挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第25章 塔と神の審判

313/1217

(11)神殿への審判

 セントラル大陸に近づいてきている船への攻撃とバッヘムの塔への介入。
 この二つの『罰』を伝えた考助は、一息いれた。
 それを見て、もう終わりだと勘違いしたゲイツ王国の関係者たちが、あからさまに安堵の表情を浮かべた。
 確かに船を沈められるのも塔を取られるのも王国にとっては痛い出来事だ。
 だが、挽回できなくなるほどのものでもない。
 だが、それに対して、シルヴィアが釘を刺した。
「何か勘違いされているようですが、これで終わりではありませんよ?」
 この場でシルヴィアが口を挟んだのには、勿論わけがある。
 考助が一休みする間に、この場を流されないようにするためでもあり、何より次に行われる神の審判が神殿に関係している物だからだ。
 別に考助と事前に打ち合わせしていたわけではないが、次に来る内容くらいは予想できる。
 実際に、シルヴィア以外にもこの場にいるピーチやフローリアも予想できていた。
 一番肝心の神殿の処分が終わっていないのだ。
 むしろここからが本番だとも言える。

 シルヴィアの言葉で再び谷底に落とされたゲイツ王国関係者たちは、次に何が来るのか戦々恐々としていた。
 それを尻目に考助もシルヴィアの言葉に頷いた。
「そうだよね。むしろここからが本番なわけで・・・・・・。騒ぎの元凶になっている神殿に審判を下さないと神々が収まらないよ」
 その台詞を聞いたドミニク神殿長が、いつ倒れてもおかしくないくらいの表情になった。
 傍で見ているアレクやアマミヤの塔の行政府関係者からすれば自業自得と言えるのだが。
『そうですね。なるべく早めに審判を下した方が楽になるのではありませんか?』
 エリスまでもがそう言って援護射撃をしてきた。
 その言葉に、ドミニクが口をパクパクとしていたが、もはや表情と合わせて陸に上がった魚のような感じになっている。
「んー。と言ってもなあ・・・・・・。思いつくのは、該当の神殿と今まで関係していた神殿から神々の加護を無くすくらいしか思いつかないんだよね」
『まあ、妥当ではないでしょうか?』
 ここでいう加護というのは、シルヴィア達のように個人個人や第五層の神殿のような建物に対して与えられている物ではない。
 早い話が、今後一切神々は該当の神殿とは関わらないと宣言したようなものだ。
 一般の者からすれば、その程度と思われるような処分だった。
 現に、ゲイツ王国の参加者たちはどことなく安堵の表情を浮かべていた。
 ついでに国王であるアーサー王もなんとか表情に出さないようにしてはいたが、雰囲気がそんな感じになっている。
 だが、当事者であるドミニク神殿長は、ついに「うーん」と呻いて倒れ込んでしまった。
 ゲイツ王国側から来ている神殿関係者も最早絶望では足りないような表情になっていた。
 完全に神職にある者とそうでない者で反応が別れていた。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 完全に傍観者になっていたアレクが、その様子を不思議に思ってシルヴィアに聞いた。
 アレクからもさほど重い罰には思えなかったのだ。
「どうして、神職にある者達がこんな反応をしているのか、聞いてもいいのかな?」
「はい。というより、きちんと補足しないと駄目でしょうね」
 シルヴィアは、苦笑しつつ頷いた。
 実際に審判を下した考助は、既に役目を終えたとばかりにあらぬ方を向いている。
 これは勿論わざとで、シルヴィアの存在を示すためにやっていることだ。
 本来神殿に存在する神職の役目とは、こういった神の意思や思惑を人々に説明するために存在しているのだ。
 考助が現世に存在しているためわざわざ役割分担をするのが煩わしく感じるが、これを省いて全てを考助がやってしまうと、シルヴィアの巫女としての意義が失われてしまう。

