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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 スミット王国

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(1)四年間の出来事

説明回です。

今話からスミット王国編がスタートです。
スミット王国の王太子の話がメインなので、主人公たちはしばらく出てきません。
 クリストフは、一日の予定されていた執務を終えてホッと一息ついていた。
 未だ王太子の身であるクリストフは、さほど過剰な仕事は割り振られていないため基本的に時間は余るように出来ている。
 その代わりに、勉学や武術等を学ぶための自由時間なのだ。
 とはいえ、四年ほど前から父王と一緒に取り組み始めたある取引は、現在ほぼクリストフに任せられている。
 それが何かというと、スミット国にとっての非常に重要な存在であるフリエ草の取引だ。
 フリエ草は、スミット国が存在する南大陸において発生するある病の特効薬に使用する薬草なのだ。
 病自体は遥か昔から存在していて、さらに特効薬も存在しているのだが、ある問題によって四年前まで非常に厄介な状態になっていた。
 その問題と言うのが特効薬に使用されるフリエ草が、クリストフの国であるスミット国でしか取れないということだ。
 スミット国は、南大陸においては一小国の一つでしかない。
 それにもかかわらず、フリエ草の存在があるために大陸内においてはそれなりの影響力があった。
 普通であれば、フリエ草が取れる産地を強国が奪っていてもおかしくない状態なのだが、ことフリエ草だけに限っては強行手段に取る国家が無かった。
 理由は単純で、過去においてスミット国と同じようにフリエ草が採取できていた小さな国家が強国に攻め込まれた途端に、採取が出来なくなった事がある。
 それが一度だけなら強国たちも諦めはしなかったのだろうが、攻め込まれると必ず無くなるとなると話が変わってくる。
 フリエ草が取れなくなった理由は様々推測されているが、現在でもよくわかっていないのだ現状だ。
 強国に攻め滅ぼされた国が消滅すると同時に取れなくなったり、そもそも採取量が少ない所に密猟者たちが根こそぎ奪ったりと様々な要因がある。
 それでも百年ほど前までは、かろうじて数か国で採取が出来ていた。
 残った国は、それぞれ周りに強国で囲まれていて、自国のために保護されていたために他の国に攻め込まれることなく何とか残っている状態だった。
 それにもかかわらずフリエ草は次々と採取が出来なくなり、最後に残ったのがスミット国だったという事になる。
 何故かスミット国だけは、ほとんど採取量を減らすことなく採取をすることが出来ている。
 とは言え、流石に大陸中の全ての患者に薬を与えることが出来るほどの量が採取できるわけではない。
 そうなると、他国との政治的な駆け引きが発生するのは当然の事だった。
 さらに言うと、スミット国を囲んでいる国家がそれぞれ強国であり、フリエ草の重要性を認識していたために、お互いが牽制をし合って間にいたスミット国は何事もなかったというのもある。
 それらの国々の存在が、スミット国が生き残る遠因となったともいえるのだ。
 それを生かしてスミット国はこれまで何とかうまく立ち回って来た国なのだが、それでも限界はある。
 何とか採取量を増やそうと奮闘したが、どうしても上手くいかなかった。
 様々な手段を使って他の大陸でも取れないかと方々を探し回ったり懸賞を掛けたりしたが、全く改善することは無かった。

 そんな状況に光が射したのが、四年前の事だった。
 噂に聞いていた塔を拠点にしたクラウンと言う組織が、フリエ草を塔の中で発見したと報告して来たのだ。
 すぐさまスミット国は文官を派遣した。
 何度も似たような報告をされていたために、この時の上層部はほとんど期待していなかった。
 だが、調査に行った文官が慌てて帰国した際に、震える声で「本物でした」と報告してきたことによって、国の上層部は大いに慌てることになった。
 すぐさま対策チームが作られた。
 当然そのトップに立ったのは、アッサール国王だった。
 それほどまでに、スミット国にとってはフリエ草は重要な生産物なのだ。
 クラウンが提示して来たフリエ草が間違いなく本物だと確認されたあとは、とんとん拍子に話がまとまって行った。
 当時のセントラル大陸には国は存在していなかったので、取引相手はそのままクラウンと言う組織だった。
 後に行政府が作られてその行政府が交渉の相手となったが、内容としてはクラウンと結んだ物と同じものがそのまま引き継がれたのだ。

