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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第26章 塔と国家

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(9)フローリアの奮闘

 ラゼクアマミヤが建国したことによる大きな変化は、討伐隊の創設と新しい転移門の設置だった。
 今まで設置していた四つの転移門は、クラウンが最初期の頃に設置された物になる。
 転移門を使ったことがない者が、よく勘違いしているのだが、いわゆる転移門と呼ばれている所は施設の総称であって、実際の門のことを指しているわけではない。
 最初の頃は、アマミヤの塔に出入りする門が一つだけだったのだが、利用者が増えるにつれて門自体の数は増えていた。
 普通の人間だけが出入りできる門と、物品の搬入が出来る門である。
 その二つの門をひとくくりにして転移門と呼ばれているのだが、アマミヤの塔に住居を移したり、商売をしたりしない限りは物品の搬入門は使わないので気づかない者も多いのである。
 門は二つあるが、転移門は一つと考えられているので、アマミヤの塔から外に向かう転移門は四つしか設置できないと考えられていた。
 ところが、ラゼクアマミヤの建国と同時に、新しい転移門の設置が発表された。
 設置が発表されたのは、南と西の街のすぐ傍になる。
 先例に倣って街の外に設置されたのだが、これには理由がある。
 当初の理由は、町から攻められたときにすぐに切り離せるようにといった防衛上の理由からだった。
 ところが、塔からの出入りが多くなると別の理由で外にあった方がいいと考えられるようになっていた。
 その理由というのが、物資の搬入に時間がかかるので、どうしても待機列の場所が取られてしまうというものだ。
 街の中に待機列を作れるようなスペースを用意するよりは、最初から広いスペースを用意できる街の外にあった方がいい。
 南の街や西の街のように、スペースの確保にお金がかかってしまうような所だと、街の外に用意したほうが良いのである。
 勿論外に施設を置くことによるデメリットもあるのだが、それは既に他の四つの町でも経験済みなので、対処は可能なのだ。

 南と西の街に転移門が設置されたことにより、二つの街に支部を置いておく理由が無くなった。
 塔の外から中に入るためには、クラウンカードもしくは住人証が無いと通行料を取られてしまうが、カードを発行すれば返してもらえる。
 その際に仮の通行証を発行してもらえるのだが、それは今まで支部で作っていた仮のクラウンカードとは別の物になる。
 転移門が出来たことにより、直接塔にある本部に行けることになったので、今まで発行していた仮のクラウンカードを発行する意味が無くなってしまったのである。
 そのため南と西の街にあったクラウンの支部は無くなることが決定したが、完全に無くなったわけではなく、正確には移転という形になった。
 南と西の街の間にナンセンがあるわけだが、南の街とナンセン、西の街とナンセンのそれぞれの間の町に支部を移したのだ。
 もっとも町の規模は、南や西の街程大きくはないので、支部も相応の大きさになっている。
 それに加えて、南の街とミクセン、西の街とケネルセンの間にもそれぞれ支部が置かれることになった。
 元々南と西の街に比べて規模が小さいので、数を増やすことが出来たのだ。
 ただ、その分の簡易版のクラウンカード作成機を用意しなければならなかったのだが、それは考助とイスナーニで用意をした。
 新しい転移門の設置とそれによるクラウン支部の再設置により、クラウンの大規模商隊の運用も変化した。
 転移門がある街と支部がある町が狭まったおかげで、より細かい運用が出来るようになったのだ。
 大規模商隊も依然として残っているが、それ以外の商隊も組まれるようになっていた。
 これにより、物流も以前より多くの物資を運べるようになった。
 当然、間にある町や村が受ける恩恵は、大きくなったのである。

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 ラゼクアマミヤとクラウンの関係は、建前上は国家とそれに属する一組織となっている。
 だが、そんな建前を信じている者はおらず、むしろいつまでも一緒であってほしいと願っている者さえいる。
 それだけ大陸内でのクラウンの影響が大きいという事になるのだが、当然それに反発する者達もいる。
 建前で国対一組織となっているのは、そうした者達やギルドに配慮しての事だ。
 もっとも反発しているのは、ラゼクアマミヤの建国の恩恵を受けられなかった村や町だったりする。

