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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第4章 塔の外で色々やろう

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(8) 塔への帰還

 ナンセンの街のとある一角。
 そこに建っている建物の一室で、部下の報告を受けている人物がいた。

「・・・逃がしただと?」
「はい。昨夜宿に襲撃を掛けたのですが、それぞれの部屋に掛けられた結界が強力で侵入できなかったようです。
 また、朝街を出たところまで追いかけたのですが、尾行者が見ている前で、そろって消えたそうです。恐らく転移かと思われるとのことです」
「・・・チッ。使えん奴らだ・・・」
 舌打ちして苛立ちを見せた男は、一度気分を落ち着かせるようにパイプを口にくわえた。
「ふん。・・・まあ、いい。街から出て行ったのなら用はない。再び、街に戻ってきたときは・・・いいな?」
 男の確認するような視線に、報告していた人物は頷いた。
「わかっております」
「なら、下がれ」
 一言命令を下すと、部下の男は部屋から出て行った。
 残った男は、しばらくの間パイプを燻らせた後、部屋から出て行った。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ナンセンの街を早々に立ち去った考助達は、コレットとシルヴィアも一緒に連れて塔の麓まで転移していた。
 もちろん尾行者に分かるように転移したのは、わざとだ。
 街から遠く離れたことを印象付けるためだ。
 考助たちを狙っているのが、どのくらいの規模の者達かは分からないが、対応の早さからそこそこの規模はあるのだと考えている。
 そのため、わざわざ尾行者を引き連れての逃亡だったのだが、どこまで意味があるのかは、大して気にはしていない。
 転移を追うのは不可能なうえに、塔に籠ってしまえば、ほとんど関係なくなってしまうからだ。

 突然転移させられたコレットとシルヴィアは、今自分たちがいる場所がどこだかは分かっていない。
 だからこそ、ナンセンから転移した後、目の前に突然現れた巨大な塔を見て、呆然としたのは仕方のないことだろう。
「・・・これは、塔?」
「うん、そう。セントラルの中央にある塔だね」
「・・・ッ!? まさか、アマミヤの塔ですの!?」
「え!? 何、それ? この塔、そんな風に呼ばれてたの?」
「いえ元からそう呼ばれていたわけじゃなくて、最近攻略されたという噂が流れて、その時から言われ始めた名前なんだけど・・・」
 そう言われて考助は、攻略した時に、アマミヤ(天宮)の名前を登録したことをふと思い出した。

(あー。あれがそのまま、他の塔の所持者に伝わったのかな?)

 実は管理画面には、他の大陸にある塔の名前を表示させる機能がある。
 他の塔所持者たちも、それと同じようにこの塔の名前が見えているのだろうと、推測した考助だった。
「でも、門のところは閉じているようですわ。どうやったら中に入れるのかしら?」
「ああ、それはこうやって・・・」
 シルヴィアの疑問に答えるように、考助が門に手を触れた。
 すると、考助の半径二メートルほどが、淡い光に包まれた。
「この光の中に入って・・・取り残されたら、周りのモンスターに襲われるから気を付けて」
 考助の言葉に、コレットとシルヴィアは慌てて光に入ってきた。
 当然ながらミツキやナナ、ワンリも既に光の中に入っている。
「・・・もういいかな? じゃあ、飛ぶよ?」
 考助がそういうと、その場から全員が消え去った。

 管理層へと戻った考助たちを出迎えたのは、ちょうど第七十六層から帰ってきたシュレインだった。
「おや。コウスケ殿。もう戻ったのかの?」
「ああ、シュレ。ただいま。・・・まあ、色々あってね」
「色々とは・・・出て行ってまだ二日しか経っておらんだろうに。流石、と言ったところかの」
 なにやら微妙なシュレインの評価に、反論しようとした考助だったが、横で頷いているミツキに気付いて、反論するのは諦めた。
「・・・シュレの僕に対する評価を、一度じっくり聞いてみたいよ・・・」
「その気もないのに、無意識のうちに釣り針を垂らして獲物を捕らえる釣り師かの」
「ひどっ!」
「たった二日で、現物を二人も引っ提げて来ておいて、何を言うておる」
 シュレインは、そう言ってコレットとシルヴィアの方を見た。
「・・・ググッ。べ、別に二人はそういう関係じゃないんだけど・・・」
「そうなのか? ・・・フム」
 シュレインは、一度頷いて、二人の方を見た。
 何となく嫌な予感がする考助。
「・・・コウスケ殿は、こちらをその気にさせて置いて、一切手を出してこないヘタレだからの。覚悟しておくといい」
 その言葉に、言われた二人が即座に反応した。
「わわ、私はそのような関係ではありませんわ」
「私もよ!」
「ふむ、そうかの? ・・・吾の見たところ、ひとりはもう既に陥落、もう一人はあと一歩、といったところだが・・・どうかの?」
 最後の、どうかの、はミツキへの問いかけである。
「流石、シュレインね」
「「「ミツキ・・・!?」」」
 ミツキの簡潔な返答に、三人が見事にハモった。
 だが、言われたミツキは、どこ吹く風といった表情をしており、それを聞いたシュレインは、やっぱりなどと頷いていた。

「・・・・・・いつまでも立ち話していないで、座って話されては如何ですか?」
 一向に転移門のある部屋から動かない一行に、奥にいたコウヒが呆れたように顔を出してきた。
 まさかミツキに並ぶほどの美貌の持ち主が、もう一人いたとは思っていなかったコレットとシルヴィアが一瞬固まったが、幸いにもそれに気付く者はいなかった。
 これ幸いと管理層のリビング(と勝手に考助が思っている)に移動し始めた考助に、全員がついて行った。
 そしてようやく落ち着けた考助が、コレットとシルヴィアの方を見て口を開いた。
「ようこそアマミヤの塔へ。一応、僕がここの管理長をやっています」
「あー。うん。・・・それは、もう何となくわかってたから」
「あっ・・・そう」
 あっさりと返事を返してきたコレットと、それに頷いているシルヴィアを見て、がくりと項垂れる考助であった。
「・・・ところで主様。こちらのエルフは、もしかして・・・?」
「ああ、そうだよ。・・・エセナに選ばれたみたいだ」
「! そうですか! よかったです。これでやっと私も管理から離れられます!」
 コウヒはそう言って、考助の返事すら聞かずに、嬉々としながらコレットを連れて行ってしまった。
 コレットは、頭上に疑問符を浮かべながら、コウヒに腕を引っ張られるようにして連れられて行った。
 権限移譲するために管理画面のある部屋と、世界樹のある第七十三層へ行ったのだろう。
 もともと考助もそのつもりだったので、特に止めることもしなかった。
 シルヴィアは、あっという間の出来事に、ただ唖然としてそれを見送るだけだった。
 残ったシルヴィアに説明するのは、考助の役目である。
 といってもシルヴィアは、当分どこかの層を任せるとかは無いと考えているので、塔の管理に関しては簡単な説明で済んだ。
 それよりも考助がシルヴィアに期待しているのは、エリスとの繋がりである。
 この管理層に、そのための神殿など作るつもりでいるのだ。
 シルヴィアと共に、管理画面で設置できる施設を見ながら一つ一つ必要な物を抜き出して行ったが、全てを揃えるにはどう逆立ちしてもptが足りなかった。
 結局、必要最低限の神殿だけ造って、あとは外からの持ち込みで揃えていくことになった。
2014/3/24
訂正)雨宮→アマミヤ(天宮)

2014/4/24 アメミヤ→アマミヤ(指摘されるまで気づきませんでしたorz)
2014/5/11 誤字脱字修正
2014/6/1 誤字修正
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