技術を持つ者だけで構成されていたのだが、魔道具作成部隊マドサクで魔道具の開発に才を持っていると見いだされたダンチがイスナーニに弟子入りしたのだ。
 以来、ダンチはイスナーニの下でゴーレム作成の技術を叩き込まれていたのである。
 一から技術を教え込まれていたダンチだったが、ようやくその成果が実を結んだようである。
 ついでに言えば、元々開発部門にいた者がゴーレムの作成に成功したという報告を聞いたこともない。
 正真正銘、ダンチがゴーレム作成の第一人者となったと言えるだろう。
 当初は、一本釣りのような形でイスナーニに弟子入りしたダンチには、周囲から嫉妬に近い視線や扱いを受けていた。
 だが、イスナーニのフォローと本人の凄まじいまでの努力により、そう言った周囲の反応もいつの間にか消えていた。
 今ではダンチに教えを乞う姿さえみられるという報告をイスナーニから受けていた矢先ことだった。

「それで? シュミットたちには報告したの?」
 考助の確認に、イスナーニはキョトンとした表情になった。
「いえ? まだですが?」
 イスナーニにしてみれば、優先順位が一番高いのは当然考助なのだ。
 そもそもシュミットたちに報告するという事は考えていなかった。
 イスナーニの表情からそこまで読み切った考助は、苦笑をしてから首を左右に振った。
「クラウンで研究費を賄ってくれてたんだから、ちゃんと報告はしないと駄目だよ」
 自分を一番にしてくれるのはありがたいが、物事には順序という物がある。
 もっとも、シュミットにしてもダレスにしても、今のイスナーニの行動を咎めたりはしないだろう。
「・・・・・・はい。わかりました」
 イスナーニにしてみれば、ダンチの作ったゴーレムを早く考助に見てほしかったのだが、クラウンというスポンサーがいてこその研究であることは間違いない。
 その代表であるシュミットやダレスを置き去りにするのはまずいのである。
 あくまでも、表の関係上は、であるが。
「いっそのこと、ここの会議室でお披露目にしようよ。シュミットとダレスの予定を聞いて、都合の良い日取りをセッティングして」
「分かりました」
 コクリと頷いたイスナーニに、考助はホッと安堵したような表情になるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ダンチは、自ら製作したゴーレムを横に連れてきながら緊張に包まれていた。
「ますたー、ダイジョウブデスカ?」
「ああ、大丈夫だよ」
 今、ダンチの目の前には転移門がある。
 その転移門は既に転移先が設定されていた。
 ダンチの師匠でもあり所属先の上司でもあるイスナーニが、自分で設定したのだ。
 アマミヤの塔の中には既に多くに住人が住んでいるが、好き勝手に転移門の転移先を設定できる者は、限られた数しかいない。
 イスナーニはその数少ないメンバーの一人なのだ。
 ダンチ達がこれから行こうとしているのは、アマミヤの塔の心臓部である管理層だ。
 アマミヤの塔に住む住人達の間では、塔の管理者が住む場所がどこかにあると噂されているのだが、まさにその場所に行こうとしているのだ。
 ましてや、現人神とも対面するというのだから、緊張するなという方が無理なのである。

「ちょっと、大丈夫?」
 ダンチの顔色に気付いたイスナーニが苦笑をしながら聞いてきた。
「大丈夫です」
「いや、大丈夫に見えないから聞いたんだけど。ダンチは、前にもあの方に会ったことはあるでしょう?」
 確かに会ったことはある。
 あるが、あの時は子供すぎてよく意味が分かってなかった時のことだ。
「あれは、子供の時のことですから」
「ああ、そう言えばそうねえ。大丈夫よ。無体なことを言うような人じゃないから」
 ダンチもそれは心配していない。
 勿論相手が現人神という事もあるのだが、それ以上にイスナーニが尊敬する魔道具開発者というのが問題なのである。
 現人神は冒険者たちの神として有名だが、一部には魔道具作成の神としても讃えられつつある。
 そんな存在と面会すると言うだけで緊張してしまう。
 この時ばかりは、普段平気な顔をして会っているアンドレが羨ましいと思った。
 もっとも、アンドレに言わせれば、緊張はしているのだが既に慣れてしまっただけだと答えるだろう。
「さあ、いつまでもお待たせするわけにもいかないから、さっさと行くわよ」
 少しだけ待ったが、状態が変わらないダンチに多少呆れながら、イスナーニはさっさとダンチを促した。
 どうやら自分が先に行ってしまうと、いつまでたってもダンチが来ないだろうと判断して、先にダンチを行かせることにしたらしい。
 少し怖い顔になったイスナーニに気付いたダンチは、今度は別の意味で青い顔になって転移門をくぐる覚悟を決めたのであった。

