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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 旅(セントラル大陸編)

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(7)決着

 リーダー種のヘイトホースを追いかけた先には、同じリーダー種のヘイトホースと二十体ほどのモンスターがいた。
「そんな・・・・・・」
 考助達と一緒に付いてきたレイラが絶望的な声を上げた。
 リーダー種のヘイトホース一体を討伐するだけでもかなりの難易度なのだ。
 そもそも考助達だけで討伐できるとも考えていない。
 勿論、コレットの術を見てからは何とかなるのではないかと考えていたのだが、ヘイトホースが番だったのは完全に想定外だった。
 当然ながら偵察の報告でも番であるという報告は無かった。
 この後はどうするのだろうと、レイラは考助を見るのであった。

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 考助は考助でどうするべきか悩んでいた。
 本来であればある程度ヘイトホースを怒らせたうえで、商隊の拠点まで戻って全員で討伐する予定だったのだが、完全にその予定が狂ってしまった。
 かといって、このまま番のヘイトホースを放置するわけにもいかない。
 片方のヘイトホースはいくらかダメージを与えている。
 もう一匹のヘイトホースと合流したのは、そのダメージを回復するためだろう。
 このまま二匹のヘイトホースを放置しても追ってこないだろうという予感はしているのだが、先の事を考えると番のヘイトホースを放置するのはまずい。
 そこまで考えた考助は、結局この番のヘイトホースを討伐することに決めた。

「ナナ! 一体は任せた!」
「バウ?」
「ああ。好きに倒していい」
「バウ!」
 考助が了承するとナナが嬉しそうに返事をした。
 実力を隠さなくていいと言うのを理解したのだ。
「コレット。まずは、周りにいるのを弾き飛ばして!」
 レイラが傍にいるが、既に偽名で呼ぶのは止めた。
 番のヘイトホースを倒すことを決めた時点で、少なくともレイラ相手に隠すことを諦めている。
 咄嗟の指示の時に間違えてしまうのが危ないということもあるためだ。
「わかったわ」
 コレットは返事をするなりすぐさま精霊たちに指示を出した。
 その指示に従って精霊が爆発を起こした。
 それだけで倒れるわけではないが、少なくともヘイトホース以外のモンスター達はかなりのダメージを負っている。
「レイラさん、済まないけど周りのモンスターの討伐に協力して」
「わ、分かったわ」
 突然指示を出し始めた考助を見ていたレイラは、自分にも指示が来て多少焦った様子を見せた。
 といってもそこは高位の冒険者だけあってすぐに、指示に従った。
 ピーチは、考助の指示なしにナナが向かっていない方のヘイトホースの気を引きつけていた。

 考助とピーチの二人でヘイトホースの一体をけん制しつつコレットとレイラが加わるのを待つ。
 ピーチが盾になっているわけだが、見事にヘイトホースの攻撃を躱している。
 考助は、風の妖精の力を借りて精霊魔法を当てていた。
 そんなことをしている間に、周りにいたモンスターを片づけ終わったのか、コレットとレイラが加わって来た。
「お待たせ!」
 流石に二人分の精霊魔法を食らう余裕はないのか、ヘイトホースは懸命にその攻撃を躱している。
 そうすると今度はピーチの攻撃が当たるようになってきた。
 加えて近接のレイラもいるので、徐々にヘイトホースに傷が増えてくる。
「これでお終い~」
 考助とコレットが放った魔法をヘイトホースが躱した隙に、ピーチが近づきその首筋に短剣を走らせた。
 持っているのは短剣なので、首を斬り飛ばすわけには行かなかったが確実に首筋を切り裂き血が噴き出して来た。
 頸動脈に当たるところを正確に狙う事が出来たようだった。
 それでもしばらく動いていたが、流石に急所を裂かれて徐々に動きが鈍くなり、最後にはドウと音を立てて崩れ落ちるのであった。

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「た、倒した・・・・・・」
 レイラは、ヘイトホースが崩れ落ちるのを信じられない思いで見ていた。
 通常リーダー種の討伐は、大勢の人数で囲んで討伐するのが常識なのだ。
 それが、自分を含めてたったの四人で討伐してしまった。
 しばらく倒れたヘイトホースを信じられない思いで見ていたレイラだったが、もう一体居たことを思い出した。
「も、もう一体は・・・・・・?」
 ヘイトホースの声が聞こえる方を見てみると、さらに信じられない光景が繰り広げられていた。
 素早いはずのヘイトホースを翻弄するように、一匹の狼が右へ左へと移動していた。
 ヘイトホースは完全にその動きに惑わされて攻撃自体ままならないようだ。
 必死に体を当てようとしているが、狼はひらりひらりとその攻撃を躱して、さらには牙で攻撃を加えている。
 「う、嘘・・・・・・」
 レイラはそう呟いて、呆然とその光景を見ている。
 ランクが低いと思っていたテイムされた狼が、リーダー種を翻弄するなんて欠片も考えていなかったのだから当然だろう。

 その光景を考助は苦笑しつつ見ていた。
「ナナ、そろそろ片づけて戻るよ」
 考助は、久しぶりの戦闘らしい戦闘にナナが楽しんでいることを察したのだ。
 その声を聞いたナナは、あっという間にヘイトホースの首筋に噛みついて、ドウと音を立てて組み伏せてしまった。
 信じられないくらいの力である。
 首筋を噛まれているヘイトホースは、しばらくの間起き上がろうとしてじたばた暴れていたが、やがてそれも静かになった。
 息絶えたのを確認してから、ナナは噛みつくのを止めた。
 動かないのをしっかり確認してから尻尾を振りつつ考助のところまで寄って来た。
 ちなみに今のナナは神獣化まではしていない。
 そこまでしなくても倒せると分かっていたためだろう。
 考助もナナがご褒美を欲しがっているのが分かったので、その首筋を撫でてあげるのであった。

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 結局、周辺のモンスターも含めて番のヘイトホース二体は考助達だけで片づけてしまった。
 戦闘が終わって余裕が出て来たのか、レイラの探るような視線が考助に突き刺さっている。
 勿論考助としてもその視線の意味は分かっているのだが、まずは商隊と合流することを優先することにした。
「取りあえず、ここを片づけて商隊と合流しましょうか」
 ニコリとわらってそう言った考助を見て、答えるつもりが無いと察したレイラはため息を吐いた。
 考助は戦闘中に指示を出す時に本来の名前を呼んでいる。
 といってもピーチはともかく、コレットの名前はさほど広がっているわけではないので、未だ考助達の正体には気づいていないのだ。
 これで考助の名前が呼ばれているのであれば流石に気付いただろうが、幸いにして考助の本名は未だ呼ばれていない。
「片づけるって・・・・・・!?」
 ヘイトホース二体を含めてかなりの数のモンスターを倒している。
 それらをどうやって処理するのか聞こうと思ったレイラだったのだが、ピーチとコレットが触れるたびにモンスターの身体が消えるのを見て言葉を止めた。
「まさか、アイテムボックス?」
「そういうこと」
 驚くレイラを尻目に、考助もすぐ傍に倒れていたヘイトホースに触れてアイテムボックスにしまった。
「もう、なんでもありね」
 そう呟くレイラに苦笑を返しつつ、考助は二体目のヘイトホースの所まで行き、アイテムボックスへとしまった。

 結局、二十分ほどその場で作業を行った考助達は、無事に討伐を終えたことを伝えるために、商隊がいる場所へと戻るのであった。
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