挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第26章 塔と国家

321/1218

(6)ヴァミリニア城

 ヴァミリニア城から見下ろす町を見た考助が一言。
「また大きくなった?」
 以前、シュレインが真祖に進化した時からひと月ほど経っているが、城の周りの町が若干大きくなって見えた。
「うむ。順調に人口が増えているな」
「新しいヴァンパイアが増えてるの?」
 最近ヴァミリニア城がある層では、ヴァミリニア一族だけではなく、別のヴァンパイア一族を受け入れるようになっていた。
 過去の出来事から、ヴァンパイアは一族で固まって生活するという事がほとんどなくなっていた。
 出会いがあれば夫婦になることはあるのだが、どこかに村や町を作るという事が無かったのだ。
 基本的にヴァンパイアは、魔力が高いことで有名なので、反乱などを恐れてまとまることを禁止したりしている国が多かったりするためだ。
 そのため、個別に暮らしている分には特に問題はないのだが、団体としてまとまることが出来ないために、ヴァンパイアとしての文化が失われつつあった。
 そうしたことも憂いていたために、余裕が出て来たこの塔で受け入れることを決めたのだ。
 勿論、別の流れを汲むヴァンパイアの一族を受け入れることに反対する者もいたのだが、最終的には全員が納得した。
 反対していた彼らもまた、ここに来る前は、似たような状況だったのが大きかったのだろう。
 何より、シュレインが真祖ヴァンパイアになったことが、決め手になった。
 真祖ヴァンパイアは、ヴァンパイア達の中では神とまではいかなくとも、上位の存在として扱われている。
 ほとんど伝説の存在になりかかってはいたのだが、それでもまだその存在の大きさは失われてはいない。
 そのために、その真祖ヴァンパイアであるシュレインが、治めるこの街にヴァンパイアが来ても大きな騒ぎにはならないだろうという考えもあった。
 既に他の大陸のヴァンパイア達の間では、アマミヤの塔でヴァンパイアを受け入れ始めたという噂が立ち始めるほどになっていた。

「それもあるがな。いくらなんでも、それだけではないぞ?」
「というと?」
 シュレインの言葉に、考助が首を傾げた。
「イグリッド族の者達も保護しているからな」
「あれ? そうなの?」
 今ではこの層の管理は、シュレインに任せ切りになっていたので、全く知らなかった。
 わざわざ報告しなくてもいいと考助から言ったので、それも当然なのだが。
「ああ。といってもヴァンパイアほど数は多くはないがな」
 イグリッド族は、囲い込まれていたりすることがほとんどだったりするので、独自に別の街に移動したり出来ないといったことが多い。
 そのため、あまり強引に移住を強制すると、その権力者と争いになり兼ねないのだ。
 だからこそ、下手に手が出せない場合がある。
「そっか。まあ、好きにしていいけど、本人を無視して強引に連れてくるのは止めてね」
「無論だ」
 その辺の加減はしっかりと伝えてある。
 もしそんなことをしていると分かった場合は、厳しい罰則が待っている。

「そう言えば、別の一族の長が会いたがっていたが、どうする?」
 今更な感じでそんなことを言って来たシュレインに、考助は疑わし気な表情になった。
 急ぎであれば、すぐにでも言って来るだろうに、こんなタイミングでというのが、非常に怪しい。
「・・・・・・それって、大丈夫なの?」
「うむ。いつか一族の数を増やして、ヴァミリニア一族を出し抜いてやろうと思っているような奴だが、大丈夫だと思うぞ?」
 そう言いつつ、シュレインは視線をあらぬ方向へと向けていた。
「それって、全然大丈夫って言わないよね?」
 考助は、白い目をシュレインに向けた。
 シュレインが、自分をだしにしてその長とやらを矯正しようとしているのがまるわかりだった。
「・・・・・・まあ、いいけど。それで、いつ会えるの?」
「えっ・・・・・・!? いいのか?」
 びっくり、といった感じで、シュレインが目を見開いて考助を見た。
「自分が会えって言ったんじゃないか」
「いや、まあ・・・・・・そうなんだが・・・・・・」
 シュレインにしてみれば、こんな言い方で会ってくれるとは思っていなかったのだ。
 あえてそういう言い方をしたのもあるのだが、会ってくれるのであれば、ここ最近の悩みの種が一つ減ってくれることは間違いない。
 気を取り直して、すぐにその場を設けるように考え直した。
「だったら今から終わらせてしまわないか?」
「それは構わないけど、相手は大丈夫なの?」
「何。コウスケが会ってくれると分かれば、すぐにでもくるだろうさ」
 その言い方だけでも会いたくない気になってくるが、こういう事は先延ばしするよりもさっさと終わらせた方がいい。
 一つだけ溜息を吐いて、会う覚悟を決める考助であった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 上から下へ流れるがごとく次から次へと言葉を並べ立てる相手に、考助は目を白黒させていた。
 ヴァンパイアの別の一族の長であるアマドは、良い意味で考助の予想を裏切る人物だった。
 確かにシュレインの言う通り、ヴァミリニア一族に取って代わろうと言う意思は感じられる。
 というよりも、話の節々にそういう意図が感じられた。
 だが、それはあくまでも一族の代表としての範囲内に収まっており、特に嫌味のような物を感じさせるものではなかったのだ。
 それどころか、一度話を始めるとなかなか止まらないということを除けば、非常に良い人物とさえいえた。
 隣にいるシュレインも軽く苦笑しつつ、アマドの話を聞いている。
 シュレインは、アマドに会わせたくないというよりも、会うことによって時間が潰されることを懸念していたので、今まで彼の事は伝えていなかったのだ。
 アマド自身は、彼の一族であるタルレガ一族がバラバラになっていた時も、しっかりと掌握するような手腕を持っていた。
 アマミヤの塔にいるヴァミリニア一族の話を聞いて、即決でタルレガ一族の移住を決めたのもアマドだったのだ。
 長としては、かなりのやり手と言えるだろう。
 今はバラバラになっている一族も、すぐに集まってくると話していた。
 もっとも彼の一族も今では全部合わせても百人程度しか残っていないと言っていた。
 ヴァンパイア全体としても全盛期から比べればかなり数が減っているので、ここで全体の数が増えることを期待しているということもだ。
「アマド殿、そろそろ・・・・・・」
 一時話が切れたのを見計らって、シュレインがアマドにそう言った。
「む? そうか? ・・・・・・まだ話したいことがあったのだが、残念だ」
 まだあったのか、と内心で引いていた考助だったが、表情には出さないようにした。
「すみません。中々時間が取れないものでして」
「いやいや。それは仕方ないだろう」
 カカカ、と笑いながらアマドはそう言った。

 アマドは、考助が現人神であることは知っているが、変に畏まったりしない態度を取っていた。
 だからといって、無礼な態度になるわけでもない。
 いつまでも話し続けると言う悪癖さえなければ、そういった人材は考助にとっても貴重なのだ。
 人物的にも悪いところがあるというわけでもない。
 たまには時間を作ってまた会いに来るかと、考える考助であった。
この期に及んで新キャラですw
出てくると話が長くなりそうなので、今回だけの登場になりそうですがw
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