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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その2)

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(7)魔道具作成部隊

 考助は、シュミットとダレスを交えて、ある魔道具についての打ち合わせを行っていた。
 その魔道具とは、文字通りのマジックボックスだ。
 形状は小さなポシェットのような物から、大型のキャリーバッグまで様々なものがある。
 勿論入れられる容量は、その大きさに比例する。
 マジックボックスは、冒険者から行商人まで幅広いニーズがあるために、間違いなく売れることは分かっている。
 問題は、その魔道具を作ることが出来る者が、現状は全くいないという事だろう。
 過去には、高度な魔道具が発達したこともあって、いくつかの品が残ってる。
 ただし、現存しているそれらの品は、どこかの国の国宝級のアイテムになっているのがほとんどである。
 過去に存在した魔道具職人は、彼らが持っていた技術と共に戦争によって失われてしまっていたのだ。
 いた、と過去形になっているのは、既に考助が開発に成功しているからだ。
 成功しているとはいえ、考助としては魔道具の生産だけで儲けて行こうなどとは全く考えていないため、量産することは出来ない。
 マジックボックスの開発に成功した考助に、シュミットが何としても量産できるように打診したのは当然の事だろう。
 その考助がこうして打ち合わせをしているのは、量産化のある程度の目途がついたからである。

 目途が立ったと言っても問題がないわけではない。
 最大の問題は、普通のポシェットやバッグにマジックボックスとするための魔法の処理をすることだ。
「空間魔法の使い手ですか・・・・・・」
 考助の要求に、ダレスが渋い顔をした。
 空間魔法は、転移魔法などが使える魔法使いという事になるので、大体は国が抱えている財産ということになる。
 転移魔法が使える魔法使いがいるかいないかで、戦争があった場合に大きく結果が変わってくる可能性があるのだから、当然と言えば当然だろう。
 そんな人材が、ただの魔道具を作るための仕事に来るはずがない。
 何より人件費が大きくつくのは間違いないだろう。

 それは考助も分かっていたので、考えていた次の提案をした。
「では、魔力を扱える奴隷は?」
 この問いには、シュミットとダレスが顔を見合わせた。
 この世界においては、聖力か魔力のどちらかが扱えるのは当然なのだ。
「それは、当然いますが、空間魔法の使い手にはなりませんよ?」
 そもそもそんな素養があるとすれば、奴隷になどなっていないか、もしくは既に高く売られてしまっているだろう。
 だが、考助にも考えがある。
「別にマジックボックスを作るのに、空間魔法は使えなくてもいいんですよ」
 その考助の言葉に、シュミットとダレスがぽかんとした表情になった。
 通常、魔道具というのは作成者が使える魔法を付与するというのが当然の常識なのだ。
「えーと、どういう事でしょう?」
 真剣な表情で詳しく説明を求めるダレスに、考助は説明を始めた。

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 考助の提案を受けたダレスとシュミットは、すぐさま目的に合った奴隷達を購入した。
 クラウンでは奴隷を商品としては扱わないというのが考助の主張なので、巨大な組織になった今でもクラウンが直に奴隷を扱う事はしていないのだ。
 奴隷たちの中には、クラウンが奴隷を扱うようになればという話も出ているのだが、それは今後も実現することは無いだろう。

 購入された奴隷たちは男女合わせて複数人居る。
 年も様々だ。
 一番年配なのは女性で、年齢としては三十を超えている。
 その次は男なのだが、年はぐっと下がって十八にも満たない。
 全員で十人になるのだが、残りの八人は一番下で十を越えたばかりの少女だった。
 彼らの共通点は、魔力操作が上手だという事だった。
 簡単に言えば、一般に使われている魔道具を普通の人より効率的に使えるという事になる。
 はっきり言えば、奴隷としては微妙な価値しかない。
 そもそも魔道具というのは、誰でも使えるように使われている。
 そうでなければ、道具としての価値がないのだから当然だろう。
 火打石の魔道具を人より多く使えたりするのは、はっきり言えば価値がないとみなされているのだ。
 だがそれは、考助に言わせればとんでもない誤りだ。
 それをこれから彼らに教えようとしていた。