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「「素晴らしい!」」
 ダンチの製作したゴーレムを見たシュミットとダレスの第一声である。
 勿論、コウヒやミツキが本気で作ったゴーレムに比べれば、大人と赤子くらいの差がある。
 とはいえ、一般に流通しているゴーレムにすれば、段違いの性能なのだ。
 十年前に、シュミットが考助とイスナーニが作ったゴーレムを見た時の反応を考えれば、よくわかる。
 何より当時から人間離れしていた考助やイスナーニが作ったわけではなく、ごく普通(?)のヒューマンであるダンチが作ったというのが二人に感嘆をもたらしていた。
 シュミットとダレスの反応に多少緊張がほぐれたダンチは、その視線を考助へと向けた。
 その考助はジッとゴーレムを見ながら、イスナーニと専門的な話をしている。
 時々ダンチでも分からない言葉が飛び交っているのを聞くと、自分はまだまだだと感じさせられた。

 その後は、イスナーニを交えてシュミットたちと商売の話になった。
 初号機であるゴーレムはプロトタイプとして売りに出すことは無いが、今後つくるゴーレムは希望者に売りに出すことになる。
 新たに開発するにしろ研究するにしろお金は必要なのだ。
 ダンチ自身も作ったゴーレムを売りに出すことを反対するつもりはない。
 それに、売れるという事は次のゴーレムを作れるという事だ。
 自身のスキルアップのためにも絶対に必要なのである。

 ある程度の話が終わると、最後に考助がダンチに話しかけて来た。
 緊張でガチンガチンになって返答をすると、考助は微妙に引き攣って苦笑をした。
「そんなに緊張しなくても・・・・・・」
「無理です!」
 きっぱりと返答したダンチに、考助はため息を吐いた。
「まあ、それはいいや。今まで頑張ったダンチに、ある物を見せてあげよう」
「? はあ・・・・・・」
 考助の言葉の意味が分からず首を傾げるダンチ。
 だが、考助が声を掛けて会議室に入って来た者を見て、ダンチは顔色を変えた。
 ダンチも第一人者と言って良い程の専門家になっている。
 入って来た者が何であるかは、すぐに見抜けた。

「主様、お呼びでしょうか?」
 考助がその場に呼んだのは、普段管理メンバー以外の目に触れないようにしてあるメイドゴーレムだった。
「ああ、いや。しばらくここにいてくれるだけで良い」
「? はい。畏まりました」
 ちょっとだけ首を傾げて、すぐに頭を下げる仕草は、とてもゴーレムには見えなかった。
 外見だけしか見えないが、それでもダンチが作った物とは比べ物にならない程高度な技術で作られていることがわかる。
 メイドゴーレムをじっと見つめるダンチに、考助はニヤッと笑った。
「どうかな? ダンチもここまで目指してみる?」
 とても今のレベルでは、ハイと即答できる技術ではない。
 だが、目の前に最高峰の技術で出来た物を見せられて簡単に否定するのも技術者とは言えない。
「・・・・・・はい」
 色々な思いがこもったダンチの返事を聞いた考助は、満足したように頷くのであった。
十年たってようやく初期型レベルに追い付きました。
十年もかかるなんて最初の型でどれだけ盛ってたんだよ、という話ですが、これがこの世界でのゴーレムの変革の第一歩になります。
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