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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 旅(サミューレ山脈編)

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(11)プロスト一族

 結局、プロスト一族の復活はクラーラと考助の二柱の神だけで作業が終わった。
 プロストの棺によって繋ぎとめられている魂を召喚という形で肉体を与える作業なのだ。
 どうすれば望む魂を呼び出せるかはクラーラが知っていたので、考助は指示通りに召喚しただけだ。
 勿論それは考助の感覚であって、シュレインに言わせればそうそうホイホイと呼び出せるものではない。
 そもそもそんな簡単に出来るのであれば、プロスト一族の者が、それこそビアナのような立場の者がコツコツと時間をかけて呼び出せばいいのだ。
 そうしてこなかったのは、召喚したくてもできなかったのだ。
 それを女神クラーラの助言があったとはいえ、次々に召喚して行くのを見たビアナが卒倒しそうになったのは、ごく当然の事だろう。
 事前に察知したシュレインが、倒れ掛かったビアナを見事に支えたのだが、召喚に夢中になっていた考助は気づかなかった。
 そうして考助が召喚を行った人数は百人に上った。
 この世界には、もっと少ない数で維持している種族もあるので、一族として多いか少ないかは意見が分かれる所だろうが、これだけの短時間でしかもたった一人で召喚をした人数としてはとんでもない数だろう。
 終わりの頃になると、ビアナの表情も召喚された人々の表情も、まさしく神を見るような表情になっていた。
 勿論、百人という人数をプロストの棺が設置している部屋だけで収容するのは厳しいので、召喚された者から別の部屋へと移っている。

 そんなこんなで考助が順調に召喚を行い、最後の百人目の召喚が終わった時、部屋に残っていたプロスト一族の者達が最後に召喚された者へと頭を下げ、ピーチが声を上げた。
「・・・・・・あっ?!」
 突然のことに、考助がピーチの方を見て質問しようとしたが、それより先に召喚された者がピーチに向かって話しかけた。
「おや。貴方がこちらにいらっしゃるという事は、万事うまくいったという事かね?」
 召喚されたばかりだというのに全てを理解しているかのような言葉に、考助は首を傾げた。
『考助。この人が最後で、イネス老よ』
 クラーラの助言に、驚いて思わずもう一度自分が召喚した者を見た。
 どう見ても「老」と呼ばれるような人物には見えなかったのだ。
 考助が理解していた内容では、イネスはかなりの年月の間、プロスト一族を束ねて来たはずなのだ。
 その考助が驚いている間に、召喚されたイネスに近寄ったビアナが、考助の事を紹介していた。
「イネス老。あちらの方が<至上の君>です」
 それを言われたイネス老もまた、考助と同じように驚きに目を見開いた。
 ピーチから知識を与えられてはいたが、具体的な顔までは知らなかったのだ。
「なんと!!」
 それを聞いたイネスが慌てて跪いた。
 それを見た、この場に残っているプロスト一族の者達も慌てたように同じ格好になった。
 何人かは、何故もっと早く言わないのだとビアナを恨めし気に見ている。

 最後の召喚が終わって、役目を終えた召喚陣が消えたのを確認した考助がそんな彼らに向かって提案をした。
「あ~。取りあえずそういう事は、もう少し落ち着いてからにしませんか?」
『そうね。私も丁度いい感じで、そろそろ時間みたいだし』
 そう言うクラーラを見たイネスが、再び慌てて跪いたまま頭を下げている。
 流石に神威を出したままのクラーラが誰かは、すぐに気付いたようだった。
『これは駄目ね。じゃあ私はそろそろ神域へ戻るわ』
「わかった」
『次に神域に来た時は、きちんとお礼も言いたいから会いに来てね』
 クラーラは、それだけを言って唐突にその場から姿を消した。
 何ともあっけない消え方だったが、変にこの場に影響力を残さないようにするための配慮もあるのだ。
 考助は神威を消しているので、クラーラが消えたことによってその場にあった神威も無くなった。
 正確には薄まったというのが正しいのだが、今までその場にいた者達からすれば消えたと表現したほうが良い程の喪失感だ。
 ちなみに、この場に残っているクラーラの神威の残滓は、当分の間残ることになる。
 これだけでも、この場にクラーラが降臨していたことの証明になるのだ。

