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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第26章 塔と国家

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(4)行政府の意見

 リーリルが行政府のアレクに会いに来てから一週間後。
 西の街のアマミヤの塔への傘下入りが発表された。
 塔の街の反応は、驚きが半分とやはりかという反応が半分だった。
 驚きというのは、西の街が傘下入りしたことへの驚きだった。
 今まで親しい関係を築いていた南の街ならともかく、西の街は敵対していたわけではないが南の街程、親しかったわけでもない。
 その西の街が先に傘下入りを発表されたことに驚いたのだ。
 勘と耳の良い者は、政治的な事情があるという事もすぐに察した。
 それに、驚いたと言っても、傘下入りの拒否感が出たわけではない。
 発表された後は、すぐにそれは受け入れられた。
 街の住人もいい意味で、大陸にある街の傘下入りに慣れてきているのだ。
 それよりも、以前から噂されていることの方が住人たちにとっては、重要な話であったのだ。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 フローリアとシルヴィアは、行政府を訪ねていた。
 これから先、王国を作った後は、管理層よりもこちらに詰めることの方が多くなるだろう。
 二人とも行政府の高官たちとは、管理層で何度も顔を合わせているので、特に問題も発生してはいない。
 むしろフローリアがアレクの実の娘だと紹介されて、驚いていた方が多かったくらいだ。
 アレクがもともと某王国の王子だったことは、隠していたりはしないので、当然フローリアの素性も分かっている。
 そのため、フローリアが女王になることに対しても、特に反対意見は出なかった。
 現人神である考助が、直接国を治めることに対して何となく違和感を覚える者はいたのだが、そういった者達もその人選に納得した感じだった。
 そういった違和感を覚える者達は、そろって敬虔な神の信徒だったりするのだ。
 そして、フローリアと同時にシルヴィアも神殿関係の対応者として紹介された。
 シルヴィアは、フローリア以上にすんなりと関係者たちに受け入れられた。
 何しろ、シルヴィアが考助の巫女であることは、既に知れ渡っている。
 ちょくちょく神殿にも顔を見せていたために、高官たちだけではなく普通の住人達にも知られているのだ。
 逆にこれに反対すれば、ほとんど考助に反対すると言っていいことになる。
 そんなことをする者が出るはずもなかった。
 そう言う意味では、フローリアも考助の推薦であるのだが、そこはそれ、分野の違いである。
 女王となるフローリアは、あくまで政治に関係することなので、神と直接関係があるわけではない。
 少なくとも建前上は、だが。

「・・・・・・こうもすんなり受け入れられていいのか?」
 行政府の建物の一室で、フローリアが戸惑ったように言った。
「いいのではないか? そもそもお前は管理者のメンバーとして知られていたのだから」
「そうですわね。少なくとも盛大に反対されるよりはいいでしょう?」
 アレクとシルヴィアがそう言って来たが、フローリアはそれでも納得できないように首を捻っていた。
 母国で権力争いをする者達を散々見て来た身としては、余りにこの塔の住人は素直すぎる気がする。
「いやまあ、そうなんだが・・・・・・こうも素直すぎると、逆に心配にならないか?」
 国を作るとなれば、内でも外でも権力争いというものは、大なり小なり発生する。
 そういったことがほとんど発生せずに、自分自身を新しい国の女王として受け入れられるというのは、フローリアにして見ればどうにも違和感を感じるのだ。
「そうか。お前は、行政府ここの事を直接見たことは、ほとんど無いからな。そう感じるのかもしれないな」
 その違和感を察したアレクが、そう言って来た。
 そういうアレクも、当初は似たような感じを受けていたのだ。
「・・・・・・どういう事だ?」
「うむ。まあこれは、コウスケ殿が現人神となる前からそうだったのだがな。この塔を攻略したコウスケ殿のすることは、ほとんど無条件で受け入れるようになっているらしい」
 勿論、操り人形のように黙って受け入れるわけではない。
 だが、よほど理不尽なことでなければ、街の住人達はそのまま素直に受け入れるようになっていた。
 街の成長を直接見て来た住人たちにとっては、考助のやることは間違いがないとまで感じているのだ。
「それは、また・・・・・・。それはそれで怖い感じがするがな」
 思わず呟いたフローリアに、アレクは大きく頷いた。
「それを上手く手綱を取っていくのが、我々の仕事になる」
「なんともはや・・・・・・面倒な感じだな」
「何を言っている。面倒がない政治などあるはずがない」
 そう言い切るアレクに、フローリアは苦笑を返した。
 全く以てその通りだと思うしかなかった。
 今後は、考助が直接国に対して意見を言ってくることは、段々と減っていくだろう。
 考助自身もそう明言しているし、フローリアとしてもそうしたほうが良いと考えていた。
 神となっている考助が、直接政治に口を出すことはしないほうが良いというのは、この場にいる全員の共通の認識となっているのだった。

