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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 大陸最後の未勢力圏

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(8)亡命

 ラゼクアマミヤの象徴でもあるアマミヤの塔。
 その塔の中にある女王が住まう城の一室にルーカスは通されていた。
 ルーカスは、ラゼクアマミヤという王国に対して、ある提案をしたのだ。
 治めるべく北の街が、あのような状態になっているにもかかわらず、領主であるルーカスが直接乗り込んできたのだ。
 当初は、あの時の交渉を行った代表者が対応をした。
 だが、ルーカスの提案を聞いた代表者は、すぐさま女王との面談を取り付けたのだ。
 通常であれば一外交官のような身分の代表者の意見は、すぐに叶うはずもないのだが、北の街の状況を知っていたラゼクアマミヤはすぐに動いた。
 結果として、ルーカスは北の街の支部にある転移門を使って塔に入り、こうしてフローリア女王との面会を待っているというわけなのだ。
 ルーカスが使った転移門は、北の街にある支部に設置してある門だ。
 支部に転移門があることは既に公然の秘密となっていた。
 この十年で表に知られている転移門の数もかなりの数になっているので、敢えて秘密にし続ける必要もなくなったのだ。
 代表者が今回の件の重要性を理解して、転移門の使用許可を取りつけすぐにラゼクアマミヤ側が許可を出したのである。

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 ルーカスの予想に反して、フローリア女王はすぐにやって来た。
 普通であれば一国の代表である女王は、こうも気軽に時間を作れないはずなので、まだまたされると思っていたのだ。
「待たせたかな?」
 意外に軽い調子で、フローリア女王が話しかけて来た。
 実際にルーカスが、フローリア女王と対面するのは初めてなのだが、不思議と不快感は感じなかった。
「そんなことはありません」
 たったの十年で大陸の八割を手中に収めた傑物である女王は、時間を無駄にすることはしなかった。
 定型のような挨拶を交わした後は、すぐに互いに向かい合って座るように勧めて来た。
 女王の傍には初老に差し掛かりそうな男性がいる。
 ラゼクアマミヤ宰相のアレクだった。

「一応報告は上がってきているが、念の為、其方自身の口から聞きたい」
 いきなり前置きもせずに、フローリア女王はそう切り出した。
 すぐに女王との面会が許されたことから、報告が上がっていることは予想していた。
 むしろそうでなければ、これからの話を切り出す意味がない。
 時間が無いのはルーカスの方なのだ。
 すぐに要件を切り出した。
「私と私の家族、それから希望した身内に関して、ラゼクアマミヤへの亡命を希望したい」
 ルーカスがそう切り出すと、フローリア女王は一瞬だけ沈黙した。

「一応、聞いておこうか。・・・・・・正気か?」
 疑うような視線を向けてくるフローリア女王に、ルーカスは笑顔を向けた。
「勿論です」
 実際こうしてフローリア女王と会えるまでは、上手くいくかどうかは微妙な線だと考えていた。
 だが、きちんと会えた今は、その確率が上がったと確信している。
 本来は、亡命するうえで条件などは滅多につけられないのだが、ルーカスが亡命の話を持って行く段階で、フローリア女王との直接の面会を希望したのだ。
 その希望が通ったという事は、ラゼクアマミヤがこの話に興味を持っていることがうかがい知れる。
 普通に考えれば、亡命者に対して一国の王が会うことなどありえないのだ。
 その無茶な条件を通してまでルーカスと会ったという事は、代表者を通じて伝えた内容にラゼクアマミヤが興味を持っていることがわかる。
 後は、ルーカスの交渉次第という事になる。

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 現在、北の街は反乱一歩手前といった状態になっている。
 石もて追われるようにして去ることになった者が、他国に亡命を希望することは往々にしてあることだ。
 だが、問題はその立場だ。
 北の街で住人達が蜂起しているのは、北の街をラゼクアマミヤに加えてもらうためだ。
 そのラゼクアマミヤに、反対派(?)のトップが亡命しようとしているのである。
 普通であれば、そのような提案は受け入れられるはずがない。
 フローリア女王は、まずその点を突いてきた。
「今、其方の街では、反乱がおきそうになっているはずだが?」
 それだけ言って、反乱の内容までは詳しく言うことは無かった。
 王国の上層部が反乱のことを知ってると、ルーカスに知らせただけだ。
 ルーカスもフローリア女王が言いたいことをきちんと理解している。
「勿論、そのことを隠すつもりはありません。ですから私が望むのは、私の家族と側近の家族の安全です。私自身は、煮るなり焼くなり好きにして貰っても構いません」
「ほう」
 ルーカスのその言葉に、フローリア女王が興味を示したような表情になった。
 その視線をアレク宰相へと向けた。

