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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その4)

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(7)再利用型魔力石

 考助の目の前には一つの魔道具があった。
 かなり以前から研究を続けて来たのだが、中々思うように改良ができなかった魔道具だ。
 作ろうと思い立ってからかなりの年数が経っているのだが、ようやく最近になって形になった。
 現在は最終段階のチェック中だ。
 考助は右手に持った魔力石を魔道具へとはめ込んだ。
 丁度魔力石と同じ大きさのくぼみに、ピタリとはまった。
 それを確認してから、魔道具を起動するためのスイッチを入れた。
 ブオンとかすかな音を立ててその魔道具は、目論見通りに起動した。
 起動したまま数十秒ほど待ってから、魔道具の手前側をパカリと開ける。
 中は空洞になっていて、その空洞に手を突っ込んだ。
 空洞に突っ込んだ手には、しっかりと冷たい空気が吹き込んでいた。
 それを確認した考助は、ニンマリと笑った。
 目的通り起動できたようである。
 今、考助の目の前にある魔道具は、まぎれもなく冷蔵庫なのであった。

 考助としては冷蔵庫として認識している魔道具だが、実はこの世界初の魔道具ではない。
 考助が作る前から元々魔道具として存在していた。
 だが、例によって照明器具と同じように非常に高価なもので、一般家庭に広く普及している物ではなかった。
 大きさで言えば一人暮らし用の冷蔵後と同じくらいの物で、ごく平均的な家庭の収入の十年以上の金額がかかる値段なのだ。
 一般家庭どころか、一流どころの料理屋でも使用している所はほとんどないというありさまだった。
 それを知った考助が、せめて年収くらいの値段まで落とせないかと色々頑張った結果が今目の前にある魔道具なのである。
 構想を思いついてから既に三年を超える時間が経っている。
 シュミットにしてみれば、次々と新しい魔道具を作っているイメージだが、実際は長い間上手くいっていない物の方がほとんどなのだ。
 他にも思いついてはいるが、上手くできていない魔道具はいろいろある。
 改良型冷蔵庫は、その中の一つだった。
 目論見通り上手くいったのが、今目の前にある完成品という事になる。

 途中で不具合が起こらないかを確認するために、数日だけ様子見の期間を置いた考助は、冷蔵庫普及のためのメンバーを集めるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 管理層の会議室に、考助が招集をかけたメンバーが集まっている。
 今回は考助が色々と仕掛けを仕込んでいるので、シュミットだけを呼ぶわけには行かなかったのだ。
 考助の目の前には、ラゼクアマミヤ王国からフローリアとアレク、クラウンからはシュミットとダレスが来ていた。

 魔道具を持った考助が入って来たのを確認して、まずはフローリアから切り出した。
「新しい魔道具を開発したという話だが、私達を呼んだ理由は何だ?」
 これまで考助が作った魔道具は、全てクラウンが一括して請け負っていた。
 それにラゼクアマミヤが国として関わったことは無い。
 関係しているとすれば、クラウンから払われている莫大な税金くらいだろう。
「まずはその説明をする前に、魔道具から話をしていいかな? その方が分かりやすいから」
「わかった」
 考助の答えに、フローリアも素直に頷いた。
 忙しいことは確かだが、考助が意味もなく呼ぶことはないと分かっているのだ。

「まずはこの魔道具についてなんだけど、流石に何に使う物かはわかると思う。元々ある物だし」
 そう言って、魔道具をダレスの方へと差し出した。
 しばらくその魔道具を見ていたダレスだが、冷蔵庫の扉を開けて中が冷えているのを確認してから納得したように頷いた。
「冷却保温室ですな」
 冷却保温室と言うのは、この世界においての冷蔵庫の呼び名である。
「ですが、ずいぶんと小さいようですが?」
「ああ。小さいのは特に意味はないよ。実験用に作りやすい大きさにしただけだから」
 考助の言葉に、ダレスはなるほどと頷いた。
「コウスケ様が、普通の冷却保温室を出すはずがないですね・・・・・・という事は、照明の時と同じですか?」
 シュミットが過去にあった照明の魔道具を開発した時のことを持ちだした。
 安価な照明の魔道具が出来たために、現在では、中間層程度の家庭には一つくらいはその魔道具が設置されるまでになっている。
「一言で言えば、そういう事かな? ただ、今回はそっちがメインの話じゃないんだ」
 考助はそう言って、冷却保温室の背面から一つの魔力石を取り出した。
 その魔力石を渡されたダレスは、訝しげに首を傾げた。
「これは?」
 ダレスが見ても普通に使われている魔力石とほとんど違いが無いように見える。
 そして、考助の次の言葉で、その場にいた全員の顔色が変わった。
「再利用が出来る魔力石だよ」

