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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その5)

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(1)子供のいる生活(トワ三才、ミア二才)

ほのぼの回です。
 考助がくつろぎスペースでゆったりとお茶を飲んでいると、トワが不思議そうな顔になって聞いてきた。
「ととさま、これ、なーに?」
 目をいっぱい見開いて聞いてきたトワに、考助は目を細めて頭を撫でた。
「これか? これは緑茶・・・・・・クトゥールという飲み物だよ」
「リョクチャ? クトゥール?」
 二つ名前を言った考助に、不思議そうな顔をして首を傾げるトワ。
「どちらでも合っているんだよ。僕は緑茶の呼び方でなじんでるからね」
「ふーん」
 考助の説明で分かったのか分かっていないのか、トワはどちらとも取れる返事をする。
 それよりも、緑茶が気になるのかすぐに湯呑へと視線を向けた。
「飲んでみたい! いーい?」
 先ほど考助が飲んでいる所を見ていたので、飲み物だという事は分かっている。
 父親が飲んでいる飲み物に興味を示したようだった。
「いいよ。でも、ちゃんと小さい湯呑にいれるからちょっと待ってね」
「はーい」
 トワが返事をするのを見たミツキが、子供用の湯呑に新しく緑茶を入れた。
 クリストフ王太子が、子供が出来ていることを知っていてきちんと送ってくれたのだ。

 ミツキが緑茶を入れているところを、トワはじっと見つめていた。
 普段城にいるときは、自分の目の前で準備がされることが無いので、そうした作業が珍しいのだろう。
 そうこうしているうちに、ミツキが緑茶の入った湯呑をトワに差し出した。
「出来たわよ。熱いから気を付けてね」
「うん!」
 元気よく返事を返したトワは、ワクワクするようにミツキが置いた湯呑を持ちあげようとした。
「アッツ・・・・・・くない?」
 一瞬だけ湯呑を触ってビクッとトワだったが、すぐにまた同じように湯呑を触って首を傾げた。
 子供であるトワが飲むことがわかっているので、ミツキはあらかじめ火傷をしないような温度で入れたのだ。
 湯呑を持ったトワは、先ほどの考助と同じようにフーフーと息を吹いてから慎重にお茶を飲んだ。
「・・・・・・んー?」
「どうだ?」
 口に含んで首を傾げるトワに、考助が笑いながら問いかけた。
 コクンと飲み込んでから少しだけ驚いたような表情になってからニッコリを笑った。
「口の中の甘いのが消えた!」
 今度は、それを聞いた考助が驚いた。
 ミツキがお茶を入れて待っている間、トワは用意してあったお茶菓子を食べていた。
 具体的には饅頭のような物だ。
 トワはその餡子の甘味が、お茶によって打ち消されたのをきちんと感じ取っていた。
 勿論この世界にも、緑茶以外の飲み物はある。
 だが、基本的には果汁のような甘味で後味に甘味が残ったりするのが普通だ。
 緑茶にはそれが無いことを、トワはきちんと理解できたようである。

「おお。それがわかるとはすごいな。じゃあ、もう一回これを食べてごらん?」
 考助はそう言って、饅頭をトワに差し出した。
「・・・・・・さっきより甘いよ?!」
 トワが驚いたような顔になった。
「そうだろう?」
 トワがきちんと分かってくれて、考助は笑顔になった。
 勿論、緑茶を飲んだ後に甘味が増すように感じるのは個人差があるのだが、トワはしっかりと感じ取っていた。
 実際には饅頭の糖度が増しているわけではなく、舌の上での錯覚なのだがこうして甘味を楽しむのも一つの方法なのだ。
「・・・・・・本当なのか?」
 二人のやり取りに興味を持ったのか、先ほどから会話を聞いていたフローリアが考助から湯呑を奪ってお茶を飲んだ。
 口に含んだものをコクリと飲んでから、お茶の渋味に顔をしかめる。
「よくわからんな」
「おいしーよ?」
 フローリアの反応に首を傾げたトワの頭を撫でながら、考助が笑って言った。
「確かあそこの王太子も言ってたと思うけど、慣れてないと最初はどうしても渋味を感じ取っちゃうからね」
「そんなものか?」
 フローリアはそう言って、もう一度饅頭をパクリと食べた。
「そんなものだよ」
「そんなものー」
 考助の言葉を後追いするように、トワが嬉しそうに声を上げた。
 母親であるフローリアが、味が分からない物を自分が飲めることに喜んでいるらしい。
「そうか」
 そんなトワの様子に、フローリアは苦笑を返すのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 緑茶を飲みほして満足したトワが次に興味を向けたのは、考助の傍で寝そべっているナナだった。
 赤ん坊のころから傍にいる狐達と違って、狼の姿は珍しいのだ。
 考助に会いに来ているときにナナがいれば会えるくらいなので、トワにとって狼は珍しい存在なのだ。
 既に何度も会っているので、怖がる様子は見せていない。
 初めて会ったときは、大型犬くらいの大きさだったため怯えた様子を見せていた。
 もっとも、その後はすぐに慣れてしまったのだが。

