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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 旅(セントラル大陸編)

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(4)通信

 考助は腕輪に付いているマジックボックスの機能を使って、通信具を取り出した。
 この場に集まっているのは、ほとんどが商人たちだ。
 その動作だけで、腕輪にどういった機能があるのかを察してお互いに顔を見合わせていた。
 考助はそれらを無視して、板状の通信具で話を始める。
 形状的には携帯電話とほとんど変わらないのだが、そんな物が存在しないこの世界においてはそれが何であるかは分からなかったようだった。
 いきなり通信具に向かって話しかけた考助を見て、いぶかしげな視線を向けて来た。
 それらの視線を受けて、考助はガゼランに連絡を取った。

「いよう。どうした? お前から連絡なんて珍しいな」
 軽い調子で話しかけてくるガゼランに、内心で苦笑しつつ考助は答えた。
「部門長。問題発生です」
 考助が部門長と呼んだことで、ガゼランも状況を察したようだった。
「何があった」
「商隊は予定通りの場所にいますが、どうやら氾濫の兆しがあるようです。詳細は斥候を放って確認中です」
 考助が一息にそう言うと、一瞬間が空いた。
「・・・・・・そうか。シュミットにはこちらから伝えておこう」
「お願いします」
「その商隊のリーダーは・・・・・・バートか。バート、いるか?」
 突然の部門長の呼びかけに、バートが慌てて返答する。
「はっ」
「分かっているな? 今後は、お前が指揮を執るんだ」
「は?」
 突然のことに、バートが思わず首を傾げた。
 通常の行商でもそうだが、商隊を護衛している冒険者が上に立つことは無いのだ。
 それは、大規模商隊でも同じで、今回の隊もあくまで一番のトップはカールなのである。
 だが、何事にも例外はある。

 通信具の向こうからため息を吐いたような音が聞こえてきた。
「やっぱり知らなかったか。通常の状態であれば、あくまで隊長が指揮を執ることになる。だが、氾濫が発生した場合だけは別なんだよ。指揮を執るのはお前になるんだ」
 ガゼランの言葉を聞いたバートは、思わずカールを見た。
 ついでに言えば、この話を聞いていた商人たちの視線もカールに集まっている。
 その反応を見越していたのか、カールは冷静に頷いて同意を示した。
「大規模商隊の移動中や停泊中に氾濫が確認された場合は、荷よりも氾濫の詳細確認と殲滅が優先されます」
 この取り決めは、大規模商隊が出来た当初から決められている物になる。
 それほどまでに、セントラル大陸においては氾濫の発生が重要視されているのだ。
「もしそこのメンバーで殲滅できるのであれば、殲滅してくれ。もし不可能であれば逃げることも視野に入れていい」
 逃げてもいいという言葉で、商人たちの何人かはホッとした表情になった。
 だが、彼らを追いつめるように、バートが答えた。
「・・・・・・いえ。斥候が返ってこないと何とも言えませんが、恐らく逃げきることは不可能かと」
「・・・・・・そうか。まずは斥候の報告待ちだな。それによってこちらも対応を考える」
「わかりました」
「それから、そこにいるコウ達は、戦力に組み込まずに自由に動かした方がいい」
 バートは、ガゼランの言葉の意味を正確に理解した。
「それほど、ですか?」
「ああ。商隊にいる冒険者全員で向かっても勝てないと思うぞ?」
 ガゼランの楽しげな調子の声に、バートは呆けた表情になった。
 いくらガゼランでもその言葉は信じられなかったのだ。
「冗談、ですか?」
「まさか。この状況で冗談など言うはずがない」
 相変わらず軽い調子で言ったガゼランだったが、言われたバートの反応は別だった。
 ゴクリと喉を鳴らして考助を見た。

