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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その3)

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(1)通貨

 ラゼクアマミヤの建国に当たって、フローリアとアレクが喧々諤々の議論を展開していた時の事。
 政治的な用語が飛び交う会話を聞き流しつつ、考助がふとあることを思いだした。
 過去の事を思い出しつつ、二人の間でそのことが会話に登っていないことを確認したうえで、議論を続ける二人に質問を投げかけた。
「通貨ってどうなってるの?」
 考助のその問いかけに、二人はピタリと会話を止めた。

 アースガルドのそれぞれの大陸では、地球で言う所のユーロのように共通通貨が使われている。
 過去には各国で通過を発行していたのだが、ある時を境に大陸ごとで通貨が統一された。
 そのある時というのが、セントラル大陸の沿岸部の開発が進んだ時と重なっているのは偶然ではない。
 セントラル大陸に入植がはじまった時は、当然各大陸から人々がわたってきて、それぞれの国の通貨が使われていた。
 当然セントラル大陸では、四つの大陸にあるほとんどの国の通貨が流れ込むことになった。
 その数の多さからセントラル大陸で商売を始めるには、まずは通貨を見分けられるようにならないと駄目なほどだった。
 だが、全ての通貨を覚えられる商人など一握りで、普通の行商はある程度力の強い国の通貨をメインに取引を行っていた。
 そうなるとその大国がそれぞれの主張を始めて、面倒な事態になり大陸ごとの四種類になったのだ。
 と、ここまで一つの経緯を説明したが、実際にそれが本当かは誰にも分からない。
 何しろ同じような時期に金山を持っていない強国が、金山を持つ国に攻め入ると言ったことが頻発したため通貨が統一されたという説もあるくらいだ。
 他にも小さな説を合わせると様々あり、どれが本当の事かは現在でも判明していない。
 むしろ一番有力視されているのが、そういった様々な要因が組み合わさって、現在の形に落ち着いたのではないのかという事になっている。

 話がそれたが、そう言う経緯でセントラル大陸では大陸独自の通貨は持っていない。
 考助がこの世界に来て一番最初にシュミットから渡された通貨は、シュミットが前の町で使っていた通貨だった。
 セントラル大陸での通貨の勢力圏は、大体方角で区切られているのだが、そうなると境目辺りにある町はどちらの通貨も流れ込むことになる。
 現に考助が一番最初に訪れたリュウセンの町では、北大陸と東大陸両方の通貨が使えた。
 クラウンが四つの転移門を設置をした際は、それぞれの方角の通貨が出回ることになるので、四種類の通貨が使えるという状態だったのだ。
 その状況は、当然現在でも続いている。
 大陸中を回る行商をやっていたシュミットは、それくらいは出来て当然ですと笑っていたが、考助にしてみればめんどくさいの一言だ。
 どうせ国家を作るのであれば、統一通貨を作ってしまった方が、少なくとも一般の者達はそのわずらわしさから解放されると思っての冒頭の質問なのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 自分の一言が、思っていた以上の効果を与えたことに気付いた考助が内心で首を傾げた。
「何か問題でもあるの?」
 この問いには、フローリアやアレクではなく高官の一人が答えた。
「我々の勢力圏には、金山が存在していません」
「あー。なるほど。・・・・・・ん? ということは、大陸内で勢力圏以外のところにはあるってこと?」
「いえ。失礼しました。正確に言うと、セントラル大陸の活動範囲内には金山は存在していません」
「あらま」
 その高官の言いたいことを正確に察して、考助は肩をすくめた。
 実はセントラル大陸には、金山があることは分かっている。
 それもかなり埋蔵量が多いという事まで分かっているのだ。
 だが、その金山は全くの手つかずと言って良い状態になっている。
 何故かと言えば、理由は単純でモンスターの生息域に入っているからだ。
 過去に何度も、周辺モンスターを駆除したうえで開発を行おうとしてきたのだが、そのたびに断念して来た経緯がある。
 セントラル大陸の金山は、目の前に宝があると分かっているのに手を出すことが出来ない危険地域なのである。

