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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 旅(フロレス王国編)

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(13)引退

祝! ブックマーク登録8000件(1/7 17:35現在)
本日、ブックマーク登録が8000件に到達しました。
これも皆様がお読みいただいているおかげです。
いつもありがとうざいます。
 フロレス王国のマーシャル侯爵は、フィリップ国王に召喚されたために王の私室に向かっていた。
 国内の貴族を個人的に呼ぶ場合は、謁見の間ではなく私室に呼ばれることが多いため特に疑問も感じていない。
 むしろ何か特別なことを任されることが多いので、何か栄誉なことでも任されるのだろうかと期待に胸を膨らませていた。
 この時のマーシャル侯爵は、完全にエイレンの町での騒ぎを忘れていた。
 一地方都市の冒険者が起こしている騒ぎなど、マーシャル侯爵にとってはその程度の事なのだ。
 こうして蟻地獄に囚われた哀れな蟻のように、吸い寄せられていくのであった。

 フィリップ国王の言葉に、マーシャル侯爵は頭が真っ白になった。
「は・・・・・・?」
「おお、いかんな。私より若いのに耳が遠くなったか?」
 呆けるマーシャル侯爵に、フィリップが冗談を飛ばして来た。
 勿論、言われた当人はそんな冗談に反応できる余裕は無かった。
「どういう、事でしょうか?」
「どうもこうもない。マーシャル家は、今後しばらくの間は親貴族としての権利をはく奪する。あとは、財産没収で勘弁してやるから十分反省するといい」
 フィリップは、白くなるマーシャル侯爵を見つつ平然とした表情で同じことを繰り返した。
 心の中では、お主のような者は絶対に反省はしないだろうが、と思っているが言葉にすることはしない。
 言った所で意味がないことは言わないようにしているのだ。
「な、な、な、何故ですか!」
 マーシャル侯爵にしてみれば寝耳に水の話に、相手が国王であるにもかかわらず大声を張り上げてしまった。
「うるさいのう。そんなに大声を張り上げなくとも聞こえておるわ」
 わざとらしく片方の耳を抑えつつ、フィリップは顔をしかめた。

「何故も何も、冒険者から余計な金をぶんどっておいて何のお咎めもなしというわけには行くまい?」
 まさか国王からその話題が出てくるとは思ってもみなかったマーシャル侯爵だったが、ある情報を思い出した。
「ま、まさか最初から?」
 フィリップ国王の孫であるレナルド王子がエイレンの町に向かっているという話は聞いていた。
 だが、その到着はまだ先の話であるはずだった。
 だからこそ決着を急ぐために、正規軍の出動を許可したのだ。
 しかしながら最初からこの件を調査するために向かわせたのであれば、話が違って来る。
 軍の命令が届いた段階で、転移魔法でも使って少数精鋭がすぐにでも向かえばいいのだ。
 それくらいのことはマーシャル侯爵にもすぐに思いついた。
 マーシャル侯爵がこのことに気付かなかったのは、最初から国王が例の税金について知っていると思っていなかったためだ。
 今まで上手くいっていたのだから、今回も上手くいくと思っていた。
 それにしても疑問が一つわいてくる。
 これまでは上手くやっていたのだ。
 なぜ突然国王がこの情報を仕入れることが出来たのかと不思議に思った。
 勿論国王が自分と同じように<影>を使っていることは知っているが、そこからの情報とは思えなかった。

 自らの手で軍の命令書に署名をしていることはわかっている。
 最早言い逃れは出来ないと悟ったマーシャル侯爵は、疑問に思ったことを聞いた。
「一体どうやってお知りになったのですか?」
 知りたいのは、どうやって今回の騒ぎの話を聞きつけたか、である。
 似たような騒ぎはあちらこちらで起こっているため、国王がこの情報だけを選択して、税の不正をしていることに気付いたのはどうも納得がいかない。
 他の誰かから話を聞いたとしか思えないのだ。
「私にもさまざまな所に情報源がある・・・・・・といいたいところだが、今回ばかりはそれらからではないな」
 最初からみっともなくあがこうともしないマーシャル侯爵に、フィリップが情報を出した。
 勿論マーシャル侯爵を気遣っているとかではない。
 彼を起点に、その情報が広まってくれること期待しているのだ。
 完全にフィリップの国王としての政治的な意図がある。
「では・・・・・・?」
「何。アレク経由で仕入れた情報だ」
 フィリップは肩をすくめてあっさりと言い放った。

