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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 大陸最後の未勢力圏

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(9)セントラル大陸

 北の街での反乱の情報は、すぐさま青の教主にも届けられた。
 情報を持って来たのは、北の街の上層部の一人で昔から青の教会と関係が深い家の者だ。
 群衆が集まった状況ですぐさま北の大陸へと逃れて来たのだ。
 領主であるルーカスの側近が何やら忙しく動いていたという事も青の教主に頼ることになった決め手になっている。
 結果として、今まで蓄えてきた財産をほとんど失うことなく、北大陸へとのがれることが出来た。
 かなりの額を青の教主へと貢ぐことになったが、その程度は許容範囲内だ。
 北の街に残っていれば、命が続いたかもわからないのだから十分な結果だろう。
 過去の栄光に縋った者は、北の街から離れることが出来なかったようだが、そう言う意味では青の教主の目の前にいる男は上手くやったと言えるだろう。

「そうですか。反乱が起きましたか」
「ええ。衛兵も所詮は民衆の一部。例え鎮圧を命令してもきちんと機能はしなかったでしょうね」
 結局、最後まで衛兵への命令は出されることは無かった。
 責任逃れで出せなかったのもあるが、ようやく状況を把握して命令を出そうとしたときには既に手遅れだったのだ。
 あらゆる意味で、上層部にはまともな判断が出来る者がいなかったといえる。
 逆に言えば、まともな判断が出来る者は、さっさと逃げ出してしまっていたのだ。
 その筆頭は、元領主のルーカスだろう。
 反乱が起こる前から計画をしていたのか、反乱の首謀者と繋がっていたルーカスは、自身がラゼクアマミヤへと亡命を図ったのだ。

「この後、北の街はどうなりますか?」
 青の教主は、敢えて分かっていることを尋ねた。
「どうもこうもありません。ラゼクアマミヤから優秀な人材が送られて、きっちりと支配されるでしょう」
 男にとってもラゼクアマミヤの評価は高いのだ。
 そうはいっても、全ての権限を取られるわけには行かなかったからこそ傘下入りに反対をしていた。
 最終的には同じような結果になってしまったので、反対した意味は無かったのかもしれない。
「そこまで、ですか」
「そうでなければ、この十年でどこかの村あたりで不満が爆発しているはずです」
 この十年、ラゼクアマミヤの統治は見事な物だった。
 大なり小なり起こるはずの不満の爆発が、何処でも起きなかったのだ。
 これまでのセントラル大陸の歴史からすれば、考えられない事態なのである。

「不満を抑え込むには、それこそ神の祈りが通じると思うのですが・・・・・・?」
 聖職者らしい青の教主の意見に、男は首を振った。
 その理屈が通じるのは、モンスターの被害が少ない大陸の意見なのだ。
 セントラル大陸の実情を知らなかった青の教主の誤算はここだったのかもしれない。
「セントラル大陸では、その理屈は通じません。何よりも求められるのは、モンスターの被害がより少なくなることなのですから」
 ラゼクアマミヤは、討伐軍を建国当初に新しく作った。
 同じ大陸に別の国家が無いラゼクアマミヤにとっては、対モンスター専用の軍隊という事になる。
 この討伐軍が見事に機能しているために、町や村がモンスターの被害に遭って壊滅したという事が一度もなかったのだ。
 セントラル大陸の歴史からすれば、考えられないほどの事態なのである。

「モンスターの被害ですか・・・・・・」
 青の教主は、何が足りなかったことをようやく理解した。
 北大陸の中では一番セントラル大陸と近い地域を治めているため大陸について良く理解できているつもりであったが、モンスターに関しては知識として知っているだけで、きちんと実感できていなかったらしい。
 モンスターの被害が無い。
 それだけで、ここまで大きく作用するとは思っていなかったのだ。
「ラゼクアマミヤには対モンスター専用の軍隊があります」
「それは、勿論知っていますが?」
 男が何を言いたのか分からずに、青の教主は眉を顰めた。
「その軍隊、討伐軍ですが、主神として信仰されているのが、現人神になるのです」
「何と!?」
 思わぬ情報に、青の教主は驚いた。

