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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 大陸最後の未勢力圏

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(5)サラニ王国

 青の教主は、手元の書面に目を通しながら笑みを浮かべていた。
「クックック。ラゼクアマミヤもやりおるわ。まさか、このような条件を突き付けて来るとはな」
 教主が持っている書面には、ラゼクアマミヤが北の街に突き付けて来た傘下入りの為の条件が記されていた。
 長年蜜月関係を築いてきた青の教会には、北の街の上層部にしっかりとした伝手を持っている。
 そこから仕入れた情報なので、信頼度という点では全く疑っていない。
 その情報に書かれている内容を見て、青の教主が笑っているのだ。
「見事に今の首脳部を切り捨てたな」
 内容を見るだけでラゼクアマミヤの意図は、ある程度読み取ることが出来る。
 勿論政治であるだけに、裏の意図という物もあるのだろうが、この場合表から読み取れるものだけでも十分だった。

「北は受け入れると思うか?」
 青の教主の向かいに座っていた人物が、教主とは対比的に静かに問いかけてきた。
「さてな。まあ、まずは何とか交渉しようとするのではないか?」
 まず最初からこのままの条件で受け入れようとすることはしないだろう、というのが教主の読みだ。
 向かいに座っている人物も同意見だ。
「受け入れると思うか?」
「さてな。まずはお手並み拝見でいいのではないか?」
「それでいいのか?」
 何としても北の街と繋がりを持とうとしていたのは青の教主だ。
 その教主本人が黙って指を咥えてみているのを不思議に思ったのだ。
「良いも悪いもない。むしろ、其方の方がいいのか?」
 青の教主はからかうように、向かいに座るエヴゲニーに問いかけた。
 エヴゲニーは、青の教会の勢力圏に入っている国の一つであるサラニ王国の国王だ。
 青の教主の挑発に、エヴゲニーは特に表情を変えずに肩をすくめた。
「我が国としては、安定して交易を望めるのであれば特に問題はないな」
「ホウ? 今の体制を望んでたからこそ援助に手を貸してくれたのではないのか?」
 青の教会の援助という名目になっている北の街への援助には、サラニ王国の資金も投入されているのだ。
 当然、今の体制を望んでいるからこそ、資金の提供をしたのかと青の教主は考えていた。

 その青の教主に対して、エヴゲニーは左右に首を振った。
「きちんとした取引が出来るのであれば、相手は誰であろうと構わないさ。むしろ国が相手になる分、やりやすいかもしれん」
 結局のところ、国家として欲しいのはセントラル大陸から流れてくるモンスターの素材なのだ。
 援助をしておいて矛盾するようだが、相手が誰になっても構わないのである。
 サラニ王国としての今回の援助は、あくまで円滑に交易をおこなうための賄賂的な意味合いが強い。
 表に王国の名前が出ていない以上、さほど高い効果も期待していないので、あくまでも保険的な意味合いなのだ。
 ついでに言うと、北の街が今の体制であったとしても、アマミヤの塔として他の大陸からの軍事的な介入は拒否されているので、攻め入ることも出来ないのだ。
 それであるならば、今の体制で賄賂的な物を求められるよりも、ラゼクアマミヤという国家の元で活動しているクラウンを相手にした方がより円滑に交易が出来る可能性がある。
 他の大陸との取引を見ている限りでは、そちらの方が良いことは間違いない。
 サラニ王国としては、どちらの転んでもいいように手を打っているだけなのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 対する青の教主としては、あくまで青の教会としての勢力の維持が目的だ。
 そう言う意味ではサラニ王国とは全く立場が違っている。
 ラゼクアマミヤは、表向きではどこの教会を支持しているという公表はしていない。
 だが、一つだけあるとすれば、現人神は御膝元としてしっかりと認めているので、その部分では北大陸の全ての教会とは相いれないのだ。
 青の教会も同じ立場を取っているので、そこはどうしても対立することになる。
 いっそのこと現人神も認めてしまえ、という立場が取れないのは、青の教会としてはどうしようもないのだ。
 いくら青の教主が宗教人といっても、現実が全く見えていないわけではない。
 むしろ現実が見えているからこそ、援助を続けることを求めたわけだ。
 だが、現状は今の勢力を維持することは難しいことも分かっている。
 それは、十教会会議で全体の援助が打ち切られたことで予想できていた。
 そう言う意味で、今回のラゼクアマミヤの提案は、青の教主としてはむしろすがすがしい気持ちになっている。
 首脳部の退陣の要求というのは、そのまま北の教会の影響力をそぎ落とすのと同じ意味なのだから。
 人々の信仰と言う意味では、冒険者の信仰する神として既に定着しつつあるので、この流れを止めることは出来ないとさえ考えているのである。

「其方の方こそ、あれほどこだわっていたのに、傘下入りを認めてしまっていいのか?」
「この条件で、あやつらが受け入れるはずがないだろう?」
 いろんな意味で付き合いの長い青の教主からすれば、北の街の上層部がこの提案をそのまま受け入れるとは考えていない。
 そのままラゼクアマミヤと意見が対立するのであれば、それはそれで構わないのである。
「お互いに何かの妥協点を見出した場合は?」
「妥協点? このような条件を出したラゼクアマミヤが、そのようなことを認めるのか?」
 暗に認めるはずがないだろう、と言う意味を込めて青の教主は、エヴゲニーを見た。
 視線を受けたエヴゲニーは、表情を変えずに淡々と答える。
「政とは、常に妥協の産物だ。特に彼の国のように戦争を前提にしない場合は。それを考えれば、妥協を前提に提示している可能性もあるのではないか?」
「それは当然そうだろう。だが、ここまでの条件を出したあの国が、どこまでの妥協をするかな?」
 青の教主としては、ラゼクアマミヤの絶対の条件が上層部の退陣だと読んでいる。
 勿論、ただの想像なのだが、これは恐らく外れていないと考えている。
 建国から今までの国の流れを見ていると、現在の北の街の腐敗の状況は目に余る物があるだろう。
 外から見ている分には、その腐敗が扱いやすい材料になるのだが、自国の中に組み込むとなるとあまりにひどい腐敗は、邪魔な物でしかない。
 その意味で、上層部のすげ替えを狙っているのであれば、予想は外れていないだろう。

「別に、上層部全てを挿げ替えなくともやりようはあるがな」
 エヴゲニーのあくまで冷静な言葉に、青の教主はフンと鼻を鳴らした。
 上層部の何人かと取引をしたうえで、一部の上層部を追放するだけで済ませる方法もあると言っているのだ。
「そのような手段をあの若い国が取るかな?」
「若い女王はともかく、宰相は国と言う物を分かっていると思うがな」
「それならそれでやりようがある」
「そうだといいがな」
 どちらに転んでも構わないと考えているエヴゲニーは、どこか他人事のようにそう言った。
 実際、他人事なのだろう。
 サラニ王国としては、もう既にどちらに転んでもいい状態にはなっている。
 これ以上の余計なことをするつもりはない。
 後は流れを見守るだけなのだ。
 もっとも、軍事的に行動を起こせないのが、ラゼクアマミヤに対する対応を狭めているという事もある。

 青の教主としてもエヴゲニーとしても、今の状態は様子を見るという事で一致している。
 セントラル大陸最後のラゼクアマミヤにとっての未支配領域の運命は、北の街の対応によって変わってくるという事になったのであった。
どうでもいい話ですが、この話を書いていて何度も「サラミ」王国と思い浮かべてしまいました><
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