 アレクがラゼクアマミヤの宰相の座に収まっていることは、既にフロレス王国では知れ渡っていた。
 それどころか、その娘のフローリアが女王の座に収まっているのだ。
 かつて彼女の持つ加護の力を狙って様々な駆け引きが行われていたのだが、その者達が落胆したのは記憶に新しい。
 マーシャル侯爵もそのうちの一人だったのだ。
 というよりもフロレス王国の貴族でその権力闘争に関わっていない者の方が珍しいだろう。
 その思惑を見事に外されてしまったのだから見事というしかない。
 流石に一国の女王となれば、簡単に手を出すわけにもいかないのだ。
 しかもかの国は神の庇護のもとにあるともっぱらの噂だ。
 そもそもアマミヤの塔自体が神の手で管理されているのだから、そう推測するのも当然だろう。
 一応表向きは、神が直接政治に関わっているわけではないと発表されているが、そんなことを信じる者は誰もいなかった。
 ラゼクアマミヤは、他の大陸の国家にとっては今のところ基本的に不介入の立場をとるしかない存在になっていた。

 それはともかく、今回の件にアレク元王子が関わっているという事に、マーシャル侯爵は首を傾げた。
「ラゼクアマミヤが、何故この件に?」
「勘違いするな。別に国家として関わってきたわけではない。一個人として教えてもらえただけだ」
「・・・・・・アレク様が、この件を知っていたと?」
「そういう事になるな。・・・・・・もういいだろう。これ以上、時間を取られるわけにもいかないからな」
 フィリップはそう言って、話を強引に打ち切った。
 わざわざ神本人がこの国に来ているなどと教えるつもりはないのだ。
 罰を受ける身となったマーシャル侯爵にしても、それ以上の追及は出来なかったのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 フィリップ国王から放たれた言葉に、その場にいた重鎮たちが一人を除いて驚愕の表情になった。
 その場でフィリップからされた宣言は、彼らにしてみれば寝耳に水の話だった。
 一人落ち着いていたのは、フィリップの息子のマクシム王太子だ。
「も、もう一度仰っていただいてよろしいですかな?」
 あまりの事に、重鎮の一人が思わずそう言った。
 フィリップはゆっくりと先ほどの言葉を繰り返した。
「今回の件の責任を取って儂は国王の座を引退する、と言ったのだ」
 いきなりの言葉に、流石に慌てた様子を見せる重鎮たち。
 その中で落ち着いているのはマクシム王太子だけなのは、事前に話を聞いていたわけではなくある確信があったからだ。

「そんなに早く、新しいひ孫が見たいですか?」
「当然だろう!」
 マクシム王太子とフィリップ国王の言葉に、騒めいていた会議室が静まり返った。
 そのすぐ後に、各所でため息が漏れだした。
 フィリップの孫・ひ孫の溺愛っぷりは、重鎮たちにとっては周知の事実なのだ。
「新しいひ孫、ですか?」
 重鎮の一人が首を傾げた。
 フィリップの直系の孫およびその配偶者が、妊娠したという情報は聞いていなかったのだ。
 何しろフィリップのひ孫となると、三世代先の国王候補という事になる。
 今のところ三世代先の国王になるであろう王子は順調に育っているので、よほどのことがない限りはその王子が国王という事になる。
 とは言え、子供の死亡率がそれなりにある世界としては、油断は禁物なのだが。
「何。フローリアに子供が出来たと話を聞いてな」
 それを聞いた重鎮たちが一斉に納得した。
 既にフローリアはフロレス王国とは表向きは関係がない事になっているので、重鎮たちの頭からは抜け落ちていたのだ。

「なるほど。今回の件を理由に引退をして、早くひ孫の顔を見たいと、言うわけですか」
 その直球の言葉に、フィリップは真顔で頷いた。
「理由としては最適だろう? 今の処分では軽すぎると、冒険者たちを抑えることが出来ない可能性もある」
 今回の騒ぎで複数の親貴族が関わっていることが判明したのだ。
 その全員を処分するには、余りに影響が大きくなりすぎるため爵位剥奪などの重い罪は負わせることが出来なかった。
 それでは冒険者たちがフロレス王国から離れて行ってしまう可能性がある。
 それはいくらなんでもまずいので、国王自らが責任を取るという形にすれば、冒険者たちにも貴族たちにも王家としての意思を示すことが出きるのだ。
 フィリップの言葉を聞いて、本格的に議論を交わす重鎮たちを見て、満足そうにうなずくフィリップであった。
長くなってしまったこの話も次回で終わりになります。
まだこの話では終わりませんw
フィリップの引退の話と、考助たちのその後をもう少しだけ書いて終わりになります。

ちなみにここまでの展開を見事に感想で言い当てた方がいらっしゃいます><
・・・・・・分かりやすかったですかね?w
感想頂いてた時には既に予約投稿していたので、手を加えたりせずにそのまま上げることにしましたw
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