 フローリアは、自身の執務室でクラウンの部門長たちの面談を受けていた。
 先だって渡されていた報告書に関しての話になる。
 国家という明確な受け皿が出来た以上、既に考助の手からは離れているので、クラウンもまた報告先を考助ではなくフローリアへと変えているのだ。
 フローリアはこの辺では微妙な立場になっていて、ラゼクアマミヤの国王でもありクラウンのかじ取りもしないといけないという事になっている。
 最初は、クラウンのことはワーヒドに任せようとしたのだが、ワーヒドが固辞したのだ。
 それは他の統括達も同じで、結局フローリアが引き受けることになっていた。
「・・・・・・やっぱり貴方達の中から選ばないか?」
 フローリアの言葉に、四人の部門長たちが苦笑した。
 フローリアが言いたいことも分かるのだが、そうもいかない事情があるのだ。
「それは止めておいた方がいいでしょう。どこかの部門から頭が出たとなれば、クラウン内で争いが起きますから」
 部門長たちが心配しているのは、そのことだった。
 例えば、冒険者部門からクラウンの最終決定権を持つ者が出れば、次はどこから出すかが問題になる。
 持ち回り制にしたとしても、確実に回ってくる椅子を待つことになるので、それはそれで問題が出るのだ。
 それならば、最初から国王と同じように、血筋で決めてしまった方が良い。
 勿論、生まれてくる人物が全て良い人材であることなどありえないが、それはクラウンの中から選ぶようにしても同じだろう。
 何より能力とは別の問題もある。
 クラウンが塔と密接に関わっている以上、どうしても考助との関係は切っても切れないことになる。
 考助がアマミヤの塔を放棄すれば話は別だが、そんなことは今のところあり得ない。
 そうなると、どうしたって考助の関係者から選んだほうが手っ取り早いのだ。
 身もふたもない言い方をすれば、フローリアの血族は、考助への人身御供という見方も出来なくはない。
 考助はそんな扱いをすることは無いだろうが。

 今はまだいいが、フローリアが身重になったりすると、確実に今のような仕事量はこなせない。
 そうなったときは考助自身が出てくるだろうが、それはそれで問題が出てくる。
 せっかく神である考助の手を離れたのに、元の木阿弥になり兼ねないのだ。
 頭を悩ませるフローリアに、シルヴィアが助言をした。
「いっそのこと、シュレインに任せてみたら?」
「シュレインに? いや、それは・・・・・・いや、良い考えか?」
 そもそもシュレインには、ヴァミリニア一族やイグリッド族という治めるべき一族がいる。
 最近ではそれに加えて別のヴァンパイア一族も合流しているのだ。
 クラウンの事を任せても手が回らないかと考えたのだが、そもそもクラウンの仕事はさほど手間がかかるということは無い。
 ワーヒド達がいるので、ほとんどの事は彼らが処理してしまうのだ。
 だからこそフローリアもこうして国王と掛け持ちが出来ているのだから、シュレインに任せるというのはありかもしれない。
 そこまで考えたフローリアは頭を振った。
 本人に一言も相談していないのに、先走り過ぎていると思ったのだ。
「そうだな。確かに考えてみる価値はある。今度、本人に打診してみよう」
「そうしたほうが良いわ」
 今のフローリアはシルヴィアから見ても色々と抱え過ぎている気がする。
 ここで考助に助けを求めれば、簡単に手を貸してくれるだろうが、それだと意味がないのだ。
 出来るのならシルヴィア自身が手を貸せればいいのだが、いかんせん組織の運営のことなど門外漢もいいところだ。
 やれることがあるとすれば、こうして助言をすることくらいになる。
 フローリアにとってはそれが何よりもありがたいのだが、シルヴィアにしてみれば歯がゆいと感じるのだ。

 結局、この後でシュレインの快諾を得て、クラウンに関してはシュレインが代理で業務を行うことになったのである。
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