 彼らがいるのは、アマミヤの塔の第四十七層で、月の祭壇がある場所になる。
 月の祭壇にはジンとその弟子にあたるリンがいるのだが、その月の祭壇のすぐ傍に彼らが暮らせる場所を作った。
 彼らには、今後クラウンで販売するの重要な魔道具の作り手になってもらう予定である。
 クラウンには既にイスナーニを筆頭とした開発部門があるが、それとは別に秘匿性が高い魔道具の製作に関わらせるつもりなのだ。
 正確に言えば、考助が開発した魔道具で量産が可能になりそうな魔道具の製作だ。
 考助としては普通に第五層でも構わないと思っていたのだが、考助の構想を話すとシュミットとダレルが秘匿したほうが良いと別の階層で彼らを育てることになったのだ。
 彼らの存在が明るみに出ると、他の組織がどういう態度に出てくるのか分からない、という理由だ。
 いくらなんでも神のおひざ元である塔でおかしな真似をしてくる者が出てくるとは考えにくいが、技術を盗むことなどは普通にやってくるだろう。
 そうしたことを防ぐ意味での、手の届かない階層への隔離なのだ。

 集まった奴隷たちに考助はある魔道具を手渡していった。
 これも考助が開発したもので、魔道具作成で一番大事な魔力操作の力をさらに伸ばすことが出来る道具だ。
 これだけでも売れるとシュミットは言っていたが、今のところは売りに出すつもりはない。
 あるいは、ここで作り出すこともあるかも知れないが、それがあったとしてもまだ当分先の事だろう。
「というわけで、しばらくの間はそれで訓練をしてもらうから。ある程度の数がこなせるようになったら、今度は実際に製作してもらうよ」
 考助からそんなことを言われて、十五歳以上の年長組は神妙な表情になった。
 その年長組の顔にてられたのか、年少組はおとなしく渡された魔道具をいじっていた。
 ちなみに、考助が彼らの主人に当たることは説明されているが、現人神であることまでは説明していない。
 それは、ある程度信頼されてからでいいだろうと、ここまで彼らを連れて来たシュミットが言っていた。
 考助にしてもわざわざ喧伝するつもりはないので、そのままにしているのであった。

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 考助が彼らを使って何をしようとしているのかというと、魔道具を作成する際に魔力の操作の精度をより高くすることを狙っていた。
 それが狙い通りにいったために、考助が求めるレベルに達した者から、道具の製作をしていくようにしてもらった。
 考助が考案したマジックボックスは、空間魔法が使えなくてもある反応を魔力で促進すれば出来るように考えてある。
 要は素材そのもののもつ性質を伸ばせば、求める能力を持つ魔道具が完成するというわけだ。
 初めて聞いたそれを聞いたダレスが顔を青くしていた。
 はっきり言えば、魔道具作成の根本から考え直す出来事なのだが、考助にしてみれば何を今さらという感じだ。
 そもそも現在使われている魔道具も似たり寄ったりの製法で作られている物もある。
 単に作っている側がそれに気づいていないだけなのだ。

 狙い通りに成長してくれた奴隷たちは、クラウンの魔道具作成の中核をなしていくようになる。
 イスナーニの開発部門が開発した魔道具もまた、彼らが作成することになっていくのであった。
というわけで、クラウンの魔道具がどのように作られているか、でした。
元々は、普通に外注していたりしたのですが、奴隷がつかえると分かると移り変わっていき、また人数もどんどん増えて行きます。
ちなみに、成長した彼らは製造している物に合わせて、そこそこの高給取りになって行きますw
残念ながらいる階層から移動することはできませんが、買い物はシュミットがしっかりと手配をしているので、不便なことはありません。
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