「なーな、遊ぼう!」
 そう言って手を近づいてきたトワを、ナナはプイッと避けた。
 勿論、ワザとだ。
 案の定、トワは「むーっ」と唸ってナナを触ろうと手を伸ばす。
 更にナナはその手を避ける。
 それを繰り返すうちに、いつの間にか鬼ごっこになっていた。
 当然、追いかける方はトワで、追い掛け回されるのはナナだ。
 くつろぎスペースをバタバタと二つの個体が走り回る。
 流石にうるさいと注意する者は、ここにはいなかった。
 存分に遊べば静かになることを分かっているためだ。
 何より管理層には、子供が存分に走り回れるスペースなど他に無いのである。
 結果として子供たちが来た時は、くつろぎスペースが子供の駆け回る場所として早変わりするのである。
 ちなみにナナは、歩けるようになったミアにぶつかったりしないようなコースをしっかりと選んで走っている。
 ミアの傍にいる狐達も同じように警戒していたりする。
 それがわかっているので、考助たちは注意をすることが無いのだ。

 自分に近づいてきたミアを抱き上げた考助は、嬉しそうな表情になった。
「ミアは、また大きくなったな」
 トワもそうだが、会うたびに大きくなっている。
 毎日会えるわけではないので、そのたびに実感しているのだ。
「あい!」
 そう言って嬉しそうに手を上げたミアに、考助は目を細めた。
 二歳になったばかりのミアは、順調に話せる単語を増やして行っているようで、最近は複数の言葉を組み合わせて話せるようになっている。
 トワもミアも種族的にはヒューマンの上位種に当たるのだが、成長に関しては特に目立った違いは無いようだった。
 幼少期の成長はヒューマンと同じで、それ以降は緩やかに成長していくのか、あるいは二次性徴を終えたあたりで成長がストップするのかが分からないので油断は禁物だが。
 少なくともヒューマンと違うような成長になるのであれば、エリスあたりが知らせてくれるだろうと楽観している。
 勿論、普段子供たちに多く接している乳母たちにもその辺りはきちんと観察するように言い含めてある。
 乳母たちには、父親が誰であるかきちんと話した上で、親が神であることの特別扱いはしないようにと注意している。
 子供の成長に良くないと考えての事なので、その辺りをきちんと理解できる者を選んでいるのだ。

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 遊び疲れてトワもミアもお昼寝タイムに入っている。
 傍ではしっかりと狐達が同じように寝そべっているので、何かが起これば知らせてくれるだろう。
 彼らはトワたちが生まれてからずっとしっかりと子守りを続けてくれているのだ。
「眠ったか」
「久しぶりに父親に会えて、はしゃいだようだな」
「そうなの?」
「うむ」
 眠る我が子を穏やかな表情で見つめながら、フローリアは頷いた。

「・・・・・・すまないな」
 唐突に謝罪したフローリアに、考助は目をぱちくりとさせた。
「突然、何?」
「本来なら一緒に育ててあげられればいいのだがな」
「それはきちんと話し合ったじゃないか。子供たちの成長のためには仕方ないって」
 神である考助がフローリアたちと同じように、城で生活するわけには行かない。
 考助が常時城にいると、どうしても城で働いている者達が考助に対して、子供たちにとっては良くない態度を取ってしまう可能性がある。
 それが子供たちの成長にどう影響するのかが分からないのだ。
 それなら最初から考助は城にいない方がいいという結論になっていた。
 その話は、子供が生まれた時から考助も納得しているのだ。
「そうなのだが、こうしてはしゃぐ姿とみると、な」
 フローリアはフローリアで今日の子供たちの姿を見て色々思う事があったらしい。
「子供たちをここで育てるわけには行かないんだから仕方ないよ。それに、時間を見つけてはこうして来てるんだから大丈夫だよ」
「・・・・・・うむ」
 複雑な表情で頷いたフローリアに、考助は唐突に唇を合わせた。
「な、何を!?」
「子供の前で、そんな表情はしない方が良いよ、お母さん?」
 からかうように笑う考助に、子供二人も生んでいても未だ不意打ちに慣れていないフローリアは顔を赤くするのであった。
お茶の味に関しては個人差という事で、御承知ください。
子供であるトワがそこまで細かい味を感じ取れるかどうか微妙ですよね?w

ちなみに、この時点でシルヴィアとの子供であるココロも生まれていますが、まだ乳幼児という事で、管理層には来ていません。
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