 魔力石と言うのは、基本的には込められている魔力が無くなってしまえば終わりの使い捨ての道具である。
 貴族や豪商の家の家電(?)で使われている物は、魔力が減ってきたのを見計らって補充することは可能なタイプの物だが、ほとんどが一体型で取り出したりすることが出来ない上に、作成するのに手間がかかるのと希少な素材を利用しているために非常に高価なのだ。
 普通の魔力石は鉱石と同じように、鉱脈から掘り出したり自然に発生している物を採取して魔道具の素材としている。
 あるいは、魔力が濃い場所に数年単位で置いておくことによって魔力が溜まるのを待つかだ。
 そうした魔力石の存在があるために、基本的に魔道具は高価になる。
 考助が作った安価な照明は、魔力石を使っているわけではないので、これも安価になっている理由の一つなのだ。
「・・・・・・どういうことでしょうか?」
 シュミットが慎重に、考助に問いかけた。
 場合によっては、照明の時以上のインパクトを与えることになる。
「簡単に言えば、空になった魔力石にもう一度魔力を込めてさらに使うことが出来る魔力石かな。勿論、その魔力石が使える魔道具でしか使えないけどね」
 予想通りと言えば予想通りの答えに、その場の全員が感嘆のため息を吐いた。
 新たに採掘をしたり、長期間放置をしなくても済むとなると大幅にコストが削減できることは、容易に想像が出来るためだ。
 そんな周囲の様子を見て、考助はさらに続けた。
「ただ、この魔力石にはちょっとした細工をしてあるんだ」
「細工?」
「そう。その細工がフローリアたちを呼んだ理由」
 首を傾げたフローリアに、考助がニヤリと笑った。
「この魔力石に魔力を込めるというのが、特定の条件を満たさないと出来ないようになっているんだよ」
「特定の条件・・・・・・という事は」
 フローリアはハッとしたように顔を上げた。
 他のメンバーも考助が言いたいことを察して、納得したように頷いた。
「そう。大体察していると思うけど、この魔力石を王国の、というより王族の特産品にしないかと思ってね」
 空になった魔力石を回収して、再び魔力が入った魔力石を再利用できればかなり費用が抑えることが出来る。
 逆に言えば、この魔力石が無ければ魔道具は動かないことになる。
 考助としては、規格を一定の物にして、他の魔道具でも使えるようにするつもりだ。
 簡単に言えば、充電式の電池と同じような役目を持たせるつもりなのだ。
 その魔力石を王族が独占すれば、王族の収入源としてかなり安定したものに出来る可能性がある。

「そういう事なら喜んで、と言いたいが本当に良いのか?」
 フローリアは、ちらりとシュミットへと視線を向けた。
「構いませんよ。王国として特産品の一つもないのは気になっていましたから」
 クラウンが出している塔からの特産品は、かなりの量になってきている。
 だが、それはあくまでもクラウンの商品であって、王国として出しているわけではない。
 勿論、そこから税金は払われているのだが。
 建前上は国家の中にある一つのギルドでしかないが、影響力としては既に他の大陸に効果を及ぼしている以上、クラウンの方が上なのだ。
 クラウンが王国から一定の距離を置いた時のことを考えれば、特産品の一つでも持っていないと王国の影響力は格段に落ちることになる。
 もっとも、クラウンの特産品のほとんどが塔からの素材を元にしている以上、今の関係が崩れることを考える方がほぼあり得ないのだが。
 それはともかくとして、国家としては何も持っていないよりは何かを持っていたい方が良いのだ。
 そう言う意味で、考助の提案は非常にありがたいという事になる。
 それに、そもそもこの魔力石を使う魔道具自体は、間違いなくクラウンが扱うことになるのだ。
 塔を所持している王国との関係を考えれば、魔力石についての権利を譲ることは何ら問題がないのである。

 この日の話し合いで、魔力石の取り扱いに関しては、ラゼクアマミヤ王国が扱うことになった。
 この再利用型魔力石を初めて装備した冷却保温室は、安価なこともあり照明と同じように瞬く間に広まっていくのであった。
電池の開発でしたw
どちらかと言えば、充電型の電池ですね。
今までの魔力石は、本文でもあったように、自然発生、鉱石でしか入手手段がありませんでした。
モンスターはドロップしません。
神能刻印機に使われている物とも全く別物です。

(注)魔力がこもった素材はあります。
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