 軍隊が主神を持つことは何ら珍しいことではない。
 むしろ主神を崇めない軍隊の方が珍しいだろう。
 戦争という極限の状態において、信仰を持っていることが何よりも心の支えになるのだ。
 だからこそ、ラゼクアマミヤの討伐軍が信仰を持っていることは不思議ではない。
 だが、その主神が現人神であるという事は知らなかった。
「やはりご存知でなかったのですか」
「うむ。いや、初めて聞きました」
「さもありなん。討伐軍はそのことを意図して隠したりはしていませんが、敢えて喧伝もしていないようですから」
 現人神に対する信仰は、アマミヤの塔に唯一存在する神殿に象徴されている。
 未だ管理するための神職の一人も存在していない神殿は、現人神がただただ静かに信仰されることを願っているのだと考えられている。
 現人神としてこの世に現存している神の為、偶像という物も存在していない。
 唯一現人神の信仰の象徴とされているのが、その力を表わしていると言われているクラウンカード、正確にはそのカードに表示されるステータスなのだ。
 討伐軍が現人神を主神としているのは、ラゼクアマミヤが主導したのか、それとも自然発生的に広まったのかは分からない。
 モンスターの脅威が、ごく普通の一般市民でさえ感じることがあるセントラル大陸ならではの現象なのかもしれない。
「この十年で、セントラル大陸において現人神の存在は、確実に大きくなっています」
「いや、なるほど。ここにいては分からない、貴重な意見でした。教えてた頂きありがとうございます」
「いえいえ。この程度の事でしたらいつでも協力いたします」

 一通りの話を終えて、男は青の教主の前から立ち去った。
 男がこの先どう生きていくのかまでは分からないが、少なくとも反乱の混乱を逃げ切ることが出来る実力があるのだから何とかやっていくのだろう。
 それほどの実力があるのであれば、反乱など起こさずに抑え込めなかったのかと思えるのだが、そうもいかない事情があったのだろう。
 青の教主から見ても、北の街を支配していた上層部はひどい一面があった。
 それ故に干渉しやすいという所もあったのだが、無くなってしまったのだからどうしようもない。
 青の教主は、あれほどこだわっていた北の街への執着を頭の片隅へと追いやり、先ほど男から聞いた情報を整理することにしたのであった。

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「何とかなったな」
 フローリアがアレクに向かってそう言った。
 今この執務室には、二人しかいない。
 公務の時の固い感じではない。
「そうだな。ルーカスからの打診があった時はどうなることかと思ったが、上手く収まってくれてよかった」
 本来の計画であれば、ある程度の血が流れる予定だった。
 そのことを望んでいたわけではないが、今後のことを考えれば致し方なしと判断していたのだ。
 だが、ルーカスの存在によって計画が変更されて、ほとんど血が流れることなく北の街が傘下入りすることになった。
 結果としては、大成功という事になった。
 もっとも、運が味方したのもある。
 元上層部がほとんど抵抗らしい抵抗もしなかったために、余計な戦闘が発生しなかったこともラゼクアマミヤにとっては良かった。
 街の運営を手に入れた住人達は、その権利をあっさりとラゼクアマミヤへと渡して来た。
 それだけ期待されているという事にもなるが、今まで通り粛々と手続きを進めていくことになる。
 これまで北の街が間に入っていた北大陸へのルートも手に入れたことになる。
 今後のラゼクアマミヤは、四方の大陸への交易を重点に進めていくことになる。
 あとは、大陸内の未開発エリアを開拓していくことだが、フローリアは自身の代でそこまで手を付けるつもりはない。
 息子たちを含めた代に任せたいという事もあるのだが、まずは足元の第五層の街をしっかりと発展させていくことにしているのだ。
 セントラル大陸の全エリアを手中を治めた今となっては、地盤を固めることが先だと判断したのだ。
 今後のフローリアは、王族の地盤固めと息子たちの教育に奔走することになるのであった。
これで「大陸最後の未勢力圏」は終了になります。
フローリアの主な役目はこれで終わりです。
別に疲れたとかそう言うわけではなく、今後の王族の支配を強めるために自分の力を誇示するのではなく、その権利を息子たちに譲り渡します。
そのための種をせっせと蒔いていくとになります。

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作「ぶっちゃけ、さっさと勇退してコウスケとイチャイチャしたいんじゃね?」
フ「そ、そんなことはないが?」
+注意+
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