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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 旅(セントラル大陸編)

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(8)息抜き

 商隊のいる拠点へと戻った考助達をまず出迎えたのは、モンスターの襲撃が終わったため様子を見に来たバート達だった。
「おい、どうなった?」
 そのバートの問いは、考助ではなくレイラだった。
 別にこれは考助を無視したわけではなく、単に付き合いの長いレイラを優先しただけだ。
「リーダー種もその周りにいたモンスターも倒したわ」
 対するレイラは、リーダー種が番だったことをわざとこの場では伝えなかった。
 バートだけではなく、他の冒険者がいたために情報を伏せたのだ。
 番のリーダー種など、少なくともレイラは聞いたことが無かったため普通に噂として広めていいのかどうかの判断がつかなかったのだ。
 そんな事情を余所に、レイラの返答を聞いた冒険者たちは歓声を上げた。
 そもそも商隊の護衛だけで、リーダー種を含めたモンスター群を討伐できるとは思っていなかったのだから当然だろう。
 事実はそれ以上の事をやってのけたのだが。
「そうか。ご苦労だったな。ひとまず拠点に戻ろう」
 バートも取りあえずはそう返答をした。
 ただ、レイラとの長い付き合いで、彼女が何かを含んで答えていることも察している。
 それが、この場では言えないことだという事もだ。
 そのためまずは拠点に戻って落ち着くことが先決だと判断したのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 拠点の中央にある天幕に向かった考助達は、厳しい表情をしたカールに出迎えられた。
「どうなりましたか?」
 カールはレイラではなく、直接考助に問いかけて来た。
 ガゼランとの打ち合わせ時にはカールもいたので、考助達がリーダー種に向かう事も知っているのだ。
「討伐しましたよ」
「そうですか」
 簡潔な考助の答えに、カールは一つ大きなため息を吐いた。
 勿論、安堵したためだ。
「・・・・・・正直に言って、諦めてましたよ」
「ハハハ。こうして無事なんですから、取りあえず喜びましょうよ」
 考助の気楽な返事に、カールもクスリと笑った。
「そうですね」
「それはともかくとして、部門長も結果を待っているでしょうからまずは報告をしませんか?」
「ああ、そうですね。では、こちらへどうぞ」
 考助に言われてようやく思い出したのか、カールはハッとした表情になり、すぐに天幕の中へと入った。

「おう。連絡して来たってことは、討伐は終わったか?」
 考助が通信具を使ってガゼランに連絡を取った時の第一声がこれだった。
 ガゼランは、最初から討伐に失敗するとは思ってもいなかったのだ。
「終わりましたよ」
「おう。ご苦労様。んで、商隊はどうなった?」
 もし被害があるとすれば、考助達が逃したモンスターの襲撃を受けて商隊に被害が出るだろうと考えていた。
 商隊に関しては、考助も被害はわからない。
 考助は、視線をバートへと向けた。
「冒険者に重傷者が何名かと軽傷者が出たくらいで、荷物への被害は受けていない」
「そうか。それは上々だな」
 こちらの回答を聞いて、ガゼランも安心したようだった。

 その後は、今後の予定も含めてシュミットを交えて細かい打ち合わせを行った。
 冒険者が受けている被害があるために、即日移動を開始するのではなく二日待って翌々日に北の街へ向けて移動することが決まった。
 元々商隊自体は、遅れることも考慮に入れているので食糧などには問題はない。
 重傷者がいると言っても、すぐに町に戻らなくてはならない者がいるわけではないので、二日後に出発となったのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 打ち合わせが終わった後で、ガゼランは主要なメンバーを呼び止めた。
 現在天幕に残っているのは、考助達とカール、バートとレイラだ。
「それで? 実際はどうだったんだ?」
 いきなり考助に向けて、ガゼランがそう聞いてきた。
 カールとバートは首を傾げている。
「あら。わかったんだ?」
「当然だろ? 何年の付き合いになると思っている」
 ガゼランは、先ほどのやり取りで考助が含みを持たせていたことに気付いていた。
 はっきりとその場で言わなかったことから、何かがあったと分かったのだ。
 ついでに、考助の口調が今までと違っていることにもきちんと気づいている。
 現人神であることを明かすわけではないが、それなりの立場にいることをこの場に居る者に示したのだ。
 現に、それに気づいたカール達は、驚いた表情になっていた。
 もっとも、リーダー種の討伐を間近に見ていたレイラは、それも当然だろうと納得していたが。

