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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その6)

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(2)職業訓練校

※活動報告にてアンケート実施中です。
ぜひご協力ください。
時間はあえて設けていません。
 ラゼクアマミヤが国家として公教育制度の確立を目指して動いている頃、クラウンは別の教育機関の設立を目指していた。
 簡単に言えば、職業訓練校の設立である。
 実はこちらの方は、ラゼクアマミヤが作っている学校程難しい物ではなかった。
 何しろ、クラウンの元になっているギルドには、ルーキーを教育する制度があったりするのだ。
 教育と言っても、ランク上位の者がルーキーに対して、心得だったり技術を教えたりするものだ。
 工芸部門では子弟制度が存在しているので、弟子を募集している親方を紹介したりと言ったこともしている。
 基本的にそうしたことは公的ギルドの役目なのだが、アマミヤの塔の街には公的ギルドが存在しない。
 そのため、ラゼクアマミヤから依頼をされてクラウンがその部分を担っていたのだ。
 職業訓練校は、それを拡大した物になる。
 元は少人数が対象になっているとはいえ、似たような制度があるので、説明にはさほど苦労は無かった。
 作ろうと思えば、数年の準備で設立できただろう。
 それがここまで時間がかかったのは、ラゼクアマミヤが国家として作る学校の設立を待っていたためだ。
 先に職業訓練校を設立して、公教育がおざなりになってしまってはいけないという配慮をしたのだ。
 残念ながら公教育の方は、少なくとも最初のうちは、対象が貴族たちに限った物になりそうなので、ほとんど配慮した意味が無かったのだが。

 ラゼクアマミヤの公教育制度がようやくお披露目という段階に至ったので、この日は管理層にクラウンのメンバーが集まって、職業訓練校制度の話し合いが行われていた。
 管理層にクラウンの主要メンバーが揃うのは、久しぶりの事だ。
 ワーヒドをはじめとした統括達は、ここ数年の間は実務を完全に部門長たちに任せて世界各地を飛び回っているのだ。
 勿論、クラウンが他の大陸に受け入れるられる余地があるかどうかを調査するためだ。
 スミット王国をはじめとして、いくつかの国の首都には支部が置かれているが、順調に進んでいるとは言い難い。
 理由は簡単で、支部の設立を打診してくるどの国でも、クラウンが進出してくること自体は望んでいる。
 だが、当然ながらその国に合わせた、はっきり言えば、その国に従うような条件を付けてくるため支部の設立を見合わせているのが現状なのである。
 元々存在している公的ギルドとの折り合いもある。
 今一番勢いのあるクラウンが進出して来ることによって、仕事が干されるのではないかと恐れていることもある。
 そうした情報や条件を最終確認するために、統括達が世界中を動き回っているのだった。

 考助が、統括のワーヒドと顔を合わせるのは実に数か月ぶりになる。
「ワーヒド、久しぶりだね。体調は大丈夫?」
 そんな考助をワーヒドは、微笑んで見つめた。
「お気遣いいただきありがとうございます。そうそう簡単に体調を崩すようなやわな身体ではありませんので、ご心配なく」
「そう。無理に規模の拡張はしなくていいからね? 今は、セントラル大陸を重点に広がればいいから」
 考助が気遣いでそう言うのを聞いて、他の者達も笑っている。
 北の街をラゼクアマミヤが統治することになったために、北の街には既に転移門が設置されている。
 セントラル大陸に置いては、既にクラウンもまたほぼ全都市に版図を広げたと言って良いのだ。
 さらにこの十年で、北の街の版図だった町や村以外の場所では、ある一定以上のランクの冒険者は、クラウンに所属していなければ、もぐりとさえ言われるようになっている。
 クラウン設立当初こそ、他にはない契約で縛るクラウンに嫌悪を示す冒険者もいた。
 だが、逆にそれが冒険者以外の住民たちからの信用を勝ち取るものになっていると気づかれてからは、あっという間だった。

 この十年で、神能刻印機の数も増えている。
 改良を加え続けた現在の神能刻印機は、魔力の補充だけで起動が出来るようになっているため運用にも問題が無いと判断されてある程度の数が作られたのだ。
 ステータスや通信機能に関する部分に神力を使っていることは変わっていないのだが。
 今では、ある程度の大きさの町には、神能刻印機が配置されている。
 そのために、わざわざアマミヤの塔まで出張ってくる必要がなくなったことも、冒険者の加入を増やした原因となっていた。
 勿論、盗難やその場での解析がされないように、厳重に管理されている。
 もっとも、肝心な部分が神力で作動する所は変わっていないので、解析することも難しいだろう。
 現にこの十年で、クラウン以外にステータス表示が出来る魔道具を作ることに成功した組織や国家は一つもない。
 正確に言えば、神能刻印機は「魔」道具ではないのだが、神力を使った道具を魔道具と呼ぶこともあるので、不思議な力を使って動くもの全てを総称して魔道具と呼んでいたりする。