 バートに見られた考助は、諦めたように溜息を吐いた。
「部門長。あまり期待させるようなことは・・・・・・」
「それは無理だな。状況が状況だけに、お前たちにしっかりと働いてもらわないといけない」
 副音声で、実力を隠したりするなよ、という有難いお言葉を頂いてしまった。
 もっとも考助としても、こんな状況で隠したりするようなことをするつもりはない。
 無いのだが、だからと言って全力で戦えるかと言うとそうでもない。
 何しろ商隊という足手まといがいるのだ。
「それはまあ、そうですけどね」
「何、心配することは無い。俺も作戦には口を挟むつもりだ。お前さん達の邪魔になるようなことはしないよ」
「それはありがたいですね」
 半ば本気で考助はそう答えるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「あ、あの・・・・・・本気ですか?」
 考助とガゼランの会話を聞いていたバートが口を挟んできた。
「バート。今お前の目の前にいるパーティを普通の感覚で測るな。こいつらだけの場合、大氾濫の群れの中に放り込んで生きて帰ってもおかしくないからな」
 氾濫と言うのは小規模な群れになる。
 大体群れの数は百程度からが一般的に氾濫と言われる。
 対して大氾濫は、群れの数が五百以上であることが条件だ。
 どちらも共通しているのは、複数種類のモンスターの群れになっているという事である。
「冗談、ですよね?」
「冗談なもんか」
 楽しそうに言うガゼランに、バートは流石に顔を引き攣らせた。
 目の前にいる考助達が、そこまでの強者だとは思えなかったのだ。
「ただし、それはあくまで足手まといがいない場合だ。その意味は分かるな?」
「・・・・・・勿論です」
 今回の場合、足手まといと言うのは商隊そのものになる。
 ガゼランの言葉をそのまま受け取るのであれば、モンスターと戦う冒険者たちさえも考助達にとっては足手まといという事だ。
「それがわかっているならいい。斥候の内容によって変わってくる可能性があるが、お前たちは基本的に商隊の警護だ」
 バートは、考助達を見た。
 未だにガゼランの言葉が信じられないのだろう。
 本当に考助達に任せていいのかどうかが判断できないのだ。

「信じられないか?」
 バートの返事に間があったために、ガゼランも察しているのだろう。
 そんなことを聞いてきた。
「・・・・・・正直に言えば」
「まあ、そうだろうな。俺もお前と同じ状況に置かれればそう判断するだろうさ。コウという人材を知っていなければな」
 それもまたガゼランの本心だ。
 ガゼランは考助達の力の一部・・を直に見たことがある。
 だからこそこんなことが言えるのであって、実際に見ていなければバートと同じような思いを抱くだろう。
「まあいい。今はそんなことよりも、まずは斥候の報告を待った方が良いだろう」
「わかりました」
 それに関してはバートも同意見なので、素直に頷いた。

「それから・・・・・・カールだったか。いるか?」
「は、はい?」
 モンスターとの戦闘に関しては、カールは口を出すことが出来ないので黙っていた。
 突然ガゼランに呼ばれ、慌てて返事を返した。
「すまんが、こうなった以上は荷物はある程度は覚悟した方がいい。まあ、規模にもよるが」
「それは・・・・・・」
 商隊の隊長としては認め難いことだが、氾濫の実態を知っている者としては拒否するのも難しい。
 何より生き残ることの方が最優先なのだから。
「荷に関しては、これからシュミットにも話す・・・・・・っと来たか」
 話の途中でガゼランの言葉が途切れてしまった。
 遠くの方から別の者の声が聞こえてきているので、シュミットが到着したのが分かった。
 何やら二人で話をしているのが聞こえる。
 カールとしても部門長であるシュミットがいてくれるのは心強い。
 本来であれば、自分で判断してないといけない所だったのだが、コウという者が通信具を持っていてよかったと安堵するカールであった。
通信終了後。

シ「しかし、氾濫ですか」
ガ「運がいいのか悪いのか」
シ「・・・・・・運が悪いのは、モンスターの方だと思うのは私だけですか?」
ガ「いや。俺もそう思う」

こんな会話があったとかなかったとか。
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