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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第2部 塔のあれこれ

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(1)失敗

第二部開始です。
 エルフ族やヴァミリニア一族の塔への受け入れが終わってひと段落していた時の事。
 制御盤のモニターを前に、考助はうんうんと唸っていた。
 その状態になってからいい加減時間が経っている。
 そろそろ声を掛けてもいいだろうと判断したミツキが、考助に声を掛けた。
「何をそんなに悩んでいるの?」
 突然声を掛けて来たミツキに、考助はビクリとした後、ばつが悪そうな表情になった。
「設置できる物を見てたんだけどね。何に使うのかが分からない物があるんだ」
「へー。どんな物?」
 ミツキにそう聞かれた考助は、モニターのある部分を指さした。
 ミツキがそれを確認すると、そこにはあるアイテムの名前が書かれていた。

<ただの石>

 少しだけ考えたミツキは、首を傾げた後で考助に向いて言った。
「これ?」
「そう。ただの石。そう表示はされているけど、わざわざあるってことは、絶対何かあるんだ! それがわからなくて」
 そう言った考助は、再び思考に没頭するような表情になった。
 それを見たミツキは、とてもではないが言い出せなかった。
 「普通にただの石じゃないの?」と。

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「それで、主様は今、ああなっていると?」
 ミツキから事情を聴いたコウヒは、ジト目になってミツキを見た。
「いや、だって、とてもじゃないけど言いづらくて」
 ミツキがそう言うと、二人の視線が考助の方に向かった。
 その考助は、モニターが置かれた机の上に突っ伏していた。
 漫画であれば、その頭の上には湯気が描かれていただろう。
 誰がどう見ても、考えすぎて力尽きている図だった。
 それを再確認したコウヒは、一つため息を吐いてミツキに言った。
「わかりました。私が言って来ましょう」
「お願い。私には無理」
 ミツキが両手を合わせるのを見て再びため息を吐いたコウヒは、そのまま考助に近寄って行った。

「主様」
「・・・・・・ん? ああ、コウヒか。何?」
「あまり根を詰め過ぎずに、少し休まれてはいかがでしょうか?」
 コウヒがそう言うと、考助は「うーん」と唸った後、首を振った。
「いや、もう少しで何かがわかりそうなんだ」
「そうですか」
「そうだ!!」
「!? な、何ですか?」
 突然大声を上げた考助に、コウヒは若干驚いた表情を見せた。
「コウヒも何か思いつかないか考えてみてよ。これなんだけどさ・・・・・・」
 そう言いつつミツキの時と同じように<ただの石>を指さす考助。
「うっ・・・・・・!? あ、えっ、ええと・・・・・・」
 その考助の表情を見たコウヒは、少しばかりしどろもどろになって、わざとらしくコホンと咳ばらいをした。
「え、ええと・・・・・・いきなりは思いつかないので、少し考えてみます」
「うん! お願いね」
 嬉しそうにそう返事をした考助に、コウヒは何とも言えない表情を浮かべてミツキの所へ戻るのであった。

 そんなコウヒをミツキは生暖かい視線で出迎えた。
「な、なんですか?」
「ううん。べーつにー」
 からかうようにそう言って来たミツキを、コウヒはしばらく睨んでいたがやがてこう言って来た。
「と、とにかく、今は好きなだけ考えさせてあげましょう」
 コウヒがそう提案すると、ミツキもそれに乗っかって来た。
「そうね。そのうち自分で気づいてくれるはずよ」
「そうです。主様の為にも自分で気づいた方が良いです」
 二人そろって強引にそう納得をすることにした。
 この後、二人がこの件について、考助に何かを聞いたり提案することは決してなかった。

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 単価が安いので、ありとあらゆることを試してみた。
 ただ地面の上に置いたり、生えている木の上に置いたり。それこそ神水の中に入れてみたり。
 設置不可の場所もあったりしたが、物が物だけにほとんど全ての場所に設置が出来るので思いつく限りの所に設置した。
 ところが、<ただの石>はただの石で、特に大きな変化が出たりはしなかった。
 それでも考助は、諦めなかった。
 流石に<ただの石>だけに関わっているわけには行かなくなったのだが、合間を見ては色々な所に<ただの石>を設置しまくった。
 ここまで来ると、意地を通り越してただの惰性になっている。

「ん? これは何だ?」
 考助が手書きで書いている地図のような物を見て、シュレインが首を傾げた。
「ああ、いままで石を設置した個所を忘れないように書いているんだよ」
 それを聞いたシュレインは呆れたような表情になった。
「なんだ。まだ続けてたのか? いい加減諦めればいいのに」
「何を言う! 諦めた時点で終わりなんだぞ?」
「そんなもんかのう」
 首を傾げるシュレインに、考助はしたり顔で続けた。
「そうそう。こういう事は失敗してなんぼだからね」
「そうかのう。ただの石はただの石だと思うのだがの?」
「そうだけど、そうじゃないかもしれない! 少しでも可能性があるんだったら、試してみる価値はある!」
「そんなもんかのう?」
「そんなもんなの」
 もう一度首を傾げたシュレインに、考助は頷き返した。

 首を傾げたまま制御室から出たシュレインは、こちらの様子を窺っていたコウヒとミツキに気づいた。
「何かあったかの?」
「ううん。何でもないのよ。シュレインでも駄目かと思っただけ」
 そう言ったミツキの隣では、コウヒが頷いていた。
「?」
「いいのよ。こっちの話だから。大したことではないわ」
「そうか?」
「ええ。そうよ」
 そう言って頷くコウヒとミツキに、内心では疑問符を浮かべながらシュレインはヴァミリニア城の様子を見に向かった。

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 結局、<ただの石>の設置は、考助が満足するまで続けられた。
 最後になると、既に皆が諦めてまたやっているのか、という感じで放置していたせいもあるのだが。
 その結論としては、
「<ただの石>は、ただの石にしかならない!」
 であった。

「なんだ。結局そういう事になったのか」
「そうなんだけどね。なんかそういう風に言われると、悔しい気がするな」
 若干呆れたような視線を向けて来たシュレインに、考助が複雑な表情になった。
「まあ、いいや。とにかく、そういう事だから他に何か気づいたことあったら教えてね」
「まあ、いいが・・・・・・。無駄じゃないかのう?」
「無駄って言うな。そもそも無駄なんてことは一つもないんだよ。あることを実行して失敗したと言うのは、それはそれで一つの結果なんだから」
「そんなもんかのう?」
「そんなもんなの」
 首を傾げるシュレインに、考助はそう念を押した。
 別に考助は意地になっているわけではなく、わざわざ失敗すると分かっていても実際にやってみることが大切だと考えているのだ。
 万が一、それを行ったことで他に何か別の事が起こるかも知れない。
 それをきちんと確認するのが何よりも重要なのである。
 頭の中で分かっていても、実際にやってみるのと想像するだけでは、天と地ほどの差の開きがある、と力説する考助なのであった。
第二部は、第一部のように時系列に沿って話が進まずに、あちこち飛んだり戻ったりします。
子供たちの話をしたと思ったら更に未来の話を書いたり、過去に戻ったりですね。
きちんと分かるように書くつもりですが、これいつの話だ、と思うようなことがあれば感想でご指摘ください。
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