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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その3)

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(6)二つの魔道具作成部署(後編)

 工芸部門の魔道具作成部署とアンドニが率いる魔道具作成部隊には大きな違いがある。
 それは単純に作っている魔道具が違うだけではなく、魔道具を売る対象が違っているのだ。
 工芸部門の魔道具作成部署は、基本的に貴族や商人といった高額な金額でも出せる者を対象としている。
 一方、アンドニの魔道具作成部隊は、一般家庭でも買える程度の物を流通させている。
 それが成り立つのは勿論大量生産が出来るというのと、材料自体が安価で済んでいるという事情がある。
 もっとも、大量生産と言っても工場などの大型の機械で作っているわけではなく、あくまで人の手で作っているので限度はあるのだが。
 分かりやすい物で言えば、考助が考え出した各家庭に普及し始めている照明器具などは、その最たるものだろう。
 スライムを原料とすることで、照明の魔道具は安価で維持することが出来るようになった。
 照明の本体自体も高い材料を使わずに、安価で提供することが出来るようになっているために、売り出されるや否や爆発的に普及した。
 残念ながら生産が追い付かないため全ての家庭に設置されているわけではないが、それも時間の問題だろう。
 ただし、だからと言ってこれまでの高価な照明器具が無くなったわけではない。
 これまで作られていた照明器具は、高い芸術性も備えているために、変わらず貴族や商人たちの家では使われ続けている。
 棲み分けが出来てきているのだ。

 工芸部門にある魔道具作成部署は、もともと高価な魔道具を作成していた。
 そもそも魔道具作成というのは、それなりの知識と高い技術力、特に魔法の力を持たないと出来ない職だったのだ。
 才能を見込まれた者が弟子入りをして、長い間研鑽を積んでようやく独り立ちが出来るというのが本来の流れだ。
 当然、その途中で夢を諦めてしまう者も多い。
 それ故に、作成出来る者が少なく必然的に高価になってしまい、貴族や商人御用達になっていた。
 それを考助が見事に風穴を開けたといえる。
 考助がアンドレたちにまず最初に望んだのは、いわば一つ一つの部品を作れるようになること。
 全体を理解させるのは後回しにした。
 要は、それまで職人が研究・開発・生産を一人で賄っていたのを、生産だけ出来るようにしたのだ。
 勿論それだけでも大変なのは変わりはないのだが、負担が大幅に軽減されたことは間違いない。
 結果として、教育し始めてまだ三年しかたっていないのに、既に生産の一部門として成り立っているのである。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 アンドニとセリオの間で、言葉が交わされている。
 主にセリオの説明を、アンドニが聞くという形になっている。
 今は共通点がある照明の説明をセリオがしているのだ。
 照明の作り方から始まって、今ではその理論にまで及んでいる。
 そもそもセリオたちが作っている照明は、魔法を使える事が前提になっている。
 魔法陣に込める魔力もその意味が分かっていないと駄目という、使う人間を選ぶ魔法具なのだ。
 当然魔道具に使われている魔法陣やら理論は、非常に高度な物になっている。
 はっきり言えば、作り方はともかくとして、後から説明された理論はアンドニにはさっぱりわからなかった。
 一緒に来ている二人も同様だろう。
 アンドニは漠然とだが、考助がこの話し合いを許可したのは、こういったことを理解させるためではないかと考えた。
 残念ながら、今すぐ理解することは出来ないが、何れは出来るようになることを期待しているのだと。
 理論については、理解できなかったが、理解できないなりに吸収出来るところは吸収して帰るつもりでいた。
 もともと奴隷で、そう言った教育すら受けてこなかったアンドニにとっては、こういった時間は非常に大事だと分かっている。
 自身が教わる立場だと分かっているので、相手がどんな態度を取ろうとも気にしないつもりだった。
 ただ、そんな心構えは全く必要はなく、セリオも必要なことだけを話しているようだった。
 別にアンドニが奴隷だからと言って、見下すようなこともしていない。
 何人もの弟子を取っている身なので、何処が理解できているのかいないのかもある程度は把握出来る。
 理解できていなさそうなところは、詳細は省いて説明するように心がけていた。