「それもそうか。それはともかくとして、リーダー種だけど番で二体いたよ」
 その報告には、ガゼランも即答してこなかった。
 過去、確認されている中では、リーダー種が二体同時にいたということは無かった。
 しかも今回は、二体いただけではなく番だったのだ。
 ガゼランでなくとも驚くだろう。
 同じように初めてその報告を聞いたカールとバートは息を飲んでいる。
「・・・・・・それで、二体とも倒したんだな?」
「それは勿論」
「それはよかった」
 ガゼランは考助が討伐を失敗したとは、微塵も疑っていない。
 考助達が討伐に失敗するとすれば、他の誰にも討伐は出来ないだろうとさえ考えているのだ。

「そ、そんなまさか・・・・・・」
 リーダー種が番だったと聞いて、バートが茫然と呟いた。
 だが、その隣にいたレイラが首を左右に振った。
「残念ながら本当の事よ。それに、討伐が終わっているのも」
 レイラの答えを聞いて、バートが息を飲んで考助達を見た。
 今更ながらに、考助達の実力を思い知ったのだ。
 いや、自分達のはるか先にいることがわかっただけで、正確にどのくらい離れているかまでは理解できていない。
 リーダー種一体だけであれば、まだ過去に討伐されたこともある。
 集団戦だけではなく、後に英雄と言われた冒険者もいる。
 そう言う意味では、一体だけであればまだ常識の範囲内であっただろう。
 何しろそうした英雄たちを目標に、冒険者たちは日々鍛えているのだから。
 ところが、考助達はそれ以上の事を成し遂げてしまったのだ。
 番であるという事は、通常のモンスターでもかなりの連携が出来るのだ。
 その事から考えれば、リーダー種で番となると相当の力を発揮していたと想像が出来るのだ。
 実際には、連携させる隙さえ与えなかったのだが。
 レイラも敢えてそのことは告げなかった。
 実際に見て参加していた自分でも未だに信じられないのだ。

 そんな二人の思いを余所に、考助とガゼランの会話は続いていた。
「リーダー種は持ち帰っているか?」
「勿論」
 ガゼランは、考助達がアイテムボックスの魔道具を持っていることを知っている。
 わざわざモンスターの死体を置き去りにするとは思っていなかったが、一応確認した。
「ちゃんと持ち帰ってきてくれよ。立派な研究対象だからな」
「分かっているよ」
 リーダー種に限らず、珍しいモンスターは冒険者部門の研究対象になる。
 どんな素材に使えるかという事から始まって、どういった生態をしているのかという事までだ。
 実際にその研究で、討伐に役立っているのだから希少なモンスターは冒険者部門にとっては、非常に貴重なサンプルなのだ。
 今後の為にも、ガゼランとしてはどうしても確保しておきたかった。

「今回のリーダー種はクラウンで預かるという事で問題はないか?」
 ガゼランの質問に、バート達も同意した。
 そもそも討伐をしたのは考助達なのだから、その権利は考助達にある。
 もし権利を主張できるとすれば、攻撃に参加していたレイラにはその権利があるが、ほとんど役に立っていないと思い込んでいるので辞退していた。
 ただ、流石にそれは駄目だろうという事で、考助がいくらかの金銭を分けることになったのである。
 そうしたいくつかのことを決めて、今回の氾濫については無事に終息を迎えたのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 バートは今回の件を報告するために、クラウン本部のガゼランの部屋を訪ねていた。
「運が良かったのか悪かったのか微妙な所だが、被害が大きくなくてよかったな」
 ガゼランはそう言って来たが、バートとしても全くの同意見だ。
 死者が一人もなしで氾濫を抑えることが出来たのは、僥倖以外の何者でもない。
 笑ってこちらを見てくるガゼランに、バートは思い切って聞いてみることにした。
「あいつらは・・・・・・彼らは一体何者なんです?」
 この質問は、ここに来るまでどうしても聞きたくて聞けなかったことだ。
 ガゼランは、バートをじっと見つめた。
「それを聞いてどうするんだ?」
「あれは・・・・・・俺は話を聞いただけだが、あいつらは普通じゃない。なんであんな奴らが、無名でいるんだ?!」
 リーダー種をけが人も出さずに討伐できるような実力者がいるのであれば、噂で広まっているのが普通だ。
 だが、バートはそのような実力を持つような冒険者パーティの話は聞いたことが無かった。
「簡単な話だ。あいつらは普段は冒険者として活動していない。今回は、ちょっとした息抜きのつもりで護衛に参加してたんだ」
 ガゼランの口からとんでもない言葉が飛び出して来た。
「息抜き・・・・・・」
「まあ、ああいう実力者がいるという事が知れただけでもよかったと思っておけ」
 ガゼランの言葉は、それ以上は話すことがないないと突き放していた。
 それを聞いたバートもこれ以上の追及は無理だと理解して、ため息を吐いて頷くのであった。
バート呆然回でした。

これで、一連の話は終わりになります。
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