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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ(その2)

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(2)照明

「スライムの繁殖、ですか?」
 考助を前にしてケネルセンの六侯であるロイスが首を傾げた。
 ロイスの心境としては、突然何を言い出すのか、と言った所だ。
 考助はシュミットを伴って突然ロイスの元にやって来た。
 まだケネルセンがアマミヤの塔の傘下に入ると決まったばかりで、色々と忙しく動いてた時だ。
 そんな時に考助とシュミットが来たのだから、傘下入りに関しての事だと思っていた。
 それが、いきなり飛び出して来たのが、スライムの繁殖は出来るのか、という質問だったのだ。
 ロイスでなくとも戸惑うのは当然だろう。
 とはいえ、ロイスも六侯の一人だ。
 聞かれたことに関してすぐに頭を巡らせた。
 考助達が来たのは、ロイスが六侯の中でも畜産関係に強いからだろう。
 質問内容からでもそれは分かる。
 とは言え流石のロイスもモンスターを繁殖するというのは聞いたことが無かった。
「残念ですが、はぐれのモンスターを飼うというのは聞いたことがありますが、繁殖するというのは聞いたことがありませんね」
 素直にそう言うと、シュミットも頷いた。
「やはりそうですか。もしかしてと思ったんですが・・・・・・」
「お力になれずに・・・・・・」
「いやいや、それは元々予想していたからいいんです」
 残念そうな表情になるロイスに、考助が手を振ってから続けた。

「本題はスライムの繁殖は可能かどうかを聞きたいんです」
 それを聞いたロイスは、何の冗談かと考えた。
 そもそもモンスターを繁殖させて何の意味があるのかと思ったのだ。
 だが、考助とシュミットの表情を見て本気なんだと分かった。
 すぐに考助が言っている事が可能かどうかを頭の中で検討してみる。
「・・・・・・正直なところ、やってみないと分からない、という所ですね」
 ロイスがそう言うと、考助が感心したような表情になった。
 考助とすれば、無理だと言われるかと考えていたのだ。
「もし繁殖が上手くいったとして、どれくらいの価格になります?」
 そう現実的な質問をしたのはシュミットだった。
「そもそもどんなことに使うのかにもよると思いますが?」
 いきなり繁殖できるかどうかを聞かれたので、ロイスはスライムをどんなことに使うかも聞いていなかった。
 かかる経費もそれによって当然変わってくるのだから、即答できないのも当然だろう。
「それもそうでしたね」
 シュミットがそう言って頷いてから、ある物をロイスの前に出して来た。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「これは・・・・・・照明ですか?」
 出された物を見たロイスが、最初に出した感想がそれだった。
 照明器具は、貴族や裕福な商人などの屋敷で使われている高価な魔道具だ。
 高価になる理由が、魔法で光を維持するための仕掛けに高度な技術が使われているのと、その魔法の効果を発揮するための魔力を込めるのに手間がかかるためだ。
 お抱えの魔術師などがいる者達であれば問題は無いのだが、そんな者を抱えていられるのが先の二種類の人種という事になる。
 勿論、その魔道具自体も非常に高価な物になっている。
 ロイスが疑問に思ったのは、照明器具とスライムが結びつかなかったのだ。
「そうですね。実はその照明器具は、スライムが燃料として使えるようになっているんです」
 開発をした考助がそう切り出した。
 考助とて元々ある魔道具をただ真似して作るわけではない。
 一般の家庭でも使える物が出来ないかと色々と試行錯誤して出来たのが、今シュミットが出している試作品だった。
 ちなみに考助としては、まだ表に出すつもりは無かったのだが、ポロリと口にしてしまったのをシュミットが聞き逃さなかったのだ。
 是非とも見せてほしいとねだるシュミットに渋々出したのである。
 考助としては、どうしても燃料が必要になってしまうのでその燃料代が嵩んでしまうと、安く提供したいという元々の目的から外れてしまうのが不満だったのだ。
 それをシュミットが検討した結果、ロイスの元に来るという事になったのだ。

