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塔の管理をしてみよう 作者:早秋

第25章 塔と神の審判

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(5)ピーチの夢

 女性陣の計らいでリフレッシュした考助は、魔法道具の開発を行っていた。
 モンスターの弱点を「見る」ことは、ナナのおかげで証明できたので、敢えてそれ以上突き詰める必要も感じなかったのだ。
 二大護衛のおかげで、考助自身がモンスターと相対することもほとんどないというのもある。
 女性陣の助けになれば、という思いでもあったのだが下手に考助自身が動くと碌なことにならないと学習したため、個人個人に任せることにした。
 結果として魔法道具作成に戻ったと言うわけだった。
 今考助が目標にしているのは、高額素材を使わずに使える通信具の開発だ。
 もし開発できれば、間違いなくクラウンの目玉商品になるだろう。
 冒険者活動をしていてその必要性を感じたのだ。
 他にも色々と開発したいものは出てきていたが、まずは通信具と決めていた。
 もっとも、決めたからといって最初に開発されるのが通信具であると決まったわけではない。
 ある道具の開発をしている最中に、別の道具を思いつくことなど良くあることなのだ。
 それはそれで新しい道具が出来るので、別に構わないのだが。

 そんなわけで魔道具の開発に勤しんでいた考助だったが、珍しいことにその作業中にピーチが開発部屋にやって来た。
 基本的に開発部屋に女性陣がやってくることは無い。
 あるとすれば、何か起こった時だけなのだ。
「ピーチ? どうかした?」
「はい~。邪魔をしてしまってごめんなさい」
「いや、それは別にいいんだけど、何かあった?」
 申し訳なさそうに言って来たピーチに、考助は再度確認をした。
 実際、作業的に佳境に入っていたというわけでもない。
「ええと~。伝えた方がいいのか悩んだんですが・・・・・・」
 自分自身も戸惑っているような感じで、ピーチがそう前置きをしてから本題に入った。
「何か、妙な夢を見たんです~」
「夢?」
 ただの夢でピーチがこんなことを言いに来るはずもない。
 当然発現したばかりの加護の力によるものなのだろう。
 ・・・・・・と、考助は考えたのだが、
「そうです~。ただ、見たのがただの夢なのか、加護によるものなのか、はっきり分からないんです」
「・・・・・・ふむ。なるほど」
 それを聞いて考助もピーチが戸惑っている理由が分かった。
「ちなみに、どんな内容か覚えてる?」
「曖昧になっている所もありますが、大体は~」
「教えてもらえる?」
「勿論です~」
 そう答えたピーチは、覚えている限りの内容を考助に話すのであった。

 ♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢♦

 ピーチが夢の内容を考助に話してから何日か経ったある日。
 管理層に、アレクが訪ねて来た。
 呼び出された考助が見たアレクは、どこか戸惑ったような複雑な表情になっていた。
「遅くなってすいません」
「ああ、いや。こっちこそ呼び出して済まない」
「何かありましたか?」
 そう切り出した考助に、アレクは少しだけ間を置いて話始めた。
「数日前から行政府にある客人が来ていてな」
 そう前置きをしてから話し始めたアレクに、考助は内心で首を傾げた。
 普段のアレクは、こんなわざとらしい前置きをしたりせずに、いきなり本題に入るタイプなのだ。
「客人ですか?」
 そんな思いを表情に出さないようにして、考助も相槌を打った。
「そうだ。それがな、塔の管理者を名乗っていて、君に会わせないと面倒事になると脅されていてな」
 アレクの説明を聞いて、多少は納得した考助だった。
 普通に考助に会わせろという事であれば、門前払いにしているだろう。
 だが、塔の管理者ともなれば、事情が違って来る。
 何しろ塔に関しては、よくわかってないことの方が多い。
 下手に拒否すれば、本当にそうなる可能性もあるのだ。
「面倒事ですか。さて、何のことやら思い浮かびませんが・・・・・・」
 考助としても、あくまでもこの大陸にある塔に関して知っているだけだ。
 それから考えれば、面倒事というのは何も思い当たらない。
「やはりそうか」
「ですが、こうして僕に言ってくるという事は、裏が取れているという事ですよね?」
「まあ、そこは流石にな。だが、来ているのが本物かどうかまでは確認が取れなかった。いや、正確には確認しようがないと言うべきだろうな」