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「神殿はどうなるのだ?」
 アレクの問いかけに、シルヴィアが首を傾げた。
「どうとは?」
「いや。今まで通りでいくのか、他の町と同じように神職を置くのか。まあ置くとなれば、君がなるのだろうが」
 その問いに、すぐに返答しようとしたシルヴィアだったが、反射的に出そうとした答えを出すのを思いとどまった。
「そうですわね・・・・・・。特に今のままでも問題はないと思うのですが・・・・・・」
 考える様子を見せるシルヴィアに、フローリアが、おや、という表情になった。
 シルヴィアであれば、考助が示したままの形で残した方がいいと主張すると思っていたのだ。
「なにかあるのか?」
 フローリアの問いに、シルヴィアは首を振った。
「今すぐ何かあるわけではないわ。けれど、何かあった時に対応できるようにしておいた方がいいと思ってね」
「ふむ。なるほど」
 シルヴィアの言葉に、納得したようにフローリアが頷いた。

 それを見たアレクが、口を挟んだ。
「神殿関係は私も専門では分からないが、聞いてもらってもいいか?」
「なんでしょう?」
「確かに柔軟な対応が出来るというのは素晴らしいのだが、当初の形をずっと維持するのもそれはそれで素晴らしい事だと覚えておくといい」
 アレクが言いたいのは、特に神が関わっていることに関しては、形が変わらずにずっと残っていく物も多い。
 そうした物こそ、現在でも一段上の扱いになっていることがあるのだ。
 時の流れに合わせて形を変えて残っていく物もあるが、神代から伝わっている物は、形が変わらずに残っていることもある。
 考助は、一番新しい神だが、その神が言ったことをそのままの形で残すことに意味があるのではないのか、とアレクは言いたいのだった。
「・・・・・・はい。ありがとうございます。覚えておきますわ」
 シルヴィアもまた、そうした例が多々あることは、神職であるからこそ理解している。
 形にこだわって廃れてしまっては意味がないが、今の形を残すことの重要性を再認識したのであった。

「ところで・・・・・・塔の管理は大丈夫なのか?」
 アレクがそう問いかけると、二人は顔を見合わせて苦笑した。
「特に問題はないな。何しろ、定期的な作業はゴーレムたちがいるから」
「・・・・・・ああ」
 アレクは頭に、ゴーレムと呼んでいいのか分からないあの人形たちを思い浮かべた。
 言われなければ、ゴーレムだと気づかないあの人形たちであれば、確かに任せてしまってもいいのかもしれないと思えたのだ。
「さすがに、新しいことはできませんが、繰り返し作業は完全に任せられますから。特に心配はないです」
「それに、私達も定期的に管理層に戻るつもりだしな」
「そうか。そういう事ならこれ以上は聞かないでおこう」
 アレクとしても問題ないのであれば、特に口を挟むつもりはないのであった。
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