「それで、これからについてだけど先ほどの通り皆にも話してもらっていていいかな?」
 考助が召喚を行う前に、これからどうしたほうが良いのか、ある程度の方向性はビアナと話してある。
 勿論、塔に来ることも含めてだ。
「畏まりました。それで、コウスケ様は?」
 そうビアナに問われた考助は、苦笑を返した。
「ここの神殿を治めている神殿長に話をしてくるよ。流石に最後まで蚊帳の外というわけにもいかないだろうしね」
 そう言った考助に、ビアナは頭を下げた。
「ご面倒をおかけします」
「まあ、こうなった以上、現人神として対応したほうが話が早いからね」
 既に神殿長たちには身元が割れている上に、これだけの事をやらかしたのだから神として話をした方が早い。
 ここまで来ると、考助としてもわざわざ一冒険者として話をしようとするような意味がないことをするつもりはないのだ。
「よろしくお願いします」
「はいよ。それじゃあ、言って来る」
 考助はそう言って、ピーチとミツキを引き連れて神殿長の元へと向かうのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 神殿長は、考助達から面会を求められる事に備えていたのか、すぐに面会することができた。
 山奥にある神殿の為、来客が少ないのもすぐに面会できた理由なのだろう。
 挨拶もそこそこに、考助は今回起こったことを話した。
 と言っても全ての内容を話したわけではなく、あの部屋にクラーラが降臨してプロスト一族が召喚されたことをさくっと話しただけだ。
 神殿長はまずクラーラ神が降臨したことに顔を青くして、その女神の力でプロスト一族が召喚されたと聞いて、顔が白くなった。
 考助が最後まで話し終えるのを待ってから神殿長のアドリアンが恐る恐る聞いてきた。
「それで、あの・・・・・・主神様は?」
「流石にそんなに長い間の降臨は出来ませんよ。既に神域に戻られました」
 それを聞いたアドリアンはあからさまにホッとした表情になった。
 考助の前で感情を隠すのを止めたかのように表情が豊かになっている。
 幾分ましな表情になったアドリアンは、ごくりと喉を鳴らしてからさらに問いかけて来た。
「それで・・・・・・召喚されたヴァンパイア達はどうするのでしょうか?」
 不安そうに聞いてくるアドリアンに、考助は首を傾げた。
「神殿長、貴方達は何をそこまで恐れているのでしょうか?」
 はっきり言えば、教会がヴァンパイアを敵視していたのは遥か昔の事だ。
 そのことは既にビアナを通して伝えられているだろう。
「いえ、その・・・・・・我々の過去の行いもそうなのですが・・・・・・」
 一度言葉を区切ってからアドリアンは思い切ったように言った。
「彼らは、プロスト一族はこの神殿をどうするつもりなのでしょう?」
 その言葉で、考助はアドリアンが言いたいことを理解した。
 同時に、神殿側がアルキス神殿が元はプロスト一族の物だったことを把握していたことが分かった。
 彼らは、この地を治めるのに機能しているアルキス神殿が、復活したプロスト一族に奪われることを恐れているのだ。

「神殿長。プロスト一族がこれからどうするかは、まさしく今話し合いをしている最中ですが、少なくともこの神殿を貴方達から取り戻そういう結論にはならないと思いますよ?」
 それは考助だけの予想ではなく、ビアナの言葉でもあった。
 そもそもプロストの棺の機能を使ってまでこの世に復活を願ったのは、ヴァンパイアとして迫害されることを避けての事だ。
 力で強引にことを進めようとする者達は、そもそも既に過去の歴史に埋もれてしまっている。
 その話を聞いたアドリアンは安堵のため息を吐いた。
「もっとも、余計な手出しをされれば、当然反抗する意思はあるでしょうね」
「・・・・・・というと?」
「例えば、余計な過去を知っている者達を粛清しようとか、ですかね」
「そ、そのようなことは・・・・・・!」
「まあ、貴方ならそう言うでしょうが、傍にいる者達はどうでしょうね?」
「・・・・・・」
 黙り込んだ神殿長に、考助はその言葉が杞憂で終わることを願うのであった。
アルキス神殿を治めていた高位の神職者たちは、代々言い伝えを残してきました。
といっても、プロスト一族が復活を願っていたという具体的な物ではなく、もともと神殿がプロスト一族の物だったという事ぐらいです。
過去の粛清で神殿を守ろうとしたヴァンパイア達は、復活を願うのではなく戦いによってで守り抜こうと選択した者達です。
結局それは叶わなかったですが、神殿の秘密そのものは守れたので考助達が来るまで聖職者たちは仕掛けに気付かなかったわけです。

・・・・・・という事を本文のどこかに入れようと思ったのですが、どこに入れて良いものか悩んだ末に後書きに回してしまいました><
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