挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その2)

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

349/1310

(4)子供

 魔道具の開発にひと段落がついて、くつろぎスペースのソファーで寝転がっていた考助に、とある訪問者が駈け込んで来た。
 駈け込んで来たのは、大天狐のキリカだった。
 キリカの勢いに、すぐ傍にいたワンリが驚いて飛び上がったほどだった。
 そのワンリが注意をするより早く、考助がその場にいることを見つけたキリカが大声で叫んだ。

「産まれました!」

 その言葉に、注意をしようとしていたワンリは言葉を止め、寝転がっていた考助は跳ね起きた。
「そうか。無事に産まれたか。よかった」
 キリカがいう事を理解した考助は、安堵と喜びで笑顔を浮かべた。
 考助は初めての出産を控えたフローリアに、大天狐のキリカと大地狐のフウリを付けていた。
 二人共出産を手伝う事は当然出来ないが、護衛兼気を紛らわす存在になってくれればと思っての事だった。
 フローリアも有難く感じていたようで、すぐに二人になじんだようだった。
 出産間近のフローリアは、気軽に管理層に来ることが出来なくなってしまっていた。
 だが、二人が交互にフローリアの様子を伝えに来ていたので、考助もさほど心配せずに日々を過ごすことが出来たのである。
 もっとも、完全に心配がなくなるわけではないのは、男としては当然だろう。
 そんなこんなで、もうそろそろ出産という事を聞いていた考助は、いつになるんだろうと首を長くして待っていたのだ。
 ちなみに、陣痛がきたことは、フローリアに口止めされてわざと報告しに来ていなかった。
 そんな話を聞けば、他の事に全く手がつかなくなるだろうと考えての事だった。
「ところで、男の子? 女の子?」
 どちらでも構わないのだが、まずそう聞くのは当然の事だろう。
 ところがそう聞かれたキリカは、虚を突かれたような表情になった。
「・・・・・・・・・・・・あ」
 そう呟いたときのキリカは、全身で聞いてませんでした、と訴えていた。
「き、聞いてきます・・・・・・!!」
 慌てて取って返そうとしたキリカを、考助が止めた。
「ちょっと待って! 持って行ってほしい物があるから」
 その考助の言葉に、慌ててブレーキを掛けるキリカであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 キリカの様子に不安を覚えたのか、ワンリがついて行った。
 そのワンリが戻って来たのは、一時間程の時間が経ってからだった。
 その時には、くつろぎスペースには、フローリアとシルヴィアを除いたメンバーが集まっていた。
「お、遅くなってごめんなさい!」
「いや、シルヴィアと話をしていたんだろう? これくらいなら大丈夫だよ」
 流石に出産したばかりのフローリアと話し込んできたとは思わなかったが、シルヴィアと話をしていたのだろうと当りを付けた。
 それは事実その通りだったので、ワンリもコクリと頷いた。
「う、うん。色々話してたら遅くなっちゃった」
「はいは~い。反省はもういいから、今はフローリアと子供の様子を聞かせて」
 再び謝ろうとするワンリを遮って、ピーチが話をするように急かした。
 皆、早く子供の様子を聞きたいのだ。
「あ、はい。えっと、まず性別ですが、男の子だったよ。それから・・・・・・」
 まずは性別から始まって、自分が見て来た様子を語りだすワンリ。
 そのワンリに対して、メンバー達も次々と質問を繰り出して行った。
 ちなみに、メンバーたちがフローリアの所に行かないのは、前もって決めていたことである。
 赤ん坊が生まれたという事で、ラゼクアマミヤは現在、最大限の警戒態勢を取っている。
 その状態の場所に、管理メンバーが揃って押し掛けると、どんな騒ぎになるか分かった物ではない。
 頃合いを見計らってから順番に様子を見に行くという事になっているのだ。
 特に現人神である考助が来ていると知られれば、それこそ大騒ぎどころではない騒ぎになるだろう。
 早く我が子を見たい考助としては、複雑な心境だったがこればかりはどうしようもない。
 この時ばかりは、現人神になったことを恨めしく思う考助なのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 質問攻めにあっているワンリを見ていた考助に、エリスから緊急の交神が入って来た。
 今では電話の着信のように、いきなり言葉を聞かなくても済むようになっている。
 急ぎのようだったので、慌てて出てみると、すぐに神域に来てほしいという事だった。
 そんなことを言われるは初めてのことだったので、考助も慌てて神域へと向かった。
 何か大事が起こってからでは遅いのだ。

