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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第26章 塔と国家

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(10)おめでたい報告

 考助は百合之神社を訪れていた。
 特に神社に用事があったわけではない。
 ラゼクアマミヤが出来てからというもの、メンバーたちが忙しそうに動き回っているため何となく管理層ではゆっくり休みづらいのだ。
 気分は日曜日にゴロゴロしているお父さんである。
 身の置き所がないのであれば、いっそのこと手伝おうとするのだが、それはそれで拒否される。
 これは考助を突き放しているのではなく、現人神である考助が手を貸すという前例を作ってしまうのが良くないという考えのためだ。
 管理層にあるくつろぎスペースは、そもそも休むための場所なので考助が休んでいても誰も文句を言わない。
 問題は、考助の方にある。
 忙しそうに動いているメンバーがたまに戻ってきて、疲れた顔でくつろぎスペースで会ったりすると、何となく申し訳ない気になる。
 傍で誰かが忙しそうにしていると、何となく気になってしまうというのだ。
 それならと、魔道具を作っていれば気もまぎれるのだが、ずっと作り続けていると疲れてしまうので、休みも入れないといけない。
 すると、くつろぎスペースで休まないといけないわけで・・・・・・以下、ループということになる。
 そんなわけで、百合之神社を使うことにしたのだった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「あ、あの。ほんとにいいんですか?」
 コウヒに膝枕をしてもらいながら寝転がる考助に、サキが聞いてきた。
 最初は膝枕ではなく、普通に座布団のような物を下に敷いていたのだが、付いてきたコウヒが強引に膝枕にしたのだ。
 考助も抵抗せずに、その形に収まっていたので、どっちもどっちといえるのだが、初めて会った時からすると格段の進歩(?)である。
「ん~? 何が?」
「い、いえ。こんなところで休んでいて・・・・・・」
「あら、サキ。こんな所とはずいぶんじゃない?」
 突然ユリが現れて口を挟んできた。
「え・・・・・・!? え、えーと、そういう事が言いたいのではなくて・・・・・・!!」
 ユリの揚げ足取りに、サキが若干混乱したような表情になった。
「こらユリ。サキをからかうな」
「そうですね。失礼いたしました」
 考助が笑ってユリに視線を向けると、ユリも笑って頭を下げた。
「え?! えっと、あの?」
「ああ、気にするな。それに、ここにきていることは、他のメンバーも知っているから大丈夫だよ」
「え。あ、そうなんですか。よ、余計な心配でしたね」
「いやいや、そんなことないよ」
 そう言って穏やかに微笑む考助に、サキが頭を下げて出て行った。

「ここで休んでくれるのは嬉しいんですが、いいのですか?」
「なに? さっきも言った通りここにいることは、他のメンバーもちゃんと知っているよ?」
「いえ。そういう事ではなく。このままでいいのですか?」
「ああ、そういう事ね。・・・・・・よっと」
 コウヒの膝枕から体を起こした考助は、ユリの正面を向いた。
 ユリが言いたいのは、今この場で休んでいる事ではなく、これからどうするのかという先の話だ。
 膝枕の状態で答えるべきではないと思ったのだ。
「塔の事はともかくとして、もうクラウンとか国とかは僕の手を離れているからね。いっそのこと旅に出るとかも考えているかな?」
「ああ・・・・・・」
 やはりですか、とユリが答えようとしたその時、ガシャンという音がした。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 部屋にいた全員の視線が、音のした方を向いた。
 そこには、ワンリが若干青褪めた表情で立っていた。
 足元には、お盆と中身がこぼれた茶碗が落ちている。
 音の原因はこれのせいだった。
「お、お兄様、塔からいなくなってしまうの?」
「ああ、待って待って。違うから。慌てないで、落ち着いて」
 ワンリの勘違いに、考助が慌てて訂正した。
「・・・・・・違う?」
「違う違う。単に、旅に出るのも面白いかな、って思っただけだから。何かあってもシルヴィアと交神出来るし、すぐにここに戻ってこれるからね」
「いなくならない?」
「ならないならない」
 ジッと見てくるワンリに、考助は右手を左右に振った。
 実際、塔から出て行こうなどとは少しも考えていない。

 考助の返答に、ワンリはホッとため息を吐いた。
 そのワンリに、今度は逆に考助が聞いた。
「何で、いなくなるなんて思ったの?」
「えーと。・・・・・・なんとなく?」
 少しだけ視線を彷徨わせたワンリは、自信なさげにそう言って来た。
 ワンリにしても考助の様子を見てそう感じただけで、何か強い根拠などは無かったのだ。
 そんなワンリを慰めるように、考助に付いてきていたナナがワンリの傍に寄ってその手をぺろりと舐めた。
「ひゃん。ナナちゃん。くすぐったいよ」
 考助の返答とナナに安心したのか、ワンリが笑顔を見せた。
 その後、慌てて落としたお茶の処理を始めるのであった。

