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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第26章 塔と国家

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(7)サキュバス一族の追加

 管理層に珍しい客が来ていた。
 デフレイヤ一族の長であるジゼルだ。
 ジゼルが管理層に来るのは、実は初めての事だった。
 ジゼル自身が変に馴れ馴れしくならないようにと管理層に来るのを拒んでいたためだ。
 これまでは、考助がデフレイヤ一族の階層に行くか、ピーチが言伝を持ってくることで用事を済ませていた。
 今回ジゼルが来ることになったのは、どうしても対面で話したいことがあったのと、考助が道具作りで忙しかったためである。
「わざわざ来てもらって、すみません」
 ようやくできた合間を縫って、ジゼルと対面した考助はまず謝罪した。
 そんな考助に恐縮するように、ジゼルが手を振った。
「いやいや。いつものは、私のわがままなんですから気にしないでください」
 普通に考えれば、上役に当たる考助を呼びつけている方がおかしいという認識は、勿論ジゼルにもあるのだ。

「それで、今回はなんかあった?」
 ピーチの言伝ではなく、わざわざジゼル本人が来るという事は何か大きなことがあったのかと考えての質問だ。
「いえ。何か大きなことがあったというわけではなく、相談というか提案をしたいと思いまして」
「提案?」
 ジゼルの言葉に、考助は首を傾げた。
「ええ。国を作られるという事ですが、我々だけですと手が足りないと思ってましてな」
「ああ、なるほど」
 デフレイヤ一族は、アマミヤの塔に移ってきてから生活が安定しているために、数が増えてきている。
 それでも今後予想される仕事の量に比べれば焼け石に水だと、ジゼルは考えていた。
 その意図は考助にも分かったが、解決の手段がすぐには思い浮かばなかった。
 いくらなんでも、産む数を急激に増やすのは現実的ではない。
 何より、そんな事を人為的に操作などしてほしくはなかった。
「けど、増やす方法なんてあるんですか?」
「何。我々と同じような問題を抱えている一族など、いくらでもいるものですよ」
 それを聞いた考助は、納得すると同時に不安になった。
「なるほど・・・・・・それは分かりますが、大丈夫なんですか?」
 ジゼルの言った通り、元のデフレイヤ一族と同じような立ち位置にいる者達は、いてもおかしくはない。
 考助は聞いていないが、そうした者達をデフレイヤ一族が把握していることも疑ってはいなかった。
 だが、そうした者達が、きちんと裏切らずに働いてくれるかどうかが気になる問題だった。

 考助の心配をよそに、ジゼルは大きく笑った。
「心配はいりませんよ。あれだけの騒ぎを起こしてきているのですよ? 当初の我々の時とは違うのですから」
 コウヒの時の騒ぎ一つとっても、彼女に逆らうようなことをする者はいないだろう。
 デフレイヤ一族と同じように裏で働いている者達ほど、そうした情報を掴むと同時に逆らう愚かしさを知っているのだ。
 長年、権力者の裏で働き続けている者達の知恵と言ってもいいだろう。
「それに、心配なのでしたら、それこそ我々の時と同じように契約で縛ってしまえばいいのです」
「ああ、そう言えばそんなこともしていたっけ」
 デフレイヤ一族が来た当初は、管理職に当たるような者達に契約を施していた。
 だが、それも最近ではほとんど行われなくなっている。
 それは、契約するような上位の者が増えていないという事もあるのだが、デフレイヤ一族に対する信用が大きくなっているというのもある。
「むしろ相手の方が契約それを望むかもしれませんな」
 契約というのは、確かに自身を縛る物になり兼ねないのだが、相手の信用を得るという意味ではこれ以上に最適な物はない。
 反抗する意図はないという事を示す意味では、最初から契約を結ぶことを望むことも考えられる。
「まあ、そういう事なら特に問題はないと思うけど・・・・・・。どの一族を呼ぶとかは決めてあるの?」
「一応目星は付けてあります。あとは、コウスケ様の判断になるかと」
 ここまで話をもってきているだけあって、もうあとは考助のさじ加減一つで決まるところまで調べてあるのだ。
「そう。相手方に話は?」
「さすがにそこまで独断専行はしてませんよ」
 どの辺までをデフレイヤ一族で行うのかというのは、具体的に決めてはいないのだが、ジゼルの中では明確な区別があるのだ。
 それに対して考助が今まで不満を持ったことがないので、これまでも上手くいっている。
 そしてそれは、恐らくこれからも変わらないのだろう。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 考助の了承を取り付けたデフレイヤ一族は、すぐに相手方に連絡を取った。
 相手はアイスラー一族といって、デフレイヤ一族と同じようにサキュバスの一族だ。
 デフレイヤ一族もいきなり塔の中で考助と会わせるような愚を犯すはずもなく、アイスラー一族の里での面会となった。
 先にデフレイヤ一族の者が里に行き、そこに転移門をつないだ。
 転移門は、つなぐための道具さえあればすぐにつなげることが出来るのだ。
 ちなみに、道具があったとしてもその道具を使って転移門を作ることは出来ないので、悪用される心配はない。
 デフレイヤ一族の者が、何かあってその道具を奪われたとしても転移門を使って急襲するということは出来ないのである。

