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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第26章 塔と国家

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(1)西の街の領主

第26章スタート! です。
 アレクは現在、行政府の建物にある一室でお客を迎えていた。
 行政府の中でも最高の一室に迎えられたその客は、西の街の領主であるリーリルだった。
 リーリルはある交渉をするために、わざわざアマミヤの塔まで来ていた。
「それで? そちらとしては、どうかな?」
 リーリルの問いかけに、アレクは笑顔で答えた。
「いや、勿論問題ありませんな。むしろこちらからお願いしたいほどだ」
「それはよかった」
 アレクの満点の答えに、リーリルも満足そうにうなずいた。
 今提示した以上の条件を持ちかけられると、持ち帰って再度検討をしないといけなくなるところだったのだ。
 勿論、ある程度の勝算があって、今の条件を提示していたのだが。

「それにしても思いきりましたな。もし実現するとしても、もう少し先になると思っていたが」
 全ての手続きを終えた後で、アレクが世間話のように問いかけた。
「ああ。確かにそうだな。恐らく其方でも予想はしていたと思うが、私ももう少しかかると思っていた」
 リーリルが同意するように頷き、続いて少しだけ苦笑してから答えた。
「前倒しできたのは、例の件があったからだな」
「ああ、なるほど」
 その答えに、アレクも苦笑で答えた。
 リーリルが例の件と言っているのは、世界中で起きた神の降臨の事だ。
 既に神の降臨からひと月が過ぎているが、その影響はまだ続いている。
 リーリルが今回この話を持ってこれたのも、降臨があったからこそ早めることが出来たのだ。
 降臨が無ければ、リーリルが言ったように、あと半年は遅くなっていただろう。
 あるいは、この話自体が無くなっていた可能性もある。
 それほどまでに、衝撃が大きかったのだ。
 その衝撃は、リーリルが治めている西の街以外の世界中で起こっている。

 ちなみに、塔の街では神の降臨は起こらなかった。
 街の人々は、塔外からの噂でその事実を知ったのだ。
 その話を聞いた者の反応は、降臨が起こらなくてよかったという者と、神を直接見れなくて残念だったという者に分かれていた。
 それを聞いたアレクの感想は、所詮他人事だとそんなもんだろうな、というものだった。
 もっともアレクの感想としては全く別の物だった。
「正直、あんなことは二度と起こってほしくはないがな」
 思わずこぼれたアレクの感想に、リーリルが興味深げな視線を向けて来た。
「それは、私が聞いてもいい話かな?」
「まあ、問題ないだろうな」
 問題ないというよりも、問題ないところしか話さないというのが本当なのだが、そんなことはわざわざ話すつもりはない。
 当然リーリルもそのつもりで聞いているだろう。
「神の怒りに直接触れると、とてもではないが余計なことはしようとは思わないな。まさしく、触らぬ神に祟りなし、だと思ったよ」
 アレクは、あの場においては傍で見ていた傍観者だった。
 だが、それでもエリサミール神の怒りは十分に伝わって来た。
 その怒りを直接受け止めていたゲイツ王侯関係者は、いかほどだったのだろかと思うと、ぞっとする。
 もっとも、彼らの場合は自業自得なので、同情する気は全く起きないのだが。
「それほどだったのか・・・・・・?」
「ああ。あれに触れると、聖職者たちの言葉を真に受けるのは止めようと思ったほどだ」
 今アレクが信じられる聖職者は、一人しかいない。
 それはシルヴィアなのだが、そのことをリーリルに伝えるつもりはない。
 彼女が表に出ることを望むのなら、いくらでもバックアップはするが、今の彼女はあくまで考助の補佐という立場を貫いている。
 考助が表に立つことをしない以上、おそらくシルヴィアもまた表舞台に出てくることはしないだろう。
 そして、考助の性格上、表舞台に出ることはまずあり得ないと、アレクは確信していた。
「・・・・・・それほどか」
 アレクの言葉を聞いたリーリルは、重い表情になって考え込んだ。
 改めて神々が直接現れる可能性があるという事を、今回の事件はまざまざと世界中に知らしめた。
 そう言う意味では、神々の思惑は成功していると言って良いだろう。
 単に世界に現れたがっていた神もいる、ということは誰も想像もしていないのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

