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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第1部 これから

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エピローグ?

 重厚なつくりを思わせる机に向かって、その主が書き物をしていた。
 普通の人間種からすれば、到底及ばない力を持つ者といえども紙の書類からは逃れられないらしい。
 そんな様子を見ながら考助は、初めてこの部屋に来た時のことを思い出していた。
 あの時の自分は、何が起こっているかさっぱりわからずに、相当混乱していた・・・・・・ように思う。
 目の前の主に言わせれば、思っていたよりも落ち着いていて拍子抜けしたという話だった。
 見たこともない景色に惑わされたと思っていたら、これまた見たことのないような美人がいきなり現れて突然この屋敷に連れ込まれた。
 次々に起こる出来事に呆然としたまま今いる部屋に連れて込まれたと思ったら、これ以上の美人はいないだろうと思っていた以上の美人が現れた。
 その美人が言うには、自分はもう既に死んでいる、ときた。
 ここまで考えた考助は、前言撤回した。
 考えてみれば、よくもまあパニックにならなかったものだと思い直した。
 机に向かって書類整理をしているその美人を見てから、ああ、と考え直した。
 今から思えばこの美貌の主であるアスラの前で出来るだけ醜態をさらしたくないと思っていたのかも、と。

 そんなことを考えながらずっとアスラを見ていたら、流石にその視線に気づいたらしい。
「どうしたの?」
 と、書類から視線を外して考助を見て来た。
「ああ、いや。何でもない。邪魔してごめん」
「いいのよ。もう終わったから」
「そう」
 思えば、アースガルドの世界を見守っている神々を統べる存在であるアスラとこうして気軽に話せること自体が、おかしな状態といえるかもしれない。
 今更ながらにそんなことに思い至った考助だった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「それで? 今日はどうしたの?」
 元々考助は、定期的に神域に来ることになっていた。
 だが、この日は定期的に来る日ではない。
 定期訪問時以外に来てはいけないと言われてはいない、どころか、来てもいいと言われているので、特に問題はない。
 ないのだが、こうして来ることは珍しいことだったので、アスラがそう聞いてきた。
「うん。折角の機会だから聞いておこうと思ってね」
「何を?」
「僕は今のまま地上にいていいのかな?」
 唐突に思える考助の質問に、アスラは少しだけ考える仕草を見せた。
「私は良いと思うけど・・・・・・何かあった?」
「いや、特には。単に影響力が強い地上に居続けていいのか、疑問に思っただけ」
「そういう事なら、気にしなくていいわ。最初の時に私言ったわよね? 考助の好きにしていいって」
 そう言われて考助は最初の時のことを思い出した。
「・・・・・・そんな事、言われたっけ?」
 どうしても思い出せない考助が首を捻っていると、アスラがくすくすと笑いだした。
「言ってたのよ。それは、現人神になった今でも変わっていない。本当に、考助の好きにしていいの」
「そうなのか」
「そうなのよ」
 頷く考助に、アスラは笑みを見せるのであった。

「・・・・・・そう言えば、僕がここに来た原因って分かったの?」
 初めてこの部屋に連れてこられたときに、アスラが言っていた。
 輪廻から外れることは珍しくないことだが、その魂がこの神域に来ることは初めてだと。
 そして、その原因は全く分からないとも言っていた。
「それがね。分かったとも言えるし、分からないとも言えるのよね」
「? どういう事?」
 珍しい曖昧な回答に、考助は首を傾げた。
「貴方がここに来たのは、本当に偶然。でも、偶然ここに来ることはあり得ないのよ。だから分かったともいえるし、分からないとも言えるの」
 考助がこの[常春の庭]に来てから、アスラもすぐに調査を始めた。
 だが、何度調べても考助が何かの意図をもってここに入り込んだとか、もしくは送り込まれたという証拠は見つからなかった。
 結果として偶然来たとしか思えないのだが、この神域に偶然来ると言うのは、神域の構成上あり得ないことなのだ。
 まさしくお手上げの状態といえる。
「なるほどねえ」
「あら。あまり気にしてないのね?」
 気のない考助の返事に、逆にアスラが疑問符を浮かべた。
「いや。何者かの意思で連れてこられたとかじゃないんだったら、大して問題でもないし」
「それはないとだけ断言しておくわ」
「だったらいいや。今はもう、僕はこの世界の住人だと思っているし」
「そう」
 特に大きな変化を見せず淡々とそう言った考助に、アスラも小さく頷くのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 セントラル大陸におけるラゼクアマミヤの建国。
 それは、大陸史のみならず、アースガルドの世界において非常に重要な役割を果たした。
 それまでのセントラル大陸では果たせなかった国家の設立、後に世界中に広がることになるクラウンの設置。
 この二つだけでも、アースガルドの世界の住人で知らぬ者はいないだろう。
 特に、建国の母として知られるフローリア女王と、常にその傍らにいたとされている巫女シルヴィアは、アースガルドの歴史に燦然とその名を残している。

