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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第25章 塔と神の審判

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(8)登場

 ある神殿において祀られている神が、別の神殿では祀られていないという事は、アースガルドの世界においてはごく普通の事だ。
 もともとこの世界における信仰というのは、土着の神から来ている物も多いため、そういう扱いになっている。
 それ故に、ドミニクの神殿で現人神である考助が祀られていないという事は、特に珍しいことではない。
 というよりも現在のアースガルドの世界において、考助を神として実際に祀っているのは、第五層の神殿とミクセンにある神殿くらいだろう。
 ただし、そのことと考助を神として神殿が認めないと言うのは全く別の話だ。
 実際考助は、三大神をはじめとした神域の神々に認められている。
 そのことは既に、神託として世界中の神殿に伝わっているのだ。
 そんなことは知らないという事は、神殿として神託を無視するという事になりかねない。
 その辺もドミニクも認識があるのか、「神々がどういう考えかはわからない」と微妙な言い回しでどうとでも取れる言い回しをしている。
 そしてもう一つ。
 考助の神としての仕事に関してもドミニクは言及して来た。
 他の神々と違って、地上にいるのだから人々の声に応えるべきだと言っている。
 そもそも神の仕事を人間が決めること自体おかしな話なのだが、考助が地上にいることで人と同じような扱いになると誤認しているのだ。
 それだけならまだしも、更に自分の神殿とつながりの深い者達の言う事に応えるべきだと言っている。
 はっきり言えば、あほらしい、の一言なのだが。

 ドミニクの意見を聞いたシルヴィアは、直接反撃することは無く、また別の人物に話しかけた。
「ドミニク神殿長のご意見は伺いましたわ。では、次はアーサー王。貴方も、貴方の王国も同じ意見だと思っていいのでしょうか?」
 シルヴィアは、はっきりと視線を向けて言ったが、視線を向けられた人物は全く顔色を変えずに言った。
「私の事を言っているのだったら、見当違いもいい所なのだが?」
 特に冷笑するとかではなく、淡々と言って来たその台詞が逆に本当だと思わせたが、いかんせん相手が悪かった。
 シルヴィアは一つため息を吐いて言った。
「もしも私が力を授かる前であれば、その言葉に騙されたのでしょうが、そんなことを言っても無意味ですよ?」
「何のことか・・・・・・」
「私の言葉では足りないと仰るのであれば、今ここに神能刻印機を用意することも可能ですが? 会談の前に身分を確認することはよくあることですよね?」
 後半は、アレクに向かって聞いた言葉だ。
 そのアレクも大きく頷いた。
「むしろ当然と言えますな。今度からチェックをすることにしましょうか」
 流石のアレクもアーサー王その人が来ているとは想像もしていなかった。
 シルヴィアの質問は、むしろ渡りに船だったのだ。
 アレクの言葉に、一瞬ゲイツ王国側の出席者は騒めいた。
 当然、ゲイツ王国にもクラウンカードの事は伝わっている。
 それに表示されるステータスが、きわめて正確に内容を表示することもだ。
 まさしく神の御業だとさえ言われているのだ。
 会談前などにステータスをチェックされるとなると、他国でも使っているいくつかの方法が使えなくなる。
 もっともそれは、他の国でも当然のようにやっている事なので、お互い様という事になるのだが。

 ステータスをチェックされる影響を理解したのか、アーサー王がため息を吐いた。
「・・・・・・いかにも私がアーサーだが、今の私は国王としてではなく使節団の一員として来ていることを理解してもらいたい」
 これは、あくまで立場上は一使節団員であって、王としては全く関係が無いと宣言したも同然だった。
 だが、シルヴィアにとっては王がいるかどうかは問題ではなかった。
 国の使節団という事だけははっきりさせたかったのだ。
「そうですか。という事は、ゲイツ王国としても同じ立場であると言うわけですね?」
「・・・・・・何が言いたい?」
「いえ。そうですね・・・・・・。国家として存続していきたいのであれば、さっさと切ったほうがよろしいかと」
 いきなりのシルヴィアの言葉に、管理層メンバー以外が騒めいた。
「どういうことだ・・・・・・?」
 いきり立ちそうなカールと、顔色を変えたドミニクを制してアーサー王が問いかけた。
 いくらゲイツ王国でカールの立場が強かろうと、王国の事を持ち出されれば、アーサーの方が上になるのだ。
 そんなアーサー王に対して、シルヴィアは静かに言い放った。
「どうもこうもありませんわ。今あなた方が主張していることは、『カノッサ帝国の慢心』の再現になりかねないのですよ?」
 シルヴィアの言葉に、ゲイツ王国側が騒めいた。
 『カノッサ帝国の慢心』は、この世界にある者であればそれこそ子供でも知っているような話だった。
 簡単に言えば、一大帝国を築いたカノッサ帝国が、神の在りようにさえ口を出し始めて神々の怒りを買い、最後には数日で滅んでしまったという話である。
 今回カールとドミニクが口にしたのは、そのことに触れかねないとシルヴィアは警告したのだ。

