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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 旅(サミューレ山脈編)

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(6)仕掛け

 昨日考助が図面で示した場所に、十人以上の集団が集まっていた。
 考助達は勿論、神殿長を筆頭に他の神官たちも集まっている。
 どう見てもその神官たちは、神殿長の護衛と言った感じの戦闘をこなせるような者達だった。
 装備からして剣などを腰に下げたりしているのだから、隠すつもりもないのだろう。
 考助は彼らがいる目的も何となく察しながら、それについては特に何も言わなかった。
 そんな考助に神殿長が近寄ってきて問いかけて来た。
「ここがそうですか? 私には何も無いようにしか見えませんが?」
「そうですね。ですが、神威を感じ取ってみてください」
 神殿長がしっかりと神威を感じ取れる人物だと分かっていて、考助がそう言った。
 しばらくして神殿長が首を傾げた。
「確かにこの辺りは神威が無くなっているようにも思えますが、そこまで不自然とも思えないのですが?」
「それは、貴方がこういった調査に慣れていないからです。数をこなせば、こういった仕掛けも見分けられるようになりますよ」
 穏やかに会話をする二人に、神官の一人が混ざって来た。
「おい! そんなことより、早く扉を開けんか!」
 その男は、神官達の取りまとめをしていることから、それなりに高位の神官なのだろう。
 神殿長を差し置いてそんなことを言って来ることに多少の違和感を感じるが、その神殿長本人が何も言わないので、考助達も気にしないことにした。
 そんな考えはちらりとも表情に見せずに、考助はちらりと視線を神殿長へと向けた。
 考助がこの入口を開ける許可をもらったのはあくまで神殿長なので、その神殿長の意見を聞くことにしている。
 その考助の視線をうけて神殿長も頷くのであった。

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 扉を開けるための仕掛けは既に昨日の段階で見つけてある。
 その「仕掛け」に手の平を当ててわずかに神威を発した。
 そもそもここにある仕掛けは、神力でしか動かないようになっていることは分かっていた。
 勿論、神殿長たちには気づかれないように、十分に注意をしている。
 ここで考助が神であるとばれてしまえば、全てが水の泡になってしまう可能性がある。
 考助の操作に従って、すんなりと何もないと思われたところに、人がぎりぎり入れる程度の大きさの入口が開いた。
 それを見て、先ほど早く扉を開けるように促した神官はニヤリと笑った。
「よし。お前はここまででいい。ここから先は我々が調査をする!」
 そう言うやいなや、神官たちが入口から中へと入って行った。
「はあ」
 ある意味予想通りの展開に、考助は生返事を返した。
 更に、何かを言い返そうとしたピーチをシュレインが止めた。
「好きにさせればいい。先に入ったとしても無駄だからの」
 シュレインがすまし顔でそう言うのを聞いて、ピーチはすぐに思いとどまった。
 考助を見ても何かを確信しているのが分かったのだ。
 そんな考助達を見て、神殿長が不思議そうな顔をして見て来た。
「止めたりしないのですか? この扉を先に発見した功は、貴方にあるでしょうに」
 表情を見る限りでは、考助が神威を発したことはばれていないようだった。
 その神殿長に、考助は肩をすくめて見せた。
「いくら先に入っても無駄でしょうからね」
「それはどういう・・・・・・」

 どういうことですか、と神殿長が問いかけようとしたその時、先に中に入っていた神官が戻って来た。
 その表情は明らかにイラついていた。
「この先にも扉がある! お前が入って開けてこい。そこから先は、今度こそ我々が調査をする!」
 そう言って来た神官に、考助は肩をすくめた。
「無駄だと思いますよ?」
「何!?」
「多分ですが、次の扉を開けた先は、許可を得た者しか通ることが出来ないようになっているはずです」
「なんだと・・・・・・!?」
 考助の言葉に、その神官は驚きの表情になった。
 その様子を見ていた神殿長が口を挟んできた。
「その許可を得た者とは?」
「この場合は、扉を開けた僕でしょうね」
 即答する考助に、神殿長はさらに続けた。
「・・・・・・先ほどの様子を見ていると、貴方がたはここの仕掛けがどう言う物か、最初から分かっているように思えますね」
 質問のようでもあり、既に断定しているようにも思えるその言葉に、考助は隠すことなく頷いた。
「ええ。ある程度は、わかっていましたよ」
「何だと・・・・・・!?」
 考助の答えに、神殿長ではなく、神官が声を上げた。
 その神官に対して、誤解を解くように考助が説明した。
「勘違いしないでくださいね。この神殿の仕組みそのものを知っているわけではありませんよ? 別の神与物で同じような仕組みがあることを知っているだけです」
 その考助の言葉に、神殿長が興味を惹かれたような表情になった。
「ほう? それはどこですか?」
「流石にそれは言えませんよ。貴方がたも神与物の調査を外部の者に依頼して、守秘義務を課すことはあるでしょう?」
 むしろ守秘義務を負わせるのが当然なので、神殿長も神官も黙り込んだ。
 ここでペラペラを話すような者であれば、今回の件も話されてしまうという事になるからだ。

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「さて、どうしますか? このまま見なかったことにして入口をふさぐか、それとも僕たちを内部に入れるかの二択になりますが?」
 考助がそう問いかけると、神官が苦虫を噛み潰したようの表情になった。
 その様子を見つつ神殿長がため息を吐いた。
「仕方ありません。先の扉を開けてもらえますか?」
「開けるだけでいいんですか?」
「・・・・・・というと?」
「先ほども言いました。この神殿の仕掛けから言って、許可を得た者しか通れないと。つまり、今この段階では、僕が許可した者しか通れないんですよ」
 考助は、一度区切ってから話を続けた。
「僕らだけ通れるようにしてもいいんですか?」
 その言葉に、神官が刺すような視線を向けて来た。
 視線だけで人を傷付けることができるのであれば、致命傷を負っていただろう。
「当然、ここにいる全員を通れるようにしてもらう!」
「どの口がそれを言いますか。下手をすれば武器を向けられる可能性があるのに、そんな自殺行為をする者がいるとでも?」
 相変わらず剣呑な視線を向けてくる神官に、考助が呆れたような表情になった。
「・・・・・・わかりました。では、貴方達と同様に、我々も五人は入れるようにしてもらう事は可能でしょうか?」
「神殿長・・・・・・!!」
 神殿長がそう提案して来た。
 その横で神官が叫んだが、わざとなのか彼を無視して考助を見ている。
 ちゃっかりナナの分も人数に数えられているが、それくらいは問題ないだろう。
 というよりも全員が付いてきても問題ないのだが、そんなことをわざわざ教えるつもりはない。
「ここの先にある扉に触れてみないと分かりませんが、恐らく大丈夫でしょう」
「では、それでお願いしてもよろしいですか? それがだめなら、これ以上の調査は諦めます」
 それが神殿長としても最大限の譲歩なのだろう。
 考助としても、神官たちを完全に排除するつもりは無かったので、神殿長の提案に同意した。
 そもそも考助達だけで中に入るつもりなら、最初から彼らがいる所で開けたりせずにこっそりと忍び込んだだろう。
 シュレイン達もそれがわかっているので、このやり取りに特に口を挟むことなく限られた人数で更に進むことが決まったのであった。
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