「為政者の方たちに分かり易く言えば、<ヒッポリス帝国の悲劇>を思い浮かべていただけるといいと思いますわ」
 シルヴィアの言葉を聞いて、流石のアレクも息を呑んだ。
 神々の加護を失うことが具体的にどういう事かは分かっていなくとも、<ヒッポリス帝国の悲劇>は誰もが知っている。
 かつて北大陸に存在した人類史上最大の帝国だったヒッポリス帝国。
 一時は、一方的に神々からの決別を宣言するほどの巨大な力を誇っていた。
 帝国の人々もそれを受け入れるほどに。
 だが、その最終皇帝アウグストが、帝国の晩年に自身のことを現世にある神と僭称した。
 これに怒った神々が、突如人々の前に姿を現してヒッポリス帝国からの決別を宣言したのだ。
 結果として、ヒッポリス帝国では作物が育たなくなり、動物を狩ることもできなくなり、食料を失ったモンスターが大量に襲ってくるようになった。
 最終的には、アウグストの宣言から五年と経たずに、ヒッポリス帝国は滅びることとなったのだ。
 神々がヒッポリス帝国から決別を宣言したことは、それこそあらゆる物語に書かれているが、それが神々の加護を失ったために起こった事だとは、ほとんど知られていない。
 これには理由があって、シルヴィアやフローリアが個人的に与えられている加護と世間が混同しないようにするためだ。
 それからなるべく分かり易く伝わるように、具体的なことはぼかして伝わって来たとも言われている。
 だが、当然直接神と関わる教会には、しっかりと伝わっているのだ。
 勿論神々が、きちんと教会には伝えるように神託をしたというのもあるのだが。

 シルヴィアの説明に、アーサー王の顔色がはっきりと悪くなった。
 戦闘艦はどこかの国と戦争で失ったと思えば、挽回できなくはない損害だ。
 バッヘムの塔は、確かに主要産業であるから痛いのだが、考助の言葉を信じれば、塔に入れなくなるわけではない。
 そのためこれもなんとか収める事が出来ると考えていた。
 だが、最後の加護に関しては、もはやどうしようもない。
 神々が決定したことなので、人である自分が口を挟むことも出来ないのだ。
 だが、ここで救いの手(?)が来た。
 先程の説明をしたシルヴィアである。
「皆さん勘違いされているようですが、コウスケ様が仰ったのは、加護を失わせるのは神殿に対してで、ゲイツ王国ではないですわ」
「で、では・・・・・・!!」
 一筋の光明を見たという表情になったアーサー王だが、次のシルヴィアの言葉で再び沈黙することになった。
「ただ、当然ながら神殿は力を失うわけですが・・・・・・神殿が無くなった国家がどうなるかは、皆さん次第といったところですわ」
 完全に他人事の口調でシルヴィアがそう言い放った。
 今回騒ぎの大元となったドミニクが所属する神殿はもとより、他に関わった神殿も神の加護を失えば、神殿としての機能が無くなることになる。
 普通であれば、他の教会からの応援を取り付ければ何とかなるのだが、今回はそうはいかない。
 何しろ下手に関わると自分の所も加護を失いかねないのだから。
 他の教会の協力が得られないとなれば、神殿は神殿としての意味を失い、人心が離れて行ってしまうだろう。
 そうなったときに向かう矛先は、確実に国に向かってくることになる。

 更に、エリサミール神が追い打ちをかけて来た。
『今回の件に関しては、我々が直接降臨して事の次第を伝えることになりますので、余計な小細工は出来ないものと知りなさい』
 これがトドメとなり、アーサー王は完全にこの場で思考することを放棄した。
 もはや自分だけの手には負えない事態になっている。
 一刻も早く国に戻り、重鎮たちと相談するしかない。
 今回の話を持ってきたドミニク神殿長とカールについては今後決めることになるが、今はそんなことより国の事の方が重要だった。
 この時のアーサーは、国の事だけが頭にあり自分の事を顧みる余裕などないのであった。
これで、神の審判全てが下されました。
船と塔に関しては、どちらかと言えば考助個人(個神?)の分ですが、神殿に関しては神々全体としての処分になります。
国家全体に対して加護を切らなかったのは、ほとんどの国民は知らないから、というよりむしろ神殿に騙されていた側になるためです。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