 話を聞いたロイスが納得したように頷いていた。
「なるほど、それでスライムですか」
 そもそもスライムはどこにでもいることで有名なモンスターだ。
 それから考えれば、繁殖も簡単だろうと当て込んで来ていることもわかる。
 それに、考助が作った魔道具に必要なスライムは、オイルスライムといって誰にでも倒せるモンスターとして有名な種だった。
 また、誰でも倒せるわりに、使い道が全くないスライムとしても有名だった。
 他のスライムは、安価ではあっても使い道があるため、底辺に位置する冒険者の小遣い稼ぎになっている。
 ただ、オイルスライムだけは、全く用途が無いので今まで誰にも見向きもされていなかったのである。
「といって、一般家庭にもこれが広まりだすと、どうしても野生のものだけでは足りなくなる可能性もありますから」
 そう付け加えたシュミットに、ロイスは大いに納得した。
 いくらどこにでもいるモンスターとは言え、冒険者たちが乱獲をすれば数が足りなくなることは目に見えている。
 照明でどれくらい必要になるかは分からないが、一般家庭全ての家に賄えるだけの量が捕獲できるとは限らない。
 結果として燃料自体が高くなってしまうので、それでは意味が無くなってしまうのだ。

「・・・・・・全く手を出したことが無い分野なので、やってみないとはっきりしたことは答えられませんね」
「そうですか」
 残念そうな表情になったシュミットに、ロイスは右手でちょっと待ってという動作をした。
「今のは、即答は出来ないという意味です。少しだけ時間を貰えませんか? 実験的にスライムの繁殖が出来るかどうかを試してみます」
 それを聞いたシュミットも明るい表情になった。
「おお! では・・・・・・!」
「早速、検討してみます。そういうことでしたら、出来るだけ安くできないと意味がないですからね」
 ロイスが力強く返事を返して、モンスターを繁殖させるという前代未聞のプロジェクトが始まるのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 アースガルドの世界では、魔物使いやモンスターテイマーという存在はそれなりに存在している。
 だが、モンスターを育てるいわゆるブリーダー的な職は存在していなかった。
 馬とかの繁殖は普通に行っているので、モンスターブリーダーがいてもおかしくはないと考助は思っていたのだが、そう甘くはなかったのだ。
 先の二つの職は、普通に野生に存在しているモンスターを捕獲したうえで調教する事で成り立っているのだ。
 そもそもモンスターは見つければ討伐する対象となっている世界なので、わざわざ繁殖させるという発想が出ないのも当然なのかもしれない。
 そんな中で始まったスライムの繁殖だったが、当初のロイスの予想以上に上手くいった。
 選んだ対象がスライムだったのも良かったのかもしれない。
 必要な餌などもほとんどえり好みをせずに食べていたので、逆に他の動物たちよりも手間がかからなかったくらいだったのだ。
 結果としてすぐさま採算が取れると判断して、大規模にスライムの繁殖をさせ始めたのである。

 ロイスのスライムの繁殖の目途が立ったところで、シュミットも考助作の魔道具を一般に向けて販売し始めた。
 そもそも安価に作れることを目的としていたので、普通の魔道具職人でも作れるようになっていたのが大量生産を可能にしていた。
 こうしてできた安価な照明は、すぐに一般にも受け入れられた。
 当初懸念されていたオイルスライムが狩り尽されるのでは、という心配は杞憂だった。
 スライムが狩り尽されることは無かったのだが、一般家庭の需要に追いつくためのスライムを狩る冒険者の数が足りなくなった。
 スライム一匹の値段などたかが知れているので、ルーキー冒険者以外に敬遠されてしまったのが大きな理由だった。
 それでも、その頃にはロイスのスライム繁殖が上手くいき始めていたので、さほど大きな混乱は起きなかった。
 最終的には、考助が考案した安価な照明器具は、一般の家庭にも広がっていく事になるのであった。
考助の実用化できた魔道具でした。
この件では魔道具だけではなく、モンスターの繁殖という事にも成功しています。
そちらは考助の功績というよりもロイスの功績になります。
後にロイスがモンスターブリーダーの祖と呼ばれる・・・・・・ようになるかどうかは不明ですw
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