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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第3章 塔へ色々な種族を受け入れよう

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(9) シュミットとの話し合い

本日2話投稿の内の一話目です。
2話目は20時投稿予定です。
 塔の村に店を開いたシュミットは、ワーヒドに呼ばれて神殿の応接室へ来ていた。
 呼ばれたと言っても村の統治者として無理やりではなく、きちんと予定を聞いたうえで、シュミットの空いた時間に訪問している。
 最近のワーヒドは、この村を統治するにあたって何人かの奴隷を使い始めたようで、シュミットをここに通したのもその内の一人だった。
 奴隷を使うことに、シュミットはどうこう言うつもりはない。というより、シュミットも店を開くにあたって奴隷を何人か雇用している。
 むしろ、これだけのことをやっているのに、今まで使っていなかったことの方が驚きなくらいだ。
 塔の村は急速に発展する兆しを見せている。
 今はまだ数軒新しい建物が建とうとしているだけだが、間違いなく今後その数は増えていくだろう。
 それに伴って、人と物の出入りも多くなる。
 この塔と外をつなぐ門は、現在通行料を取られている状態だが、その利益が今後どこまで伸びるか想像もつかない。
 ちなみに、通行料には二種類あって、普通に人だけが出入りする場合にかかる物、あとは荷物に対してかかる物がある。
 冒険者たちが抱えてくるような手荷物などはそれには当たらないが、馬車など大きなものにかかってくるのだ。
 これはこの塔の村に限らず、どこの街や村でも同じなので特に不満などは出ていなかった。
 ただ、この村に出入りするための通行料は、他よりも高い値段になっているので、そこで文句を付ける者が出ているようだ。
 だがそれに対してのワーヒド達の対応は一貫している。
 それは、気に入らなければ来なくてもかまわない、というものだ。
 現に転移門の所でごねた者、村で騒ぎを起こしたものなど、強制的にはじかれている。
 シュミットに理屈はわからないが、あの転移門には通す者を区別できる機能があるらしい。
 一度通さないと記録されると、その者は二度とその門を通ることができなくなるということだ。
 いずれはその理屈を聞いてみたいと思っているが、なかなか難しいだろう。それはこの塔にとって治安に大きく関わっているのだから。
 シュミットも無理に聞き出して、変に疑われるよりも今の関係を維持することを望んでいた。

 応接室でそんなことを考えていると、扉がノックされてワーヒドが入ってきた。
 そこまでは当然予想していたが、続けて入ってきた人物を見てシュミットは驚いた。
 以前リュウセンに入る直前に、モンスターの襲撃から助けてもらったことのある考助とミツキだったからだ。
 驚きつつも考助へ挨拶した。
「コウスケ殿、ご無沙汰しております。リュウセンからは旅立ったようだと聞いておりましたが、お元気そうで」
 さすがやり手の商人と言うべきか、シュミットはきっちりと考助の名前を憶えていた。
 シュミットがそう切り出すと、考助も驚いた表情を見せた。
「お久しぶりです。いやしかし、流石ですね。半日ほどだけ過ごしただけの私を覚えているとは思いませんでした」
「ハハハハ。いや、あなたたちとの出会いは色々な意味で強烈でしたからね。忘れたくても忘れられませんよ」
「ははは。あの節は、本当にお世話になりました」
 考助は誤魔化すように笑った後、頭を下げた。
「いやいや。それはお互い様です。ところで今日はどういったご用でしょうか?」
 シュミットのその問いに、考助はワーヒドへ視線を送った。
 それを受けて、ワーヒドがシュミットへ説明を始めた。

