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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 旅(サミューレ山脈編)

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(13)番外編

サミューレ山脈編の番外編です。
 部屋の外から「考助様ー!」だの「どこですかー」という声が聞こえて来ている。
 考助が逃げ出してからさほども経っていないのに、窓から見える外側にも既に同じような立場の者達が見られた。
 どうするべきか悩んでいると、部屋の主が誰かを忘れているかのように、ガチャリと扉が開けられた。
「考助、様? ・・・・・・あっ?! す、すみません失礼しました」
「事情は理解しているからいいのよ」
 部屋の主であるアスラが笑顔でそう言って答えた。
「考助様ならこの部屋・・にはいませんよ? 他を探してみたらどうでしょうか?」
「そ、そうします!」
 慌てる女神の一人にエリスが助け舟を出すように言うと、その女神は慌てたように頭を下げて扉を閉めた。
 扉が閉まるのを音で確認した考助は、ホッとため息を吐いた。
 そんな考助の様子を見透かしたように、アスラが天井・・に向かってクスクスと笑いかけた。
「当分そこに隠れてた方がいいわね」
「・・・・・・ご面倒をおかけします」
 考助は、天井の一角に収まりながら思わず丁寧な口調で返答した。
 現在考助は、アスラがいる部屋の天井の片隅に隠れていた。
 考助がこの部屋に逃げ込んだ時に、アスラに丁度いい場所があると言われてそこへ逃げ込んだのだ。
 エリスが先ほど考助を追いかけて来た女神に答えたことは嘘ではない。
 考助は天井の隙間にいるのであって、部屋にはいないのだから。
 勿論詭弁なのだが、こうしないと考助が追いつめられてしまうので、この程度の事は許されるだろう。
「あーあ。どうしてこんなことに」
 思わず愚痴をこぼした考助に、アスラとエリスの二人の視線が交差した。
「自業自得ね」
「不注意すぎです」
「ぐっ・・・・・・」
 鋭い突込みに、考助は全く反論できなかった。

 そもそも考助がどうしてこのような目に遭っているかというと、話は少しだけ遡る。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 プロスト一族を塔に迎え入れてから初めての神域定期訪問日。
 いつものように立食パーティに臨んでいた考助は、見事に参加権をゲットしていたクラーラと話をしていた。
 当然アルキス神殿での出来事を中心に話をしていた。
 だが、それまではいつも通り穏やかに進んでいたパーティ会場の空気が、考助のある一言によって一変した。
「けど、クラーラが召喚出来て本当に助かった・・・・・・よ?」
 穏やかだった空気が一変したのに気付いた考助が、気圧されたように一歩後ずさった。
 見ると、傍にいたクラーラやジャルが、あちゃー、と言いたげに頭を押さえている。
「考助様」
「え、あ、はい?」
 つい先ほどまで楽しそうに話を聞いていた女神の一人が、ずずずいと顔を近づけて来た。
「クラーラ様を神威召喚出来た、のですか?」
「え? えーと、どうなんだろう?」
 本能的に拙いと察したが、嘘をつくわけにもいかず、曖昧な返答になった。
 既に考助は逃げ腰になっている。
 そこかしこで会話に花を咲かせていた者達が、一斉に自分に注目すればこうなってしまうのも当然だろう。
 決して自分がヘタレだからじゃない、と自分に言い聞かせつつ、いつでも逃げ出せるようにしておく。
 すぐ傍で諦めたような表情になっているクラーラに、考助は念の為確認を取った。
「ええと・・・・・・まずかった、かな?」
「考助の為にも内緒にしていたんだけど、無駄になっちゃったわね」
 肩をすくめてそう言ったクラーラを見て、考助は覚悟を決めた。
 即ち、逃げの一手である。
 考助の思惑を察したのか、ジャルが一番近い出入り口をさしている。
 一つ大きく息を吸った考助は、すたこらさっさとその場から逃げ出した。

