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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第25章 塔と神の審判

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7話

 今回の席にフローリア、シルヴィア、ピーチが出てきているのは、偶々ではなくそれぞれ目的があって出てきている。
 フローリアに関しては、<王者の威圧>を人間相手に使えるようにするための練習がその一つだ。
 カールは練習台として全く心が痛まない相手だったので、遠慮なく練習できた。
 そう言う意味では、フローリアは既に目的を達成したと言えるだろう。
 だからと言って、はいさようなら、と去るわけにもいかない。
 今目の前には、その実験をした相手が激昂した状態でいるわけで、加護の力を解いたとたんにこうなるのも当然の事だろう。

「こ・・・・・・小娘が! この私に一体何を!!」
 フローリアのしたことが分かっていない周囲の者達には、突然カールが怒り出したように感じているが、本人はそんなことお構いなしだった。
 先ほどの不可思議な状態は、間違いなくフローリアがやったと決めつけていた。
 根拠があるわけではなく単なる当てずっぽうなのだが、今回は正しかった。
 だが、そんなことをわざわざ教えてあげる必要性を感じないフローリアは、ただ肩をすくめた。
「ですから、何のことでしょう? 突然このような席で怒られても困るだけですが? ほら、周りの方も不思議に思っていますよ?」
 事情を知っている考助達は、フローリアの言葉に笑いそうになるが、この場では何とかこらえる。
 ちなみに、行政府の関係者もこの場にはいるが、フローリアの力のことまでは知らない。
 だからこそゲイツ王国関係者と同じように、突然怒り出したカールに対して不思議そうな表情を浮かべていた。
 その状況を見て取ったカールは、今起こったことが完全に自分だけに向けられたものと気づいた。
 これ以上騒いでも余計におかしく思われるだけだ。言葉で何か言うのは止めたカールだったが、その怒りは収めずにフローリアを刺すような視線で見た。
 そのフローリアは、その視線をあっさりと受け流していたが。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 カールの怒りの視線を無視しつつ、フローリアは話を続けた。
「それで? 小娘である私はともかく、現人神であるコウスケ様に対する先ほどの物言いはどういう事でしょうか?」
 フローリアの言葉に、多少の落ち着きを取り戻したのか、カールは先ほどと同じようにフンと鼻を鳴らした。
「この地にありながら神を名乗っているのもそうだが、神らしい仕事をしてない者が神を名乗っていることの方が問題だと思うがな?」
「おや、これはおかしなことを仰る。神であるかどうかは、神域だろうとこの地にあろうと関係ないことは周知の事実では? そんなことも貴方はご存じない?」
 フローリアは、あからさまに侮蔑したような表情をカールに向けた。
 勿論、カールの性格を見抜いた上で、挑発するためだ。
 残念ながらこの時は、この挑発には乗ってこなかったが。
「これは、私ではなく神殿が言っているのだが? そんなことも知らないのか?」
 逆に挑発に挑発で返して来た。
 勿論そんな事で怒るフローリアではないが。
「神殿ですか・・・・・・。ちなみにどこの神殿でしょうか?」
「フン。・・・・・・私の国にある神殿で公式に発表されていることだ」
 どうだと言わんばかりの表情でフローリアを見るカール。
 神殿が言っていると挑発されれば、引いてしまうのが普通だった。
 しかもカールが言ったことは、本当の事で実際にゲイツ王国のある神殿ではそういう発表がされていた。
 これは別に珍しいことではない。
 神殿の都合によって、神と認めるか認めないかは変えられることがあるのだ。
 例え実際に神々がどう言っていようとだ。
 ある神殿では認められている神が、別の神殿では神として認められていないという事などは、普通にありえることなのだ。
 それに対して神々が怒っていないというわけではないが、その辺の事に関して神々は直接手を下すことが出来ないのだ。
 過去からの経験で神殿もそのことが分かっているので、敢えてこういう発表をする神殿も出てくる。
 こういう神殿が出ることは、シルヴィアを通して考助達も知っていた。
「ああ、そうですか、済みません。一地方の一神殿で言われていることなど、一々チェックしていませんでした」
 カールも勿論、神殿側のそういった事情は知っているので、敢えてそこは深く突っ込んで来なかった。
 ただし、フローリアの「一地方」発言にはピクリと反応していたが、それに対して何か言い返すという事は無かった。