 それまでの流れが変わったのは、ダレスの一言がきっかけだった。
「大体の説明が終わったが、何か聞きたいことはあるか?」
 その質問自体は問題はない。
 問題だったのは、アンドニの問いかけだった。
「生産工程や理論はお話しいただきましたが、生産性はどうなのでしょうか?」
「は? 生産性?」
 セリオも部署の長に収まっている人物だ。
 生産性という言葉の意味が分からないわけではない。
 むしろダレスから耳がタコになるほど言われている。
 だが、生産性という言葉を奴隷から聞くとは思っていなかったのだ。
 アンドニたちは、これまでただ黙って聞いていただけなので、セリオも勘違いしていたのだ。
 まさか納品までの全てを任せられているとは思っていなかったのである。

「ええ。聞いた話ですと、かなりの手間がかかっていそうですが、数はさほど作れていないのではないかと思うのですが?」
「あ、ああ。そうだな。一人前の職人で大体一週間程度だろうか。作る物によっても変わってくるが」
 基本的に貴族や商人向けに作っている物は、特注品になっているので全く同じ物というのはほとんどない。
「なるほど。実用品としてよりも、美術品や芸術品と捉えられているんでしょうか?」
「そういった側面もあるな」
 かろうじてセリオはそう答えたが、むしろアンドニたちが作っている安価な照明が出てきた以上は、そちらの側面の方が需要として多くなっている。
 魔道具作成の高い技術が必要なのも確かなのだが、それに関わらないいわば外側に関しては、間違いなく芸術品としての価値を求められているのだ。
 そして、アンドニの次の一言で、セリオの眼の色が変わった。
 セリオの言葉を聞いて、しばらく考えていたアンドニがこう言ったのだ。
「魔道具としての機能の部分はともかくとして、そう言った芸術性が求められる部分は、別で作ることは出来ないのでしょうか?」
 アンドニの言葉に、セリオの横に座っていた二人が色めき立った。
 一人などは席から立ち上がって反論しようとした。
 だが、セリオはそれを止めた。
 別にアンドニが自分たちの仕事を取り上げようとしてるわけではないと分かったからだ。
 それに、聞いていたダレスも興味深そうな表情になっている。

「どういう事だ?」
 ダレスがアンドニに問いかけた。
「分かりやすく言えば、デザインだけでもそう言った専門の人に任せるとか、でしょうか。魔道具という性質上、形や材質を変えられないという問題もありそうですが」
「ふむ。どうだ」
 ダレスがセリオに水を向けた。
 そのセリオは、しばらく考えていたが首を振った。
「正直に言って、分からないです。確かにデザインに関しては任せた方が良い所もあるでしょうが、変えられないことがあるというのも確かです。それに余計に手間がかかる可能性もあります」
「そもそも希少価値を上げて売っている物なのですから、そう言った所で価値を高めるのもありかなと思ったのですが」
 アンドニのその言葉に、ダレスとセリオは顔を見合わせた。
「・・・・・・一考の価値はありますね」
 例えば照明の場合、卸す貴族や商人の家に直接行ってその家の間取りに合うデザインを考えたり、注文に沿ったものを考えたりすることも出来る。
 ある程度の魔道具の知識は必要になるが、デザイン専門で考える者がいると美術性や芸術性が上げられる可能性があるのだ。

 アンドニの何気ない提案が、特に生活に関わる魔道具のイメージを変えることになるのには、そう時間がかからないのであった。
長々と書いてしまいましたが、魔道具の生産に関する話でした。
前後編に分けて書きましたが、これも字数制限が無いなろうだから出来る事ですね。
こんな話を普通の小説で長々と書いてしまうと、ページ数がいくらあっても足りなくなってしまいます><
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