「という事は、通貨を作るとなると金を輸入するという事になるわけだ」
「そうなのだが、純正の金を定期的に大量に取引できるほどの輸出品はないぞ?」
「もっと言うと、セントラル大陸で新しい通貨が出来る可能性があるのに、わざわざ新しい国と金を取引してくれる国はない」
 考助の安易な考えに、フローリアとアレクが追い打ちをかけて来た。
 結局のところ、新しくできる国で通貨を発行するとなると、自前で金を確保する手段がないと駄目という事になのだ。
「なるほどね」
 通貨に関しては、現状だと自前で用意するのは現実的ではないという事だ。
 とは言え、独自通貨がない国家など本当の意味で独立しているとは言えない状態だという事も理解している。
 何しろ通貨がないことには、物のやり取りが全くできないという事になるのだ。
 通貨が発行できない国は、必然的に国力が弱くなる。
 そんなことは、考助よりも目の前にいる高官たちの方が良く分かっているだろう。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 何故か考助が首を傾げながら席を離れてしまったので、一同は前までのやり取りの続きを話していた。
 そろそろ今回はお開きにしようかという流れになりつつあったまさにその時に、考助が戻って来た。
 会議室を出る前の考え事をしているような雰囲気とは打って変わって、笑顔になっている。
 その笑顔を見たフローリアは、またとんでもないことを思いついたな、と一瞬で理解した。
 そうは思いつつも、ここは自分が切り出さないといけないだろうなと切り出すことにした。
「考助、どうした?」
 そのフローリアの言葉で、一同の視線が考助に集まった。
「うん。一つ聞くけど、金山があれば技術的には通貨発行は出来るんだよね?」
「それは、まあ・・・・・・?」
 首を傾げたフローリアが、担当者を見た。
 その担当者は、しばらく考えてから頷いた。
「出来ることはできますが、開発には時間がかかるので、建国時には間に合いませんよ?」
「それはまあ、そうだろうね」
 苦笑する考助に今度はアレクが恐る恐る聞いてきた。
「まさかとは思うが・・・・・・金山が用意できるとかではないよな?」
「父上・・・・・・考助がこう言いだしたときに、出来なかったことはあるか?」
 フローリアが諦めたように、ため息を吐きつつ逆にそう問いかけた。
「ある・・・・・・と言いたいが、無かった気もするな・・・・・・」
 娘の言葉を聞いて遠い目をしたアレクが、そう答えるのであった。

 独自通貨がないと駄目だろうと考助が考えたのは次のような手だった。
 まずは、フローリアが予想した通り塔の階層に金山を一つ用意する。
 ただしそれだけだと金山を与えるだけになってしまうので、その金山に大量の討伐用モンスターを用意するのだ。
 要するに大量討伐クエストを意図的に用意するわけだ。
 これだと、塔も神力を稼ぐことが出来るので、一方的に与えることにはならない。
 今更という感じもするが、好きな時に好きな物を用意できると勘違いされては困るので、敢えてモンスターという邪魔者を用意することにしたのだ。
「・・・・・・つまりは、金山を用意する代わりに、モンスターも大量発生させるというわけか?」
「そういうこと」
 何とか考助のいう事を理解できたアレクが、フムと考え込むような仕草をした。
 見ると高官たちも考え込んでいる。
 今考助が提案した方法であれば、住人達、特に冒険者たちが、塔側がいつでも好きな物を用意することが出来ると勘違いすることも無くなるだろう。
 実際はやろうと思えばできるのだが、そうした要望に一々答えるつもりはないので、出来ないと思わせた方が良いという事になる。

 考助の提案を受けて、上手くいくのかどうか検討に入る高官たちなのであった。
今回は通貨の話です。
・・・・・・と思ったのですが、いつの間にやら大規模討伐イベントの話になってしまいましたw
本文でも書きましたが、ただ単に金山を与えてしまうと、住人達がいつでも好きな物を塔で用意してもらえると思われてしまうので、敢えてこういう形を取りました。
山一つ用意するので、城とか神殿とかとは規模が違いますからね。
城も大概ですが。

次話は、大規模討伐の話を冒険者視点で書こうかと思います。
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