 アレクの話によると、来ている男はカール・バッヘムと名乗っているそうだ。
 そして確かに、カール・バッヘムというのは、北大陸のゲイツ王国にある<バッヘムの塔>の管理者なのだそうだ。
 なぜそんなことが分かったかというと、バッヘムの塔を管理しているのが代々バッヘム一族だというのは、北大陸では有名な話だそうだ。
 北大陸では大国に数えられるゲイツ王国が、そのバッヘムの塔からの資源で大きくなったのも事実だ。
 王国と塔の関係が密接なものであるのも周辺諸国に筒抜け、というかむしろ隠していない。
 塔の管理をしているバッヘム一族は、ゲイツ王国でも特に優遇されている一族になるのだ。
 その関係は長い間続いている、というよりもゲイツ王国の建国がバッヘムの塔と密接に関係しているので、切っても切れない間柄と言える。

「コウスケさん、ひょっとして・・・・・・?」
 それらの話をアレクから聞いたピーチが何かを言いかけたが、考助がそれを止めた。
「それで、そのカールという人は何と言ってるんです?」
 ピーチの言いたいことは分かっていたが、まずはそれを聞いてからと考えたのだ。
「何と言われてもな。まずは会わせろの一点張りで、全く何も聞けていない」
「それだけで、僕に会ってほしいと?」
 考助は不思議に思って首を傾げた。
 アレクは、こんな理由だけでわざわざ考助と会わせようとさせるほど、甘い人間ではない。
 今まで考助が、第五層の街にほとんど関わらずに来れたのは、間違いなくアレクの功績なのだ。
 そのアレクが、こんな理由だけで考助と会わせようとさせるはずがないのだ。
「ああ、勿論それだけではない。例の海賊騒ぎの裏にいるのが、ゲイツ王国ではないかと思われているのもあるが、それだけでもない」
 一旦区切ったアレクは、更に続ける。
「カールとやらが言うには、自分を無視すると神として名乗れなくなるそうだ。そんなことは無いと言いたかったのだが・・・・・・」
 アレクとしては、そんな馬鹿な、と言いたいところなのだが、何分神の世界の事はさっぱりわからない。
 否定する材料もないので、話を持ち帰ることになったそうだ。
 理由としては分からなくはない話だった。
「神として、ね」
 はっきり言えば、考助としてはそんなことはどうでもいいのだが、もはや周りがそれを許さないだろう。
 特に護衛の二人が。
 まさに今の話を聞いて、目つきが怪しくなってきていた。
 それを視線だけで抑えて、考助はあることを確認した。
「もしかしなくても、神職の人も一緒に来ていました?」
「ああ、来ていたぞ? いなければそんな話はあり得ないと突っぱねることも出来たんだがな」
 相手もその辺はしっかりと考えているらしい。
 聖職者がいるからこそ、話に説得力を持たせたのだ。

「まあ、そう言うことなら会いましょうか」
「そうか」
 考助が会う事を同意すると、アレクは複雑な表情になった。
「会ってほしかったんじゃないんですか?」
 そんなアレクを見て、考助が苦笑しながら言った。
「いや、そうなんだがな。こんな前例を作ってしまうと、な」
 今回とまた同じような手口で、考助との面会を求めてくる者が出てくることを懸念しているのだ。
 ついでに、考助の後ろにいる二人の視線が怖いのもある。
「ああ、それは大丈夫ですよ。間違いなく今回限りだけです」
「そうなのか?」
「ええ。それにしてもその方たちも馬鹿なことをしてきたものですね」
 考助がそう言うと、アレクは首を傾げたが、コウヒとミツキの二人はハッとした表情になった。
 明らかに先ほどの剣呑とした表情とは違っている。
 その変化がなぜ起こったのか、アレクには分からなかった。
 その原因である考助は、穏やかに笑っているだけだ。
「よくわからないが・・・・・・では、任せていいんだな?」
「ええ。ただ、アレクにも同席してもらいますからね?」
「それは当然だ」
 考助の確認に、元よりそのつもりでいたアレクは頷いた。
 もし今後も同じようなことを求められれば、次から対処するのは自分になる。
 同席するのは、その方法を具体的に知りたいというのもあるのだ。
 考助が言う「馬鹿な事」というのが何か思い当たらないが、コウヒとミツキの様子が一変したことから、何かがあるんだろうなと推測しているアレクなのであった。
コウヒとミツキの様子が変わった理由は、後の話で出てきますのでお待ちください。
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