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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その5)

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(3)欠落

 考助は、第四十七層にいる魔道具作成部隊、通称マドサクの定期報告を受けていた。
 勿論報告するのは、責任者であるアンドレだ。
 定期報告では、月内で作成した魔道具の数や部隊の収支などが報告される。
 マドサクが発足してから既に三年近くが経っている。
 発足したばかりの頃は少年という趣だったアンドレは、既に青年の域に達していた。
 青年と言ってもこの世界では十五才が成人なので、既に大人として活躍しているのだが。

 当初は三十名くらいの規模だったマドサクは、現在では百名以上の奴隷が働いている部隊になった。
 充電型魔力石を開発してからは、マドサクの存在はラゼクアマミヤにとっては無くてはならない存在になっている。
 勿論クラウンに卸している魔道具もあるのだが、これからの事を考えると魔力石への魔力の補充がメインの仕事になりそうな勢いだ。
 最初の頃は、充電型魔力石を使っている商品が少なかったためにさほどではなかったのだが、考助の開発に加えてクラウンの工芸部門でも新しい魔道具が開発されていることにより、重要度が増して来ていた。
 マドサクのメインの収入はいずれ充電型魔力石への魔力の補充になると見込んでいる。
 実は魔力の補充は、魔道具を作成するうえで最も基本的な作業なので、見習いに近い者達にとっての重要な作業になっていたりする。
 ただし、魔力を補充するだけで出荷できるわけではないので、最終的にはある程度の腕が必要になる。

「いつもの報告はこれでいいけど、マーヤが来ているってことは他に何かあるんだよね?」
 マーヤというのは、アンドレと同じくマドサク発足当初からいるメンバーの一人だ。
 仕事の内容は魔道具作成ではなく、家事全般を担当している。
 早い話が、マドサクで働いている奴隷たちのお母さんと言った立場になっているのだ。
 もっとも、流石に百名近くに増えた人数を一人で支えるのは厳しいので同じような立場の者も増えている。
「はい。実はマーヤからある提案を受けまして、本人から伝えた方がいいと思って一緒に来てもらいました」
 アンドレがそう言った後で、自分の後ろに控えていたマーヤを押し出した。
 全体の責任者であるアンドレと、生活全般を支えているマーヤで特に上下の差はないのだが、考助とはほとんど接触が無いために非常に恐縮した態度を取っているのだ。
 その中には、奴隷として売れ残りのような形で残っていた自分を引き上げてくれた、という念も多分に含まれてたりする。
 アンドレに押し出されて出て来たマーヤが、おずおずと話を始めた。

「男子と女子に分けて生活させることは出来ないでしょうか?」
 マーヤの提案に、考助はサッと顔を青くした。
 そう提案してくるという事は、何か問題が起こったのかと思ったのだ。
「ご、ごめん。全く考えてなかった。何か問題起こった?」
「い、いえ! 今は特に何も起こってません!」
 慌てて否定したマーヤに、考助は内心でホッと胸をなでおろした。
「それはよかった。だけど、そう言って来るってことは、何か問題が起きそうってこと?」
 生活の場を男と女に分けるということは、当然性に関わる問題を考えての事だ。
 人数が少なければ、そう言った問題も管理しやすいのだが、人数が増えればどうしても見逃しやすくなったりする。
 考助の言葉に、マーヤがコクリと頷いた。
「勿論それもありますが、他にもあります」
「他?」
「恋愛は自由なので構わないのですが、それを四六時中見せつけられるのは、他の者達にとって良くないかと」
 マーヤがそう言うと、考助はヒクリと頬を引き攣らせた。
「・・・・・・生活の場で?」
「生活の場で、ですね。というより、寝る直前の部屋に入るまでと言っていいでしょう」
 流石に今でも男女はある程度分けられて生活している。
 だが、成人している者が増えている現状、いわゆる個別の部屋にお泊りすることもあったりするのだ。
 それは特に禁止したりはしていない。
 だが、そう言った相手がいない者にとっては、とてもではないが良い環境とは言えない。
 そう言った話を聞いて、考助は頭を抱えた。
「生活の場に関しては任せっきりにしてたけど、そんなことになってたとは思わなかった」
 どう考えても良い状況とは言えない。
 これは、放置していた考助にも責任がある。
 問題が起こる前に報告に来てくれたマーヤに、感謝する考助であった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 二人の話を聞いた考助は、すぐさまピーチを呼んだ。
 男である自分だけで考えても抜けがあってはいけないと思ったためだ。
 事情を聞いたピーチは、フムフムと頷いている。
「なるほど~。ということは、結界でも張って男と女の生活スペースを区切るつもりですか?」
「そうだね。いっそのこと男子寮と女子寮に分けようかと。ついでにそれを管理する年長者も置いたほうがいいね」
「それでいいと思いますよ~。それぞれ異性の入寮は禁止なのですよね?」
「勿論」
 そうしなければ、折角男子寮と女子寮に分けた意味がない。
「ついでに、その辺りの事はピーチに一任したいんだけど、駄目かな?」
 今まですっぽりとその辺りのことが抜けていた自分が管理できるとは思えない。
 それだったら他の者に任せてしまった方がいい。
「構いませんよ~」
 ピーチがあっさりと了承したことで、大体の事は決定した。
 それに安心したアンドレとマーヤは、ホッとした表情で第四十七層へと戻って行った。