 しばらく同じように寛いでいた考助だったが、ふとその雰囲気を変えた。
「・・・・・・主様?」
 そんな考助の様子に気づいたコウヒが、そっと窺うように見て来た。
 考助の雰囲気が変わったことに気づいたのだ。
「ああ、いや。何気なく言ったけど、旅に出るって良い案かなと思ってね」
 ワンリの勘違いに答えるために出た言葉だったが、一度口にしてみると中々いい案に思えて来た。
「ですが、それは・・・・・・」
 旅に出ることは、考助自身には特に問題がない。
 先程ワンリに言った通り、百合之神社の機能を使えばいつでもすぐに戻ってこれるのだから。
 コウヒが気にしているのは、考助の事ではなく女性陣、特にフローリアの事だ。
 考助もコウヒが言いたいことはよくわかっている。
「ああ、言いたいことは分かるけど、多分大丈夫だよ」
「・・・・・・どういうことですか?」
「うーん。ここから先は、後で管理層に戻ってから。本人がいる前でね」
 考助はそう言って、答えをはぐらかした。
 コウヒもそれ以上は深く追及はしてこなかった。

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「話とは何だ?」
 管理層に全員が戻ったところで、考助が話を切り出すとフローリアがそう聞いてきた。
 ミツキだけは、晩御飯を並べるために食堂にいるが、それ以外のメンバーは全員がくつろぎスペースに揃っていた。
 勿論、考助が集めたのだ。
「うん。本当はもう少し安定してから伝えようと思ったんだけどね。フローリアの事だから、先に伝えておいた方が良いと思って」
 考助のその言葉に、一番最初に気づいたのは、シルヴィアだった。
 驚いたように、口元に手を当てている。
「まさか・・・・・・」
「さすが。こっち方面には、一番察しが良いね」
「ですが、早すぎでは?」
「ああ、勿論。エリスから聞いた情報だから」
 考助がそう言うと、シルヴィアは笑みを浮かべた。
 若干、涙さえ浮かべている。
 その二人の様子を見て、ピーチも何かに気づいたようにフローリアを見た。
 ピーチも同じように笑顔になっている。
 その当の本人はまだよくわかっていないようで、疑問の表情になっている。
「なんなんだ?」
 フローリアは、コレットとシュレインを見たが、その二人はまだわかっていないようだった。

 いつまでも引っ張るつもりはない考助は、一つ大きく深呼吸をしてからフローリアに重要なことを伝えた。
「フローリア、おめでとう。子供が、出来たみたいだ」
 フローリアが聞き逃さないように、考助はゆっくり一言一言伝えた。
 その言葉に、コレットとシュレインも一瞬驚いて、すぐに笑顔をフローリアに見せた。
 そのフローリアは、一瞬何を言われたのか分からないと言った表情になり、少し慌てたように言って来た。
「だ、だが、まだ何も・・・・・・いや、まさか・・・・・・」
「目に見えて変化が出るのは、まだもう少し先だって。でも確実に出来ているそうだよ」
 考助がこの情報を聞いたのは、百合之神社に行っている時だった。
 突然、エリスから交神を求められたのだ。
 今の考助であれば、道具の中継なしに交神することが出来る。
 その時の交神で聞いたのが、フローリアの妊娠の話だったのだ。
「で、では、本当に・・・・・・」
「うん。神々の見立てだから、まず間違いないだろうね」
 最初に気付いたのは、フローリアに加護を与えているスピカだったそうだ。
 調べてみると、間違いなく妊娠していることが確認できたため、慌てて考助に知らせて来たのである。
「そ、そうか。では、本当に・・・・・・」
 恐らく無意識の動作だったのだろうが、フローリアは右手をお腹にそっと添えていた。
 その表情に段々と笑みが浮かんできた。
 それを見た仲間たちが次々に祝福を口にした。

「「「「おめでとう!!」」」」

 仲間に囲まれているフローリアを見ながら、考助が笑顔になる。
「さあ、ご飯にしよう。今日はミツキが豪勢な食事を用意しているからね」
 既にミツキには、このことは伝えてある。
 勿論お祝いの食事を作ってもらうためだ。
「それは、楽しみだの」
 シュレインが心の底からそう言って来た。
 ミツキの食事は、まさしく絶品といえるのだ。
 全員が頷き、食堂へと向かった。
 その日の晩餐は、今までで一番豪勢で贅沢な物になるのであった。
ちなみに、考助が考えている旅のプランですが、昼間に移動したり観光したりして、夜の間は、管理層に戻ってくるというものです。
ホントに旅と言えるのか?w
子育てに関しては、神である考助はあまり深くは関われません><
なので、せめて夜だけは、という思いで考えています。
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