「ご家族の安全とは?」
「一言で言えば、今回の騒ぎで手にかからないようにしてもらいたい」
 ルーカスにとってはこれが最低限の条件なのだ。
 そうでなければ、亡命などする意味が無くなる。
「今回の騒ぎだけ、でいいのか?」
 アレクが言った質問の意味は、未来永劫ルーカスの一族をラゼクアマミヤが守るのではないのか、と聞いているのだ。
 その問いに、ルーカスは苦笑した。
「流石にそこまでは求めませんよ。あくまでも今回だけです。まあ、あわよくば私が持っている当主の地位を息子に譲り渡したいですね」
 グレヴィリウス家の家名が続くのであれば、それに越したことは無い。
 だが、例え北の街が後にラゼクアマミヤに組み込まれるとしても、グレヴィリウス家は戻れないだろう。
 北の街と共に合ったグレヴィリウス家の名が、他の地で続くことに意味があるかどうかは分からない。
「御身はこちらが好きにしていいと?」
「そうですね。まあ、これも出来れば死にたくはありませんが」
 そう言って、ルーカスは肩をすくめた。
 騒ぎが起きた時点で、領主である自分の命は無くなっている物と考えている。
 であるならば、いっそのことラゼクアマミヤの有利になるように使ってもらえればいい。
 下手をすれば、一族全員が処分されかねない所を亡命という手段ですくってもらおうとしているのだからそれくらいのことは覚悟している。

「北の街の騒ぎは?」
 言外に領主であるルーカスがこの場に居るのは無責任ではないのか、とフローリア女王が問いかけて来た。
「それは、ちょっとした小細工をしてきました」
「ホウ?」
 これは流石に初耳だったのか、女王も宰相も興味深げな視線を向けて来た。
「亡命が受け入れられた時点で、私自身はラゼクアマミヤへの編入に賛成の立場であることが反乱・・・・・・いえ、解放側から公表されることになっています」
 ルーカスはあえて反乱ではなく解放と言い直した。
 既に北の街は、以前と同じ秩序には戻らないことを覚悟していることを見せたのだ。

「なるほど、な」
 フローリア女王は、そう呟きしばらくの間目を瞑っていた。
 今までの情報を整理して、ラゼクアマミヤとしてどう対応するべきか考えているのだ。
 ルーカスにとっては、ジリジリするような時間がすぎてから、やがてフローリア女王が目を開けた。
 そして、アレク宰相へと視線を向けた。
 その視線を受けたアレクは、同意するように頷いた。
 二人の間で会話は無かったが、女王がどう決断したのか分かっているのだろう。
 そしてフローリア女王がその決定をルーカスに話始めるのであった。

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 ラゼクアマミヤ王国が建国して約十年。
 セントラル大陸の中で最後まで残っていた北の街は、住人達が上層部に対して蜂起することにより決着がつくことになった。
 結果としては住人側の勝利で終わり、その住人達の希望通りラゼクアマミヤは北の街を受け入れることになった。
 その際に、北の街の上層部の貴族たちは、全員が北の街から追放されることとなった。
 その行先は様々で、最後まで北の街にしがみつき財産を没収されて放逐された者もいれば、さっさと見捨てて北大陸へと逃れた者もいる。
 その中で、一番注目されたのは領主であるルーカスの動向だった。
 ルーカスは、住人達が反乱を起こした時点ですぐさまその反乱に賛成の立場を取り、ラゼクアマミヤへの亡命を希望した。
 見事にあっさりと上層部の貴族たちを見捨てたのである。
 ただし、ルーカスの名が歴史の表舞台に出てくるのはそれが最後となった。
 一部の者を除いて、彼がどのような運命をたどることになったのか、知る者はいなかったのである。
未だに「女王」ではなく「王女」と打ちまくる作者です><
どうにもフローリアのイメージは王女で固定されてしまっている模様・・・・・・。

今話で反乱と書いていますが、武力的な衝突はほとんど起こっていません。
(全く血が流れなかったわけではないです)
ルーカスがさっさと逃げ出したと分かった貴族たちは、衛兵たちを動かすこともなく保身に走ったためです。
貴族たちの命運は、しっかり全財産を持ち出した者もいれば、這う這うの体で逃げ出した者もいます。

次はルーカスのその後と青の教主の動向になります。
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