「馬鹿な。今の話のどこに『カノッサ帝国の慢心』に繋がるものがある? 脅しにしても子供だましすぎる」
 これまで黙っていたカールが再び口を開いた。
 その言葉で、一瞬動揺していたドミニクも考え込んだアーサーに笑いかけた。
「アーサー王。子供だましの脅しに屈してはいけません。我々の主張は、間違っていないのですから」
 ドミニクの言葉に頷いたアーサー王は、その視線をシルヴィアに向けた。
「さて、我々の重鎮たちはこう言っているのだが?」
 そのアーサーの言葉に、シルヴィアはため息を吐いた。
「私としては、ここまではしたくなかったんですが・・・・・・自ら招いた種ですからね?」
 シルヴィアは、そう言って一つのリングを懐から取り出した。
 普段はシルヴィアの腕に付けられているそれは、考助が改良に改良を重ねた神具の一つだ。
「・・・・・・それは?」
 突然魔道具らしきを取り出したシルヴィアに、アーサーが眉を顰めた。
「ここから先は、私の領分ではありませんので・・・・・・というより、御本人が話したがっているので、仕方ありません」
 もう一度、本当はここまでしたくはなかったのだ、と釘を刺したシルヴィアは、そのリングに話しかけた。
「準備が出来ました」
 シルヴィアがそう言うと、一人の女性の声がそのリングから聞こえて来た。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

『シルヴィア、お手数をおかけしますね』
 その声が聞こえた瞬間、場が凍りついた。
 シルヴィアとピーチにとっては、何やらデジャブを感じる光景だが、あの時は神殿関係者が相手で、今回は国家が相手だ。
 しかも出て来た相手は、
「いえ。お手数をおかけしまして申し訳ありません。エリサミール神」
『いいのですよ。本来であれば、私どもが出るべきことなのですから』
「恐れ入ります」
 普段の交神とは違って、人前なのでお互いに多少は気を使っている。
 それでも他の者達にとっては、余りに気安い会話と出て来た者の圧力に、相変わらず凍りついたままだ。
 それも当然だろう。
 最高神の一人であるエリサミール神の声を聞いたことがある者など、全くと言っていいほどいないのだから。
 ちなみに、この声の主がエリサミール神であることは誰も疑っていない。
 この場にいる誰もが、声を聞いた瞬間に本物だと頭で理解させられてしまったのだ。

 エリスがここで出てくるのは、実は最初からシルヴィアに依頼していたことだった。
 今回の件に限らず、彼らがやっていたことは神の目にも止まっていたのだ。
 それが今回の件でついにエリスが出てくることに決まってしまっていた。
 この場にシルヴィアがいたことは、エリスにとっては都合が良いことだった。
 ただし、シルヴィアは最後までエリサミール神の介入は防ぎたいと考えていたので、ぎりぎりまで彼らの意見を聞いたのだ。
 その善意は全くの無意味になってしまったのだが。
 例え考助のことが無かったとしても、彼らは自らの首を締めていたといえるのだった。
というわけで、御大登場ですw
最後の方で書きましたが、最初から神々の介入は決まっていたことでした。
別にシルヴィアがいなくても(というか、考助の交神具が無くても)、介入方法はあります。
滅多に介入することは出来ないのですが、彼らは悪い意味でその条件を満たしていたという事になります。
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