 それを見て考助はホッとした表情になった。
「・・・・・・何をやってるんだ、ほんとに」
 思春期真っ只中の男女を集めておいて、性に関わる問題に目を向けていなかったのはどう考えても手抜きとしか言えない。
 実害が起こる前に進言してくれたので事なきを得たが、下手をすれば一生のトラウマを植え付ける可能性もあった。
 落ち込む考助に、ピーチが声を掛けて来た。
「うーん。以前からそうだったのかはわかりませんが、少なくとも私が会った時からは、コウスケはそんな感じでしたよ~?」
 不思議なことを言うピーチに、考助は首を傾げた。
「そんな感じ?」
「性に関しての機微に疎いというか、鈍いという感じですね~」
 ピーチの言葉を聞いたコウヒが、同意するようにコクコクと頷いた。
「いや、それと危機管理は別だと思うけど?」
「いえ、そういう事ではなく~」
 ピーチは、どういえばいいのか悩むような顔になった。
 そのピーチに、コウヒが助言をするように言葉を加えた。
「主様は、性に関しては鈍いというよりも思考がそちら方面に向いていないと思われます」
「・・・・・・どういう事?」
 訳が分からず考助は首を傾げる。
「主様が男性であるからかは分かりませんが、性に対する危機意識というのがほとんど感じられません。もしかしたら以前の世界でも似たような感じだったのではないでしょうか?」
「いや、流石にそれはないと思うけど・・・・・・」
 いくら何でも性犯罪が全くない世界から来たわけではない。
 現に、男子寮と女子寮と言った概念があるのだからそのくらいの危機意識は持っていたはずだ。
 だが、確かに言われてみれば、この世界に来てからはそう言った方面での危機意識が乏しくなっていた感じはある。

「・・・・・・あれ? どうしてなんだろう?」
 考助はしばらく首を傾げるが、どうしても原因が思い当たらない。
 すっぽりとそういった部分が抜け落ちている感じなのだ。
 考助自身は、コウヒやミツキから始まって、ピーチ達にも手を出しているのに、不自然極まりない。
 どうしても自分では思い当たらなかったので、こちらの世界に来た際に何か欠落した可能性も考えて念の為アスラにも連絡を取ってみた。
 だが、返って来た答えは「否」だった。
 魂や記憶が変質したわけではないという答えが返って来た。
 だとすれば、これは一体どういう事なんだと考えるがやっぱりわからなかった。
 結局、いくら考えても原因に思い当たるようなことが無いまま、日々を過ごすことになるのであった。
何やらフラグっぽく終わっていますが、特に何か大きな要因があるわけではありません。
コウヒやミツキがいたために、そう言った方面での心配が無かった為に、徐々に薄れて行ったのと、神になったことで止めを刺した感じです。
一言で言えば、主人公体質(?)でしょうか?w
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