「ごめんなさいね。急に呼び出したりして」
 考助が前に来ると、早速アスラがそう口にした。
「いや、それはいいんだけど、何かあった? タイミング的に子供のこと?」
「鋭いわね。ビンゴよ」
 アスラの様子から、重苦しい話ではないと察することは出来たが、わざわざエリスを通して緊急に呼び出しをするくらいだ。
 何かがあるのは間違いないと、少しだけ考助は身構えた。
「そう身構えないで。確かに緊急で呼び出したけど、少しでも早く知らせた方が良いと思っただけだから。少なくとも、今すぐ何かが起こるとかじゃないわ」
 そう言われて、少しだけ固くなった体をほぐしてから聞く態勢になった。
「わかった。それで、何かあった?」
「ええ。貴方の子供だけど、世界にとってもかなり特殊な存在になりそうよ」
「・・・・・・というと?」
 考助は、少しだけ警戒して聞いた。
 特殊な存在というのは、時として迫害などの対象にもなり得るからだ。
「子供が出来ていた時からある程度は予想していたのだけれどね。人神というか神人というか、そんな感じの種族になっているの。しかもこれが一代限りなのか、この先も続くのかはまだ不明」
「えーと、つまりはどういうこと?」
「早い話が、こっちよりの種族になっているってこと」
 アスラが言うには、生まれた子供はより神に近い存在になっているという事だった。
 だからといって神になれるというわけではない。
 神になるためには、相応の条件を満たさないとなれないのは、考助の子供でも同じことだ。
 要するに、生まれた時から神力を使う事が出来る種になっているという事だった。
 この世界において、考助のような例外を除けば、生まれたその時から神力を使える種というのは、特殊な扱いになる。
 考助の子供は、その特殊なカテゴリーに含まれるという事になるのである。
「詳しくはもっと成長しないと分からないけど、一番分かりやすいものだと、寿命は普通のヒューマンより長くなるとかね」
「そういうことか・・・・・・」

 他にも普通のヒューマンと比べて違ってくることは出てくるだろうが、それはまだよくわからないという事だった。
 アスラの用事は子供の事に関してだけだったらしく、考助はアスラに感謝しつつ送還陣が使えるようになる時間まで待ってから管理層へと戻った。
 考助が神々に呼び出されたことを知っている面々は、戻って来た考助を心配そうに見て来た。
 神々の話なので、自分たちが聞いていいものかどうかを図りかねたらしい。
 そんな心配をよそに、アスラから聞いた話をメンバー達にも話しておいた。
 いずれは彼らの子供にも関係するかもしれないのだ。
 流石に出産したばかりのフローリアには、今すぐ伝えることはせずに後からシルヴィアを通して話してもらうことになった。
 そのため、フローリアに気付かれないように、ワンリにシルヴィアを呼び出してもらった。
 考助から話を聞いたシルヴィアは、すぐに事情を理解したらしい。
 場合によってはエリスとも連絡が取れるシルヴィアが、フローリアと子供の傍にいることは大きいのだ。
 何かあればすぐに連絡を取ることを約束してから、フローリアの元へと戻って行った。
 アスラから聞いた話では、考助の子供に関しては、相手がヒューマンに限らず同じようなことになるらしい。
 そのことを前もってメンバー達にも伝えておいた。
 それを聞いたからと言って、子供を産むのを諦めるような者達ではなかったが、呆れたような表情になったのはいつもの事だろう。
 結局、無事に子供が産めるようになっても、色々な問題が付きまとうことになる一同であった。
キリカとフウリは、この後子供の遊び相手として、大活躍しますw
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