 フローリア女王は、少なくとも三人の子を残してそれぞれ重要な立場に就けさせた。
 長男は、ラゼクアマミヤの国王として。
 長女は、セントラル大陸にあるアマミヤの塔の管理者として。
 そして次男は、クラウンの長として。
 三人の子供たちの中では、長男が実績としては一番控えめだった。
 長男が、国王として何より一番大きい功績を残したのが、長く続くことになるラゼクアマミヤの基盤作りであった。
 その作った基盤に固執することなく、さっさと自身の息子に王の座を譲り渡したことでも有名だ。
 その三代目の国王は、フローリア女王に次ぐ為政者として名を残している。

 フローリア女王の長女が管理したアマミヤの塔については、もはやアースガルドの世界において、知らぬものはいないだろう。
 何しろセントラル大陸を守る二大兵器は、他大陸からの侵略を寄せ付けない物として、世界中の国家から恐れられているのだから。
 ただし、アマミヤの塔に関しては、意外なほど情報が少ない。
 国家が建国される前から冒険者たちに解放されているのだが、攻略状況がほとんど変わっていないのが原因だ。
 また、その塔を女性でありながら管理者として見事に使いこなしていた長女は、歴史に残る女傑として名が残っている。
 アマミヤの塔には、ラゼクアマミヤ王国以外にも他の集団が町を作っているという話も出ているが、これに関しても驚くほど詳細の情報が出ていない。
 勿論、転移門で出入りしている以上、何らかの痕跡は残っているので他の町があることは分かっているが、その住人達が頑として外に情報を出していないというのもある。
 中には、モンスターが集落を作っているという話さえあるが、真偽のほどは確認されていない。

 最後に次男が長となったクラウンに関しては、もはや語らなくてもいいだろう。
 クラウンカードという冒険者の世界では革命となる物を引っ提げて登場したクラウンは、瞬く間に世界を席巻していった。
 クラウンの長ともなれば、その影響力は一国の国王以上とさえ言われるような組織にさえなったのだ。
 もはやクラウンに立ち向かうようなギルドなど全く無いと言って良いくらいである。

 ラゼクアマミヤ王国の創世記には、数多くの者が名を残している。
 だが、そもそも国を作る礎となった現人神コウスケに関しての話は、驚くほど残っていない。
 これに関しては、諸説の話が残っているため断定することは出来ない。
 一番有力な説は、巫女シルヴィアが意図的に残さないようにしたとも伝えられているが、真偽のほどは定かではない。
 その真実は、完全に歴史の中に埋もれてしまっていた。
 だが、現人神コウスケに関して知らぬ者はいないだろう。
 何しろクラウンカードという世界を変えた魔道具を作ったのだから。
 今では誰もが持っているクラウンカードは、現人神がいなければこの世界には生まれていなかったのだから、まさしく神の偉業といえる。
 それ一つだけとっても現人神としての功績には十分なのだが、その他にも色々と逸話を残している。
 中には、本当かどうかを疑う物もあるのだが、そのほとんどはラゼクアマミヤとは関係のない話なので、ここでは割愛する。
 国作りをした者としてではなく、神としての話は嫌というほど教会で議論されているので、そちらにお任せしたい。
 また、フローリア女王をはじめとして、コウスケ神の周りにいた者達は伝説に伝え聞く上位種だったという話もあるが、これに関しても噂程度の域を出ていない。
 コウスケ神の事に関しては、神々も口を閉ざすことが多いので、確かめようがないと言うのもあるのだ。
 その理由も諸説あるのだが、どれも推測でしかないのでここで断言するのは避けておく。
 忘れてはならないのは、ラゼクアマミヤ王国が建国する前にコウスケ神を中心に傑物達が集まり、セントラル大陸初の国家の建国に至ることが出来たのだ、という事だけはここに記しておきたい。

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 ハドリー・チャールトン著『セントラル大陸の歴史』より
いきなりで驚くかもしれませんが、「エピローグ?」です。
「?」付ですw
一応こちらでも答えておきますが、まだ毎日更新は続けます。
どういう事かは、活動報告にて詳しく書きますので、其方をチェックしてください。
それでは。
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