「まず最初に、考助様についてですが・・・考助様は、この塔の管理長でいらっしゃいます」
 その説明に、シュミットは衝撃を受けつつも心のどこかで、やはり、と思っていた。
 管理長とは、すなわちこの塔の支配者であるということ。
 以前から、セントラル大陸の中央にある塔が、誰かによって攻略されたという噂話は流れていた。
 その噂話には当然攻略した者の名前も挙げられていたが、全て有名どころのギルドだったりパーティーの名前で、そこには考助達の名は挙がっていなかった。
 だが、直にミツキの戦闘を目の当たりにしたことのあるシュミットは、たとえ専門外とはいえ、もしかしたらという思いはあったのだ。
「・・・そうでしたか」
「なぜそれを今ここで告白したかは、置いておくとして・・・我々がギルドを作ろうとしてる話を耳にしたことは?」
 突然変わった話に、シュミットは戸惑った。
 そういった話が、冒険者たちの間で噂になっているのは耳に挟んでいた。
 だが、それはあくまでも冒険者ギルド・・・塔で戦闘に係わる者の話だと思っていたからだ。
 なぜその話を自分に持ってきたのかが分からなかった。
「ええ。噂話としては聞いてはいましたが・・・冒険者ギルドの話ですよね?」
「そうです。噂話として流したのは、冒険者ギルドですね」
 その答えに、シュミットは眉をひそめた。
 ワーヒドは今、噂話を流したのは自分たちだと断言した。
 それを今自分になぜ言うとかが分からなかった。
 あくまでも冒険者ギルドの話だからだ。
「そうですね、冒険者ギルドを・・・待てよ、冒険者? ・・・まさか!?」
 ふと湧き上がってきた疑問に、思わずシュミットは問いかけるようにワーヒドを見た。
「まさか、商業ギルドも作られると!?」
 塔の支配者が関わるギルドが、直接村に作られるというのは、シュミットたち商人たちにとっても他人ごとではない。
 だが、ワーヒドの答えは、シュミットのさらに上を行っていた。
「正確に言えば、冒険者ギルドや商業ギルドなどの各種ギルドをバラバラに作るわけではありません。それらを一つにまとめたギルド・・・クラウンといった組織を作ろうと考えております」
 この世界では、あくまでもギルドというのは同じような業種のものが集まってできた組織である。
 だからこそ冒険者ギルドは冒険者、商人ギルドは商人といった者たちが寄り集まって、出来ているのである。
 だが、それら業種の違うギルドが集まった一つの組織というのは、まるで聞いたことがなかった。
 あえて挙げるとすれば、それは国や都市そのもののことであり行政そのものである。
 行政がギルドの経営そのものにかかわることはないので、クラウンという組織とは似て非なる物になるだろう。
 シュミットは頭の中でそこまで考えて、なぜその話を自分に今この段階でしたのかと疑問に思い、すぐにその推測を得た。
「・・・・・・まさか」
「はい。シュミット殿にその組織の商業部門のトップをやっていただけないかと思いまして」
 無理です、と反射的に答えようとして、シュミットはその言葉を呑み込んだ。

 ワーヒドの誘いを受けるということは、組織の中で活動していくという事だ。
 折角この地に店を構えて一国一城の主になったのが、ふいになってしまう。
 ワーヒドも立場的にはそうだが、考助という存在がある以上それは間違いがない。
 だが、誘いを受けた場合は、それ以上の利益になる。それは確信できる。
 それだけ塔という特殊環境の中では、その支配者が作る組織というのはアドバンテージができるのだ。
 しかしその分、塔の外にある既存のギルドから受ける圧力は、半端ないだろうということも簡単に想像できるのだ。
 トップに立つということは、それらの矢面に立たなければならないということになる。
 自分が海千山千の商業ギルドのトップを相手にできるかと問われると、はっきり言えばいささか自信が無かった。
 そのために、無理、という言葉が出かかったのだが、あまりに魅力的なその誘いに即答は思いとどまれた。

 そうしたシュミットの思いを見抜いてか、ワーヒドがさらに想像の埒外の物を持ち出してくることになるのだが、当然そんなことはわかるはずもないシュミットであった。
シュミットとのクラウン結成の話は次の話に続きます。

2014/5/24、27 誤字修正
2014/6/6 誤字訂正
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