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「では、そろそろ訓練校についてのお話を始めましょうか」
 考助達は、クラウンにおける職業訓練の場のことを単純に訓練校と呼んでいる。
 最初に考助が面倒になって「訓練校」と言ったことが、定着してしまったのだ。
 実際にクラウンで活動するための訓練を行う場所なので、間違いではない。
 一々訂正することもしなかったので、そのままで残ってしまった。
「分かった」
「まあ、お話しすると言っても、以前に取り決めた内容で進めるつもりなので、今日は特に新しい報告もないのですが」
 ワーヒドが若干苦笑しつつ、そう言った。
 訓練校に関しては、今まで何度も打ち合わせが行われていて、後は設立を待つだけという状態になっているのだ。
 今日集まったのは、久しぶりに全員の顔を見たかったというのがある。

 ただし、今日会議を開いたもう一つの理由が、ワーヒドに口を挟んで来た。
「私は、コウスケから又聞きで簡単に話を聞いただけなので、出来ればこの場で説明してほしいのだが?」
「勿論です。女王陛下」
 今日はいつものメンバーに、フローリアとアレクが加わっているのだ。
 いくらクラウンが、建前上国家と離れた独立した組織とはいえ、人も金も動く以上ある程度の説明は必要になる。
 もし訓練校をスミット王国の支部で設立するとなれば、其方の王家に説明を行っていただろう。
 考助を間に挟んだ繋がりがあるとはいえ、何も説明せずに始めて良い物でもないのだ。
 何事も根回しというのは必要なのである。

 ワーヒドをはじめとした者達から一通りの説明を受けたフローリアが頷いた。
「要は、その職を目指す者を集めて、初期教育のような物を行うという事でいいのか?」
 流石にフローリアも、女王として公教育の設立に尽力して来ただけあって、呑み込みが早かった。
「そういう事になります」
「なるほどな。・・・・・・なあ、コウスケ。何故、国の学校に任せなかったのだ?」
 ラゼクアマミヤで学校を作っているのに、クラウンにも似たような物を作ったのが分からなかったらしい。
「いや、そもそも教える内容が違っているじゃないか」
 考助にとっては明確な区別があるのだが、教育すると一括りで考えているフローリアには、同じ物に見えたらしい。
「そうなのか?」
「そうだよ。それに、今の学校は貴族たちの社交を教える場になっているじゃないか。例えば冒険者たちにそんな物が必要だと思う?」
 高ランクの冒険者になれば、貴族たちと接することも増えてくる。
 だが、そうした者達はほんの一握りだ。
 クラウンで作る訓練校は、そうした者達のために作っているわけではない。
 勿論、簡単な読み書きや四則演算くらいは教えたりするが、必須というわけでもないのだ。
「そういう事か」
 考助の説明を聞いて、フローリアは完全に役割が違っていることを理解した。

「まあ、いずれはクラウンの成果を見て、騎士訓練校みたいなのを作るのはありだと思うけどね。・・・・・・こっちだと討伐軍(?)訓練校とかになるのかな?」
 驚いたことに、この世界では騎士訓練校のような物すらないのだ。
 魔法もそうなのだが、そうした技術は基本的に親から子へ、あるいは師から弟子へと教える物になる。
 そして、ある程度の年齢に達すると、訓練兵的な存在になりそこで組織としての行動を教え込まれるのだ。
 考助が提案したのは、今ある学校に文官用や軍人用の専門コースを作るといったものだ。
 その話を聞いたフローリアは、完全に女王の顔になって聞いていた。
 以前にそうした提案を考助はしたと思っていたのだが、理解できなかったのか、あるいは聞き逃していたらしい。
 学校という物がある程度形になったからこそ、想像がしやすかったのかもしれない。
 この分だと騎士学校が出来るのも早いかもしれないな、と考える考助なのであった。
というわけで、クラウン側の職業訓練校でした。
いつの間にか、フローリアに全てを持って行かれましたがw
本文中で、騎士学校だったり騎士訓練校だったり、呼び名が定まっていないのは、きっちりと決まっていないためです。
話を聞いたフローリアの事ですから、数年後には出来ている事でしょう。
ラゼクアマミヤの場合は、騎士ではなく討伐軍ですが。(あえて騎士と呼んでもいいのかもしれません)
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