 スミット国としては、フリエ草から作られる薬を独占するつもりはない。
 南大陸において、その薬の存在はあまりにも影響力が大きすぎるので、出来ることならその力を分散させたかった。
 過去の例からフリエ草の産地が無くなることになり兼ねない武力による国の制圧は、無いだろうという見通しもあった。
 南大陸で発生する病なのに、薬の元になる薬草が全く取れなくなってもいいと考える愚かな国家は、南大陸には存在していないのだ。
 例えあったとしても、周辺国家にまとめて潰されるのが落ちなのだ。
 そういうわけで、スミット国としては好きに売っていいと話を持ち込もうとしたのだが、逆にクラウン側がそれを辞退した。
 表向きの理由は、販路が無いためスミット国に任せたいという理由だった。
 だが、本当の理由としては、相手が国家なので一組織として取引したくないというのが本音だった。
 そのことを、クリストフは父王であるアッサールから苦笑いと共に聞いた。
 クラウン側としては、スミット国を南大陸の他の国からの盾にしたのだ。
 スミット国側としても、独占できるのであればそれはそれで問題ないのだ。
 快くとまでは行かないまでも、クラウン側が提示して来たスミット国だけと取引をするという条件を飲んだ。
 条件と言っても、単に取引相手としてスミット国だけを指定するので、他の国から取引を依頼されても断りますよ、という物だったが。
 その他は、普通の商取引と何ら違いが無い物だ。
 対策チームは、予想以上にあっさりと交渉を終えて、国に戻ってくることになったのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 セントラル大陸にラゼクアマミヤという国家が出来てからも基本的な関係は変わらなかった。
 取引量などを決めるのは国家同士の役目だが、流通に関してだけはクラウンが担っていた。
 正確には、ラゼクアマミヤがクラウンに輸送を依頼しているという形だ。
 取引を始めた頃からラゼクアマミヤは、少しずつ取引量を増やしてきているが、それでも流石に南大陸全体に行きわたらせるほどの量ではない。
 取引を始める前よりはまだましな状況にはなったのだが。
 数年間の取引の間に大きく変化したのは、スミット国側の責任者がアッサール国王からクリストフに変わったことだ。
 クリストフは次代の王なので、今後も取引を続けるであろうラゼクアマミヤとの関係を任せたいとアッサール国王が考えたのだ。
 とはいえ、それはあくまでもスミット国側の事情で、ラゼクアマミヤ国が国王から王太子に移管したことで重要視していないのだと思われる可能性もあった。
 だが、そんなスミット国側の懸念は杞憂に終わり、あっさりとクリストフへの責任者の変更が許可された。
 結果として、クリストフはラゼクアマミヤを相手にする場合の最高責任者となっている。
 ほぼ父王の手からは離れていると言って良い程に、決裁権を渡されていた。
 クリストフは、ラゼクアマミヤを相手にするときに限っては、ほぼ国王と同等の権限を有しているのだ。

 クリストフが権限を国王から移譲されてからさらに大きなことが起こった。
 セントラル大陸以外の大陸に、世界中で初となるクラウンの支部がスミット国の首都に設置されることになったのだ。
 クラウンから密かに打診されてから、驚愕しつつもスミット国内部でも色々な角度から検証された。
 当然ながら色々な問題点も出て来たが、それは個々に対処できる問題であった。
 根気よくクラウン側と話し合いを続け、それぞれで妥協点を出しつつようやく正式に支部が出来たのは、つい先月の事である。
 その際には大々的に国内で発表がされて、歓迎ムード一色だった。
 勿論、そうなるように根回しもしたのだが、もともとクラウンがフリエ草を運んでいることを知っていた国民は受け入れる下地があった。
 普通の平民もそうだが、フリエ草に関わる様々な利権を握っている貴族たちもクラウン支部の設置を歓迎したのであった。
スミット国における四年間の流れを説明したら会話なしで終わってしまいました。
本格的な話が始まるのは、次話からになります。
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