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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その3)

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(5)二つの魔道具作成部署(前編)

 考助の直接の指導を受けて魔道具を作成している奴隷たちは、三年の月日を経て大きく成長していた。
 当初はマジックボックスだけを作成するチームだったのだが、既に他にもいくつかの魔道具の生産を任されていた。
 人数も売り上げに合わせて、大幅に増員されている。
 初期メンバーは、年少組も含めて考助の手から離れている。
 具体的には、考助が発案した魔道具をある程度の説明を聞くだけで量産できるほどになっていた。
 考助が魔道具を開発する段階で、生産性を考えて作っているというのもあるのだが、シュミットやダレスに言わせればあり得ない程の成長だった。
 ダレスに至っては、クラウンで作っている魔道具の全てを彼らに任せたいとまで言っていたが、考助はこれを固辞している。
 初期メンバーの時のように考助が自ら指導しなくても、新規メンバーの教育も含めて彼らだけで回せるようになってきたのだが、それでもまだまだ不十分だと考えているのだ。
 出来ることならもっと上のランクの魔道具も作れるようになってほしいと考えているし、それが出来るようになると思っている。
 シュミットとダレスに押し切られて生産品を増やしてはいるのだが、出来ることならもう少し腕を上げてほしいと考助は考えているのだ。
 勿論、未だに考助自身は初期メンバーに対して何らかの課題を与えたりしている。
 作業量が増えて倒れることになってしまっては元の木阿弥なので、無茶な指導はしていないのだが。

 そんな魔道具作成部隊の元をダレスが訪ねて来た。
 相手をしているのは、チームのリーダーになったアンドニだ。
 彼は初期メンバーの一人で世話役の女性を除けば、メンバーの最年長になる。
 勿論、年齢だけではなく魔道具作成の技術やまとめ役としての人望からもリーダーとして選ばれている実力者だ。
 ここに連れてこられた当時は十七だったが、今では二十を超えている。
「それで、本日はいかがいたしましたか? 生産数の増加は残念ながら・・・・・・」
 先んじて答えようとしたアンドニに、ダレスは手を振って否定した。
 蛇足ながら、奴隷でありながらきちんとした言葉遣いが出来ているのは、コウヒの教育の賜物である。
 考助が魔道具作成の直接指導をする傍らで、何故か一般常識や作法などをコウヒやミツキが指導していた。
 いずれは考助の直接の弟子として表舞台に立つことを見越しているためだ。
「いやいや。今日はその話で来たわけではない」
「では?」
「うむ。少しお前たちに頼みたいことがあってな。勿論、コウスケ殿の許可は取ってある」
 考助の許可があると聞いた時点で、アンドニの表情が変わった。
 アンドニにとっては何よりも重要な事なのだ。
 アンドニを含めた初期メンバーは考助を絶対と考えるようになっている。
 考助がそのことに気付いたときには既に遅く、考助自身が矯正しようとしたが、既に手遅れだった。
 まさしく、コウヒとミツキの教育の成果が発揮されたといえるだろう。
 既にそのことに関しては考助も諦めている。
 それに、考助に対して盲目的になっているわけではないので、魔道具作成の重要性を考えればむしろ良い事なのだろう。
 考助の居心地が悪くなるという事を除けば。

「・・・・・・それで、頼みというのは?」
「うむ。実はな・・・・・・」
 アンドニは、ダレスの話を聞いて多少驚いた。
 そのようなことを考助が許可すると思っていなかったのだ。
 だが、これも意味があることなのだろうと納得して、ダレスの話を了承するのであった。
 勿論、考助にきちんと確認を取った上でだが。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 クラウンも月日が経つにつれてさらに大きな組織になっている。
 流石に一つの建物に全ての部門がまとまるのは無理なので、現在ではそれぞれの部門ごとに分けられていた。
 ただし、それだと完全な縦割り組織になり兼ねないので、上層部は以前の建物に同居しているままだ。
 アンドニは、二人のメンバーを引き連れてそのクラウン本部を訪ねていた。
 ちなみに、魔道具作成のメンバーで拠点がある階層を出ることが出来るのは、考助達に認められた者達だけだ。
 魔道具という重要な物を作っているので、当然秘密にしなければならないこともあるのだ。

 本部の受付で要件を告げると、すぐに目的の場所に案内された。
 流石にクラウン本部の受付は、アンドニたちが奴隷だと分かっても他と変わらない対応をしていた。
 クラウンにおいては、奴隷も高い地位を与えられることもあるので当然のことなのだ。
 案内された部屋に入ると、そこには既にダレスと他に三名の者達がいた。
 彼らは、工芸部門で魔道具を作っている者達になる。
 アンドニたちは、名目上は考助を通して作った魔道具をクラウンに売っている事になっているので、正確にはクラウンの工芸部門の魔道具作成部署には属していない。
 ただし、クラウンカードもしっかり発行しているので、クラウンの工芸部門には属している。
 考助直属なので、立場的には非常にややこしいことになっているのだ。

「遅くなりましたか?」
 少し余裕を持って来たつもりだったのだが、既に相手が揃っているようなので多少焦って、ダレスに聞いた。
 そのダレスは首を振って否定した。
「いやいや。もともと打ち合わせをしていたのだ。問題ないよ」
「そうですか」
 アンドニは、ダレスと会話をしつつも他の三人からの不躾な視線を感じていた。
 連れて来た他の二人も同じだろう。
 どう考えても好意的とは言い難い視線だった。
 もっとも、これからしようとしていることを考えれば、当然かもしれない。

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 ダレスが今回こうしてアンドニたちをこの場に呼んだのは、作っている魔道具を持ち寄って技術の意見交換会をしようという物だった。
 考助もダレスもそれぞれがどういった物をどういう作り方をしているのはきちんと理解している。
 ただし、現場の職人たちは他の工程などに触れることなどほとんどないのだ。
 それが全く駄目とは言わないが、それぞれ別の工程で作られている話を聞いて、お互いに刺激になればとダレスが考助に話を持ちかけた。
 それに考助が乗って来たので、今回のこの会が設けられたのである。

「部門長、この者達は?」
 工芸部門側の代表であるセリオが、ダレスに問いかけた。
「ああ。この者達が、今回の相手だ」
「では・・・・・・?」
「ああ、そうだ。マジックボックスを作っているのは、彼らという事になるな」
 その言葉を聞いたセリオは、マジマジとアンドニたちを見つめた。
 ダレスから若いとは聞いていたが、ここまで若いとは思っていなかったのだ。
 これまでの常識を覆すような魔道具であるマジックボックスを作っているのが、彼らであるとはにわかに信じられなかったのである。
 とはいえ、ダレスがそのような嘘を吐くとも思っていない。
「そうですか」
 一つだけ頷いて、もう一度アンドニへと視線を向けた。

 セリオが率いている魔道具作成部署は、クラウンの作成部署の中でも高い評価を得ている部署だ。
 その部署の者達と考助が育てた者達が、お互いにどういう反応を見せるのか。
 この話し合いは、ダレスが考えていたよりも良い結果を残すことになるのであった。
というわけで、魔道具作成部隊のその後です。
二つの部署の話し合いがどういう結果になるのかは次話です。
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