「あー! 逃げたわよ!」
「追いかけましょう!」
 背中からそんな声が聞こえて来た考助は、全力で逃げ込める場所を探し始めたのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 目の色を変えて考助を追いかけてくる女神から逃げてようやく見つけた安住の地が、アスラに誘導されたこの天井というわけだ。
「・・・・・・失敗したなあ」
 自分の不用意な一言がこんな事態を引き起こすとは思っていなかった。
「考助は、一度彼女たちに自分が与える影響の強さを考え直すべきね」
 そもそも神域で一緒にいるだけでも、彼女たちにいい影響を与えることが出来るのだ。
 それが、神威召喚で現世に召喚することが出来るとなれば、その影響の大きさは彼女たちにとっては天井知らずまで跳ね上がる。
 残念ながら神威召喚はいつでもどこでも発動できるわけではない。
 だが、何かのきっかけで召喚できるようになるのであれば、すぐにでも召喚してほしいというのが彼女たちの本音だ。
 考助が先ほどのパーティの席で、クラーラを召喚できることをポロリと漏らしたので、抑えていた箍が外れてしまったのだ。
 こうなることがわかっていたために、クラーラや報告を受けたアスラ達も他には漏らさないようにしていた。
 その配慮が、考助の一言で水の泡になってしまったというわけだ。
 もっとも考助が気づかなかったのもしょうがない所がある。
 考助自身は普段からアースガルドの世界で行動しているので、神が世界に存在できるという意味をきちんと理解できていないのだ。
 ある意味で神域に閉じ込められているとも言える女神達にとっては、アースガルドの世界に降臨できるということが何よりの楽しみ(?)なのだ。
 そんな機会を女神達が逃すはずもなく、アスラたちには容易にこの事態が想像できたためにこの話を広めなかったのだ。
 ちなみに、塔の神殿の落成式の時の三大神の召喚は、特殊例として話している。
 考助が現人神になるきっかけの一つとなったのだから、女神達も納得してたのだが今回のクラーラの召喚はそうではない。
 何しろ、わざわざクラーラが召喚されなくても問題は解決できたのだ。
 それを考助が気軽に呼んでしまったために、だったら自分もと考えるのは当然の成り行きだった。

 考助が天井でそんなことを考えていると、部屋をノックする音が聞こえて来た。
「どなたですか?」
「エリス姉、私よ」
 エリスが中から声を掛けると、ジャルの声が聞こえて来た。
「入ってもいいわよ」
 アスラがそう言うと、ドアを開けてジャルとクラーラが入って来た。
「あら。貴方も来たの?」
「ええ、まあ。当事者ですから」
 クラーラは苦笑しつつアスラの問いに答えた。
 先程まで女神達に捕まって、詳しい事情を聞かれていたのだ。ある意味で、尋問と言ってもいい状況だった。
 ようやく解放されたので、状況を報告しようとアスラのところまで来たのだ。

「ところで、考助は?」
 そう切り出したクラーラに、アスラは笑って答えた。
「ちゃんと隠れているから大丈夫よ。今頃は、きっちりと反省しているわよ」
 その台詞を天井で聞いた考助は、していますしています、と心の中で反復していた。
「それならいいですが・・・・・・これがきっかけで来なくなってしまうとかは・・・・・・」
 クラーラの心配そうな顔を見て、アスラは虚を突かれたような表情になった。
「そんなことは無いわよ。なぜそんなことを?」
「あ、いえ。何となくそう思っただけです」
「そもそもこの程度で来なくなるのであれば、定期的に来ることもしていないでしょう? 心配のしすぎよ」
 そうです、心配のしすぎです、と心の中で伝える考助。
「それはともかく、今の状況を詳しく教えて。それから落としどころを考えましょう」
 アスラの言葉に、その場にいた全員が頷くのであった。

 結局、今回の騒動は一晩たっても収まることは無く、考助は天井で過ごすことになった。
 ・・・・・・わけではなく、しっかりとエリスが神威召喚を行うには条件が必要だという事を説明した。
 今回の件も、それらの条件が揃っていたために、そして考助がそれに気づけたために召喚できたのだと。
 その話を聞いた女神達が、ようやく納得して解散となるのであった。
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