 アイスラー一族の長は、カミラといって女性の長だった。
「貴方がアマミヤの塔のコウスケか」
 カミラがそう言って、考助が「あ、やばい」と思うのとほぼ同時に、同行していたジゼルが速攻で釘を刺した。
「カミラ殿。一族を根絶やしにされたくなければ、その態度は改めなさい」
 見るとジゼルの表情が若干焦ったようになっていた。
 その視線は、考助の護衛としてついてきているミツキをチラチラと見ている。
 どうやら考助と同じことを考えていたらしい。
 ミツキの事は知らなかったらしいが、考助とジゼルの態度で何となく察したらしい。
 カミラが一度ごくりと喉を鳴らしたうえで、頭を下げた。
「申し訳ありませんでした。私が、アイスラー一族の長、カミラといいます」
 流石に今まで裏の一族を率いて来ただけあって、危機回避は人並み外れているらしい。
 もっともそれが無くとも、鋭い者ならミツキの視線で色々と感じることが出来るだろう。
 一変したカミラの態度で、ミツキの雰囲気が変わった。
 明らかに鋭いものから、いつもの穏やかなものに戻っている。
 一度変わってしまえば、前の雰囲気がいかに危ない物だったのかを理解できたのだろう。
 カミラが、再び喉を鳴らしたのが分かった。

 その後は特に大きな問題が起こることもなく、順調に話が進んで行った。
 デフレイヤ一族という前例があるために、条件なども新しく考える必要が無かったのが大きい。
 アイスラー一族もデフレイヤ一族と同じ条件で問題が無いようなので、とんとん拍子に決まって行ったのだ。
 逆に、「デフレイヤ一族と同じ条件で良いのか?」と聞かれてしまったほどだった。
 これに関しては、ジゼルが構わないと言っていたので、同じ条件にしてある。
 先にいた一族を優遇すると、後から来た一族が腐る可能性があるためだ。
 アイスラー一族の方が明らかにいい仕事をしているのに、デフレイヤ一族の方が優遇されるとなると、どうしたって不満は出てくる。
 それならば、最初から同じ条件にしてしまった方がいい。
 そうした考助の意見を、ジゼルも汲んでくれたのだ。
 もっとも、ジゼルはジゼルで別の思惑があるようだったが。
 後は、デフレイヤ一族の上位者と同じように、アイスラー一族の者達にも契約を施したうえで、塔に迎え入れることになった。
 契約を施したのは、当然一緒についてきたシュレインだ。
 ようやく出番が来たと張り切っていたので、契約に関して問題はおきないだろう。

 後の話し合いで、デフレイヤ一族がクラウンの情報を担当し、アイスラー一族は王国の情報を担当することになったのだが、それはまた別の話である。
 こうしてアマミヤの塔に新しい一族を迎え入れることになったのであった。
カミラが最初に取った態度は、舐めた態度を取ったのではなく初めて会う考助がどういう反応を示すかを試した感じです。
もっとも、速攻で抑え込まれてしまいましたがw
後に、あれほど胆を冷やしたのは初めてだと、部下に述懐しています。
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