「まあ、それはともかくとして、有難いことに、こちらとしても弾みがつきましたよ」
 敢えて何の事かは言わなかったが、それだけでアレクが言いたいことはリーリルには伝わった。
 こんなことをリーリルに言いだすという事は、一つしかないとも言える。
「ほう。ということは、いよいよ?」
「そろそろ押さえておくのも限界が来ていますからな。きっかけとしては十分だろう?」
 それを聞いたリーリルはにやりと笑った。
 アレクは、はっきりと西の街を利用すると言っているのだが、こういった利用のされ方はむしろ歓迎する。
 そのために今回の件を決定したと言ってもいいのだから。
「それは、こちらとしても有難いな。だが、北はいいのか?」
 リーリルが掴んでいる情報では、西の街よりも北の街の方がより積極的だったはずだ。
「あちらさんの条件の一つが、それだったからな。問題が全くない、とは言わないが、許容範囲内だろう」
「そうか」

 リーリルが今回アレクに持ってきた話というのは、西の街のアマミヤの塔の傘下入りの話だ。
 勿論無条件でというわけには行かないが、それでもアマミヤの塔が飲める条件を揃えて提示してきた。
 そのもくろみ通りアレクも前向きになっている。
 それだけで、リーリル自身がここまで来たかいがあったというものだ。
 それ以上に、今話した内容を聞けたことが、いい土産話になった。
 おいそれと口にできる話題ではないが、口が堅い側近くらいには話しても問題はない。
 アレクもそのつもりで、情報を流しているのだ。
 いきなり情報を出して驚かせるのもいいのだが、影響が大きすぎる場合は前もって伝えておくことが重要な場合もある。
 ましてや、傘下入りを決めてくれた街に対して、その手の情報を出しておくことは、必要不可欠なことだったりする。

「・・・・・・ああ、そうだ」
 突然思い出したように、アレクがそう言いだした。
「何か?」
「正式に決まれば、もしかしたら転移門の設置もあり得るかもしれない」
「そ、それは・・・・・・?!」
 アレクからの情報に、思わずリーリルは腰を浮かしかけた。
 すぐに腰を落として、ごくりと唾をのみ込んだ。
「本当の話か・・・・・・!?」
「正直な話、私も塔の事はよくわかっていないんだがね。あり得ない話ではない、とだけ言っておく」
 転移門に関しては、アレクは他にも設置が出来ることは知っているが、敢えてそんな言い方をしておいた。
 何も全部の情報を今のうちから開示するつもりはないのだ。
「・・・・・・そうか」
 リーリルもその辺の微妙なニュアンスを察したのか、それ以上は聞いてこなかった。
 変に期待をして、実は駄目だったと言うときのことを考えれば、今の話が聞けただけでも十分だった。
 もっともリーリルも今の話は、広めるつもりはない。
 余計なことをして、お馬鹿さんが出てくるようなことになっては、堪らないからだ。
 折角上手くいっている塔との関係が、これで御破算になってしまっては元も子もないのだ。
 特に、お馬鹿さん達が飛びつきそうな情報というのは、慎重に慎重を期して扱わないといけない。
 その辺がきっちり分かっているリーリルだからこそ、アレクもこの話を持ち出したのだ。
 幾度となく話をしてきて、そのくらいの信頼関係は築いている二人なのであった。
いよいよリーリルが動き出しましたw
散々閑話で登場してもらっているので、ここらで本編でも活躍してもらおうかと思います。
といっても、出てくるのは今話だけになるかも?w
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