「我が国を一地方呼ばわりか。国家もないような野蛮な大陸で、神と僭称している者を崇めているだけはあるな」
「おやおや。僭称しているというのは、その神殿の意見でしょうか? だとすれば、かなりの問題だと思いますが?」
「問題? どこが問題だというのだ?」
 神殿が否定していることで強気に出て来たカールだったが、いかんせんこの場にいた相手が悪かった。
 話が神の扱いに関することに変わったことで、今度はシルヴィアが出て来た。
「コウスケ様が神と認められているのは、他の神々も認めている事。神殿の事情によって認めない場合はありますが、それは神々にとっては関係ないことなのですよ?」
 そんなことも知らないのに、僭称と言いだしたのか、と言外に匂わせつつシルヴィアが言った。
 普段のシルヴィアからすれば、かなりきつい物言いだったのだが、残念ながら普段の彼女を知らないカールは、そんなことには気づいていなかった。
「フン。神域にいる神が認めようと、我らの神殿は認めていないのだが、それはどういう事なのだ?」
「そんなことは、其方の神殿に聞いてください。それこそ私達には関係のない事」
「では、吾らにもそいつを神などとして扱う必要が無いという事になるな」
 カールはしてやったりといった表情でそう言った。
 実際に、カールの言っていることはさほど間違っていないのだ。
 今までの神殿のやり方では、という注釈がつくが。
 だが、今までのやり方など、シルヴィアにとってはどうでもいいことだ。

 ここまでの話を敢えてカールに向けていたシルヴィアは、突然その矛先をカールの傍にいた神職に向けた。
「この方のご意見は、貴方の神殿の意見としていいのですね? ドミニク神殿長」
 いきなり名指しで呼ばれたドミニクは、あからさまに動揺していた。
 今まで一度も自分の立場をここでは明らかにしていなかったのだ。
「な、何のことだ?」
 動揺しているドミニクに、シルヴィアがため息を吐いた。
「仮にも私は、コウスケ様の巫女を名乗っているのですよ? 道具がなくとも名前くらいは見えると思わなかったのですか?」
 シルヴィアの言葉に、動揺していたドミニクが多少の落ち着きを見せた。
 力の事はともかく、理屈が分かってある程度納得できたのだ。
 考助を神と認めていない神殿という事は、この際棚に上げている。
 気を取り直して、先ほどの問いに答えた。
「神々がどういうお考えかは私達には計り知れないことなど周知の事実。ただ、私達はそちらの若き神が神としての仕事をしていないことを憂いているだけですが?」
「神々の仕事をしていないとはどういう事でしょうか?」
「言わずと知れたこと。この塔の神殿に神職を受け入れることさえせずに、人々の声に応えず引きこもっていらっしゃる。これで神の仕事をしていると?」
 とてもそうは言えないでしょうと、ドミニクが続けた。
「おかしな話ですね。いつから神の仕事の内容を神殿が決めることになったのです?」
「私は一般的な話をしているつもりですが?」
「ですが、神々は別に神殿を任せるとも言っていらっしゃらないし、一々地上に降りて応えることもしていないのです。貴方の神殿では全ての神が神と認められないことになりませんか?」
「それは話のすり替えです。現人神と言われているそちらの方は、現に現世にいらっしゃる。ならば人々の声に応えるのも当然でしょう?」
 ドミニクはそう言って、何を当たり前のことを、といった表情になった。
 考助からすれば、馬鹿らしい話になる。
 何しろドミニクの言っている事は、全ての人々の声に応えろと言っているのに等しいからだ。
 そんなことは最高神であるエリサミール神でさえやっていないのだ。
 地上にいるならそうするべきだという完全に、神殿側の自分勝手な理屈の元に成り立っている。
 そんなことにさえ気づいていないドミニクだが、これは彼だけが悪いわけではない。
 何しろ他にも同じような意見を言っている神職たちはいるのだから。
 ある意味ドミニクは、そういった者達の代表格と言えるのであった。
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