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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第26章 塔と国家

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(2)ハイヒューマン

 西の街の傘下入りは、行政府側の準備ができてからすぐに発表された。
 それが西の街側の条件の一つだったのだ。
 東西南北四つの街のうちどこよりも早く発表してほしいというのも条件に挙げられていた。
 何処よりも早く恭順を示すことによって、政治的に立ち位置を上げたいという目的もある。
 そして、その発表と同時に、行政府では別の件も着々と準備が進められていた。
 その準備が最終段階を迎えた時になって、アレクが考助の元を訪れてきた。

「こちらの準備は整ってきているが、発表しても本当にいいのかな?」
 そう問いかけるアレクの顔に不安はない。
 既に何度も考助に問いかけていて、同じ答えを貰い続けているからだ。
 考助の性格上、この土壇場で反対することはまずあり得ないという事は分かっている。
 それでも確認をしているのは、ゲイツ王国の事があったためだ。
 アレクよりも周りが、しきりに確認しに行くように勧めてくるのである。
「問題ありませんよ」
 既にそのことが分かっている考助も、それだけ答えておいた。
 続けて気になっていたことを問いかける。
「それよりも、あの件は大丈夫ですか?」
「それは問題ない。・・・・・・というよりも、本当にいいのか?」
「構いませんよ。むしろこちらからお願いしたいくらいです。それに、いくらなんでも僕自身が表に立つのはまずいでしょう?」
 考助の言い方に、思わず納得してしまったアレクだった。
 何のことかというと、考助自身が国王になるかどうかの話だ。
 アレクがこの場に持ってきている話というのは、国を作ると言う話だ。
 その話で、考助は自分は国王にはならずに別の者を推薦しておいたのだ。
「まあ、私はそれで納得できるがな。問題は、住人達だな」
 アレクの言葉に、考助は首を傾げた。
「反対しているのですか?」
「いや、反対ではないのだがな・・・・・・」
 珍しく口を濁すアレクに、考助はさらに疑問の表情になった。
「何かあったんですか?」
「いや・・・・・・まあ、早い話が、子供を早く作れと言ってきてな」
 その台詞を聞いた考助は、口が「あ」という形になった。
「ああ、済みません。言い忘れてました。・・・・・・というか、こういう事は本人から言った方が良いのかな?」
 考助はそう言って、一言断ってから管理層の奥の方へと向かった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 戻って来た考助は、フローリアを連れてきていた。
 考助が今回新しくできる国の国王に推したのが、フローリアだった。
 そもそもメンバーの中で選ぶとしたら、フローリア以上の適任はいないだろう。
 最初は渋っていたフローリアだったが、考助の説得に最後には折れていた。
 フローリアが渋っていたのは、国王もとい女王になれば、間違いなく忙しくなるので、なかなか考助に会う事が出来なくなるからという理由だった。
 それには考助も苦笑して、なるべく時間を作って会いに行くことを約束した。
 残念ながら女王になる以上、南西の塔の管理は難しくなる。
 だからといって、考助が代わりに管理するわけではない。
 時間はいくらでもあるので、少しずつフローリアが手を入れていく予定になっている。

「フローリアが来た、という事は?」
 アレクが、まさか、という表情でフローリアを見た。
 それを見たフローリアは、渋い顔になった。
「あー。父上。まずは落ち着いた方がいい。それから言いたいことは分かるが、恐らくその想像は違っていると思うぞ?」
 フローリアの言葉に、アレクがいぶかしげな表情になった。
「・・・・・・どういう事だ?」
「別に、子供が既に出来ているわけではない。ようやく、子供が作れる体になった、という事だ」
「??」
 さらに首を傾げたアレクに、フローリアが首を振った。
 考えてみれば、アレクにはきちんと事情を話していなかった。
 話せる類のものでもなかった、というのもあるのだが。

「知っての通り、コウスケは現人神だ。当然、わたしと子供を作るのには、問題があったわけだ」
「・・・・・・それで?」
「だから、そんな顔をするな。さっきも言ったが、既に私はコウスケと子供を作れる体になっている」
「問題はないんだな?」
「ない。・・・・・・まあ、あるとすれば、私がハイヒューマンになってしまったので、遥かに寿命が長くなったことくらいだろうか」
 それを聞いたアレクは、思わず呆けた表情になった。
「・・・・・・は?」
 続けてアレクらしからぬ声が漏れた。
 それを見たフローリアと考助の二人が、笑い声を漏らした。
「ほらな? 言った通りだろう?」
「参った。流石親子だよ」
「当然だな」
 考助とフローリアの二人は、彼女がハイヒューマンになったと告げた時に、アレクがどんな反応を返すのか予想をしていたのだ。
 そして、見事にフローリアが今のアレクの反応を予想していたのだ。

「いや、待て! もう一回言ってもらえるか? 何か、聞いてはいけないことを聞いたような・・・・・・」
「寿命が長くなったことか?」
「いや、それじゃ・・・・・・いや、それもだが、その前!」
「ハイヒューマンになってしまった?」
「それだ!」
「どれだ?」
 珍しくボケた(?)フローリアだったが、その相手には全く意味がなかった。
 それどころではない様子で、フローリアに詰め寄って来た。
「は、ハイヒューマンって、どういう事だ?!」
 その様子を指さして、フローリアが考助を見て言った。
「ほらな。これがまともな反応だぞ?」
「いや、まあ、そうなんだろうけどね」
 フローリアがハイヒューマンになった時に、管理層でもちょっとした騒ぎになっていた。
 考助にしてみれば、何を今さらという感じだったのだが、それをその時は各所から突かれたのだ。
 それを今、フローリアに掘り返されているのである。

 そんな二人を余所に、アレクが口を開閉させていた。
「それは・・・・・・本当の話なのか?」
「嘘をついてどうする? ホラ」
 聞かれたフローリアが、クラウンカードを差し出した。
 その種族にはきちんと<ハイヒューマン>の表示があった。
 流石のアレクも、クラウンカードの表示まで疑う事はしなかった。
 大元は同じなのだが、普段からなじみのある物で示されてようやく納得したらしい。
「これは・・・・・・いいのか?」
 いろんな意味に取れる質問だった。
「父上。質問はきちんとしてくれないと答えようがないぞ?」
「いや、いろんな意味で聞いたんだが・・・・・・そうだな。公表してもいいのか?」
 フローリアは、間違いなく以前はヒューマンだった。
 そのヒューマンが、ハイヒューマンになれる可能性があることを公表してもいいのか、という意味だ。
「別に構わないけど・・・・・・公表して対応できるのかな?」
 考助の素直な疑問に、アレクが首を振った。
「いや、すまん。駄目だな。下手に騒ぎになるようなことはしないほうが良いだろうな」
「父上。そんなことを考えるだけ無駄だぞ? 何しろ、ハイヒューマンになるには、神々と直接関わっていないと無理だからな」
 現在、直接関わる事が出来るのは、考助だけだ。
 他の神々は神域にいるのだから、その神域に行くことが出来ないこの世界の者は、神々と関わることなどできない。
 できるとすれば、この世界に存在している考助だけなのだ。
 そして、その考助も今いるメンバー以外と深くかかわりを持とうという気にはなっていない。
 長い時が経てばまたその気も変わるかもしれないが、今のところは全く考えていなかった。
 考助がその気にならないと、ハイヒューマンになることなど出来ないのだから、フローリアの言っていることも間違いではないのであった。
他の神々が地上に長期間滞在できるようであれば、フローリアの言葉は間違いになる可能性もありますが、現在のこの世界ではほとんどありえないことなので、間違っていないという事になります。
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